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チャンプ・カー・ワールド・シリーズ 第1戦 ラスベガス[決勝日]フォト&レポート

<US-RACING>

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2007年の開幕戦を制したのは、ウィル・パワー。新シャシーのパノスDP01が投入され、新時代を迎えたチャンプ・カーにふさわしく、有望な若手ドライバーが見事な初勝利を手にすることになった。スタートで出遅れたパワーは、ターン1でトレイシーのパスを許すが、11周目のターン1でインサイドからトレイシーを豪快にオーバーテイク。再びトップに立つと、最速ラップを刻みながら後続との差を広げていく。ピット戦略の違いからトップを明け渡したほかは、誰も彼を追うものは出ず、ポール・トゥ・ウインで初優勝を獲得した。ウイニングラップを終えたパワーは、マシンの上に乗り、天高くガッツポーズ。「最高に気持ち良いよ。でもこれは長いマラソンの始まりに過ぎないんだ。僕たちは本気でチャンピオンシップ獲得を狙っているんだから」と優勝後の会見で語ったパワー。今日の力強い走りで、その目標が高すぎるものではないことを証明した。チーム・オーストラリアにとっては、前身のウォーカー・レーシングを含めると、1999年のジル・ド・フェラン以来の勝利。今日が誕生日だったオーナーのデリック・ウォーカーは、うれしいバースデイ・プレゼントを贈られることになった。

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デビュー戦で見事2位表彰台を獲得したのは、ロバート・ドーンボス。ルーキーがデビュー戦でポディウム・フィニッシュを飾るのは、1993年のナイジェル・マンセル以来の快挙だ。スタートは初めて経験するローリング・スタートに戸惑い、3番手スタートから6番手まで後退したドーンボス。コーション明けのリスタートに失敗し、ウイルソンにもかわされてしまう。しかしレースが落ち着くと徐々にペースを掴み、まず電気系のトラブルを抱えたウイルソンを、あっさりとパス。ピット戦略を変えたジュンケイラとタグリアーニが後方へ沈み、トレイシーのピット・トラブルにも乗じて、2番手まで浮上する。中盤はパワーを上回るペースで走り、追い詰める場面もあったが、慣れないピット・ストップのたびにタイム・ロス。みすみすパワーを逃がしてしまうことになったが、堂々の2位でフィニッシュした。「ほんとうに楽しいレースだったよ。昨日の予選でトップ3に入って、今日は2位。まるで夢のようなシーズンのスタートだね」と喜ぶドーンボス。レース・ペースを見る限り、まだまだポテンシャルは高そう。チームのピット・オペレーションを見直せば、初優勝の日もそう遠くはないはずだ。

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フロント・ロー・スタートのトレイシーは3位に終わった。スタートではベテランらしい駆け引きを見せ、ポール・ポジションのパワーを出し抜くが、11周目にはパワーの先行を許してしまう。じりじりと引き離されながらも何とかパワーにくらいつき、ピット戦略での逆転を狙って迎えた1回目のピット・ストップ。ところが給油リグに問題が発生し、タイム・ロスした上に燃料がうまく補給されなかったため、わずか4周でピットへ戻るはめに。これで9番手まで後退したトレイシーだったが、諦めずにしぶとく追い上げ、51周目にはトップへ浮上する。しかし、トップ集団より1回多くピット・インしなければならず、56周目に無念のピット・インで今度は6番手まで後退。それでもトレイシーは最後までハイ・ペースを保ち、トップから27秒差の3位まで順位を上げてフィニッシュすることに成功した。「15秒もかけたのに4周分の燃料しか入らなかったんだ。あれはかなりいらいらしたよ。トップを追いかけるどころか、勝負が出来なくなってしまった。パワーにはもっとプレッシャーをかけられたと思うけど、45秒から50秒遅れで走っていたからね。レース中はずっとプッシュして、他のドライバーを追いかけてばかりだったよ」とレースを振り返るトレイシー。トップとのタイム差を見ると、ピット・ストップのトラブルがなければ十分に優勝の可能性があった。次戦、4度優勝しているロング・ビーチでのリベンジを誓う。

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1周目は隊列が整わずにイエローとなり、2周目からレースはスタートした。ホール・ショットを奪ったのはトレイシー。百戦錬磨の大ベテランが2年目のパワーをかわし、ターン1に飛び込んでいく。昨年の開幕戦は1コーナーで4台が絡むマルチクラッシュとなったが、今年は16台がクリーンに抜けて行った。しかし後方でグラハム・レイホールがクラッシュを喫していたため、早くもイエローに。合計4回のコーションが発生し、6台がリタイアするサバイバル戦は、こうして幕を明けた。

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期待のアメリカ人ルーキー、グラハム・レイホール。2周目のグリーン・フラッグが振られた直後にダン・クラークと接触し、アウトサイドにはじかれてしまう。コントロールを失ったマシンは右側のウォールに激突し、そのままリタイアに追い込まれる。彼が待ちに待ったチャンプ・カー・キャリアの始まりは、あっけない幕切れとなった。「最悪のスタートになったよ。ダン・クラークが全開で来て、僕をライン上から押しだしたんだ。そこからはもうコントロールできなかったね。メディ・ゾーン・チームにとって大変な一日になってしまったよ」と落胆するレイホール。今回、実力を見せる間もなくレースを終えたレイホールだが、次戦ロングビーチのレースには期待しよう。一方グラハムの父親で、インディ500やチャンプ・カーを制覇した伝説的なドライバーであるボビー・レイホールは、サポート・レースで行われたヒストリックF1グランプリに出場。1974年製のブラバム BT44 F1マシンを駆り、見事に優勝を果たした。グラハムが偉大な父親を超えるのは、まだまだ先のことになりそうだ。

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今週末は終始ツキがなかったセバスチャン・ブルデイ。初日はトラブル、2日目はクラッシュを喫してしまう。迎えた今日の決勝を、16番手からスタートしたブルデイは、ピット戦略で上位進出を狙い、コーションのたびにピット・ストップ。この作戦が上手くはまり、24周目に3番手まで躍進する。いつも通りブルデイが追い上げ、優勝をさらってしまう展開が頭をよぎるが、今日は違った。翌24周目にブルデイの右フロントが突如パンク。ピット・ストップを余儀なくされ、あっというまに12番手まで後退する。これで歯車が狂ったのか、ブルデイはその8周後、あろうことか右フロントをウォールにヒットさせ、マシンを止めてしまった。「今までに覚えがないくらい、最悪の週末だったよ。とにかく何もかもが、悪い方向へ行ってしまったんだ」と今週末を振り返るブルデイ。チャンピオンの実力を見せることなく、ラスベガスの地を去ることになった。

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初日の予選で2番手タイムを叩き出し、衝撃的なデビューを飾ったシモン・ペイジニューは5番手からのスタート。ルーキーらしからぬ安定した走りを見せ、中盤にはタグリアーニとトップ争いを繰り広げる。しかし無情にもペイジニューはエンジン・トラブルを抱え、ずるずると後退。47周目にはついにマシンを止めてしまい、リタイアを余儀なくされる。チームメイトのパワーが初優勝を決めた一方で、残念な結果に終わった。

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5位に入ったのはルーキーのトリスタン・ゴメンディ。PKVレーシングに所属する彼は、1ヶ月前のスプリング・トレーシングで、初めてチャンプ・カーのステアリングを握ったばかり。しかし、そのキャリアは2002年のフランスF3チャンピオン、同年のマカオF3ウイナーと折り紙つきだ。今日も11位からスタートし、確実にポジションを上げ、ルーキー勢で2番目となる5位でフィニッシュを決めている。今年デビューした8人のルーキーの中で、かなり知名度は低いが、この26歳のフランス人は、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを狙うドライバーにとって手ごわい存在となりそうだ。

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ベガス・グランプリの表彰式。優勝したパワーとルーキーのドーンボスに、17年目のトレイシーが揃う珍しい組み合わせとなった。表彰台の脇を彩るレース・クイーンも、ドライバー・スーツに負けないくらいど派手な衣装を身にまとう。きらびやかでラスベガスらしい豪華な表彰式となった。

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今日は朝から薄い雲が広がっていたラスベガス。ウォームアップが始まる午前9時頃には雲がなくなり、日が差し始める。朝のうちは気温も23度でそれほど暑く感じなかったが、午後からは日差しが強くなり、27度まで気温が上昇。これまでの2日間同様、蒸し暑い一日となった。レースは重大なアクシデントが発生することなく、全日程が無事終了し、コースを走るドライバーからも高い評価を受けていた。「初めてラスベガスのダウンタウンで市街地レースを開催すると聞いたとき、普通の乗用車でさえまともに走れないでこぼこの道で、絶対にレースなんて無理だろうと思ったよ。だけど、ラスベガス市が協力し、ほんとうにきれいでスムーズなトラックにしてくれたんだ」とコースの印象を話すのは、ラスベガス市民のトレイシー。レースでは3位に入り、4年ぶりのタイトル奪回に向けて幸先の良いスタートを切った。

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満員となったターン4のグランド・スタンド席。初開催のベガス・グランプリは、レース前にチケットがソールドアウトになる盛況振りだった。レース後、ベガス・グランプリ・オーナーのデール・ジェンセンとブラッド・ヨノバーはかなりご満悦の様子。社長を務めるジムフルーデンバーグも、「観客がいっぱい来てくれたから、午前10時15分に自由席の販売を停止せざるを得なかったよ」とうれしそうに語る。ラスベガスのダウンタウン活性化を狙った市街地レースは、成功裏に終わった。

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ラスベガスのコースは会場が線路で分断されているため、ダウンタウン側にいる観客はピットに歩いていくことができない。もちろんピット側からダウンタウンへも歩いていけないので、移動手段としてシャトルバスが運行されていた。ダウンタウン側はプラザ・ホテルの正面玄関、ピット、パドック側はメインストレートに架かっている歩道橋付近が発着地となっていた。

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シャトルバスの発着地はどちら側も長い列ができていて、バスに乗るのに時間がかかっていました。一度運良く並ばずに乗れたので、バスでの移動時間を計ってみたら5〜6分程度。待っている人の列の長さで、乗るかどうかを考えてしまいます。無事にチャンプ・カーの開幕戦も終わりました。来週のロングビーチで、また会いましょう! See ya!