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チャンプ・カー・ワールド・シリーズ 第5戦 クリーブランド[決勝日]フォト&レポート

<US-RACING>

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合計4回のコーションが発生し、6台のマシンが姿を消す波乱のレースとなったクリーブランドは、2度の接触で最後尾に落ちたポール・トレイシーが大逆転で優勝を遂げた。スタートをうまく決めたトレイシーだったが、4周目にレイホールと、6周目にジュンケイラと立て続けに接触。2度もフロント・ウイングを失って後方に沈んだトレイシーは、ここから持ち前のファイティング・スピリッツで、次々に前車をかわす力走を見せた。その熱い走りに応えるべく、チームも最良のピット戦略を用意し、なんとトレイシーは70周目にトップへ浮上。終盤は接触したレイホールやドーンボスといったルーキー勢の追撃を受けたものの、最後まで押さえ込んで2年ぶりの通算31勝目を同じクリーブランドで飾った。「レースがこんな展開になったのが、いまだに信じられないよ。グラハムやブルーノに接触して、コースに戻ったら最後尾だった。モチベーションが下がったけど、チームが僕を盛り上げてくれた。すばらしい作戦のおかげで優勝できたんだ」と大喜びのトレイシー。2年ぶりの美酒を心行くまで味わう。得意のロングビーチでは骨折の大怪我を負い、復帰したポートランドでも低迷したトレイシーだが、その力がまだまだ衰えていないことを、伝統のクリーブランドでファンに見せてくれた。

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今シーズン4度目の表彰台を獲得したドーンボスも、トレイシーと同じく浮き沈みが激しいレースとなった。スタートからレイホールとバトルしていたドーンボスは、4周目のターン1でインサイドに飛び込んだレイホールをブロックする。F1では1回だけ許されているブロッキングの進路変更も、このチャンプ・カーではご法度。ドーンボスはドライブ・スルー・ペナルティを受け、16番手まで後退することになった。再びコースに戻ったドーンボスは、前者を抜きあぐねる苦しい場面も見られたが、コーションを利用したピット・ストップと上位勢の脱落により、残り5周となったところで2番手に躍進。トップのトレイシーをコンマ5秒まで追い詰め、2位でフィニッシュした。「安定性はどんなときも重要なことだよ。今日のレースはキャリアの中でも一番長く感じたね。ドライブ・スルー・ペナルティを受けるなんて信じられなかったよ。僕が知っているヨーロッパのレースはアメリカより厳しいポジション争いをするんだ。今でも僕は何か悪いことをしたとは思ってないよ。僕たちはこのことを話さなくてはいけないかもしれないね。チームが僕を落ち着かせて、励ましてくれた。ピット・ストップもすばらしかったから、何よりもチームに感謝しないといけないね」と話すドーンボス。ポイントランキングはトップのブルデイがリタイアなったため、3ポイント差の2位に躍進した。

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ルーキー勢の活躍はとどまることを知らず、PKVのニール・ヤニが3位で初めての表彰台を獲得した。シーズン前のテストでは高いポテンシャルを発揮していたものの、シーズン開幕からこれまではチームメイトであるゴメンディの予想外の活躍に話題が集中していた。今週末は予選でまずゴメンディを下し、11番手からスタートを切ったヤニは、序盤のアクシデントに乗じて8番手へ浮上。ウイルソン、タグリアーニ、セルビアといったベテラン勢と中段グループを形成した。勝負を分けたのはコーション中の40周目に行ったピット・ストップ。28周目に1回目の作業を終えたばかりのヤニを、PKV陣営は再び呼び戻して燃料を補給する。ロング・ビーチとヒューストンでは目算が外れた陣営の戦略が、今日はぴたりとはまり、最後に出たコーションのおかげで、ライバルが残り2回必要とするピット・ストップを1回で済ませることに成功。労せずしてポジションを上げ、3位でフィニッシュした。「シーズンの始まりはすごく大変だったよ。特にラスベガスとヒューストンではね。表彰台争いをしていても必ずテクニカル・トラブルや接触されたりする。予選は良くなかったけど、週末の出だしは良かったんだ。レースは前と後ろを行ったり来たりしていたから、良いタイミングでレースが終わったね」とほっとした様子のヤニ。活躍が待たれていたルーキーがようやく本領を発揮した。

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ポール・ポジションを獲得した3年連続チャンピオンのセバスチャン・ブルデイは、スタートを無難に決めてトップを27周に渡って快走する。1回目のピット・ストップでウィル・パワーの先行を許すも、一定の距離を保ってチャンスをうかがっていた。レースは終盤まで硬直状態が続き、ブルデイがいつパワーを捉えるのか注目が集まっていた67周目、なんとパワーを追いかけるブルデイのマシンが突如としてコース上に止まってしまった。セーフティ・クルーがマシンを牽引してエンジンを再始動させようと試みるも、エンジンに火は入らず、ブルデイのマシンはピットへ押し戻される。チームクルーも必死にマシンの修復作業をするが、結局ブルデイのマシンが再び走り出すことはなく、そのままリタイアとなった。「確かなことはわからないけど、エンジンが壊れたみたいだよ。ほんとうに突然だったんだ。今週末はとても調子が良かったから最悪だね」と悔しがるブルデイ。なんとかポイントランキング1位の座を保っているが、2位のドーンボスにわずか3ポイントまで迫られている。

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前戦ポートランドから導入されたスタンディング・スタート。クリーブランドでも全車がきれいにスタートを決め、過去7年で6回の接触事故があったターン1をもクリーンに駆け抜けた。鬼門のターン1でアクシデントはなかったものの、今年のクリーブランドも4回のコーションが発生し、2年連続でチャンピオンのブルデイが戦列を去る波乱の展開は変わらない。レースはブルデイ、パワー、レイホールへトップが移り変わり、最後は2回のコーションの原因を作ったトレイシーが最後尾から逆転優勝を飾る予想外の結末を迎えた。決勝に訪れたファンは、最初のアクシデントで地元ドライバーのレイホールをコース外へ弾き飛ばしたトレイシーに対してブーイングを浴びせたが、レースが進むにつれてトレイシーの順位が上がっていくと、ブーイングはいつしか声援に変わり、トレイシーが優勝のチェッカーを受ける頃には大歓声が巻き起こった。この3日間で昨年を28%上回る15万1426人が訪れ、26回目のグランプリ・オブ・クリーブランドは大成功のうちに幕を閉じた。