<Champ Car World Series>
チャンプ・カーのルーキー、ダン・クラーク(#14 CTEレーシング-HVM フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)は、土曜日のロード・アメリカで危険な賭けに出る必要はなく、降り続ける雨が彼の短いチャンプ・カーのキャリアの中で初となるブリヂストン・ポール・ポジションを与えてくれることとなった。
彼が金曜日に記録した1分55秒123(平均時速126.585マイル)のタイムは、チャンプ・カー・グランプリ・オブ・ロード・アメリカの第一予選におけるベスト・タイムであり、一周4.048マイルのエルクハート・レイクのコースに降る雨が一粒増えるたび、彼の金曜日のタイムを凌ぐものが現れる可能性は少なくなっていった。
クラークのCTEレーシング-HVMチーム・メンバー達が祝福を始めようとするなかで、クラークは750馬力のチャンプ・カーのコックピットに収まったまま、必要とあればいつでもコースインできるようにと待機していた。
「セッションの残り時間が15分となったとき、チーム・クルーはヘルメットを脱ぎ、自分たちが成し遂げたことについて話していたよ」とクラークはそのときの状況を回想する。「雨が降り止むかもしれないと思ったので、自分はまだマシンの中で待機していたんだ。路面が乾けばどういう展開になるか、分からないからね」
セッションが終わりに近づくにつれ雨脚は強くなり、路面もさらにウェットの状態が増してきたことでタイムも遅くなる。こうなるとクラークはチャンプ・カー初ポールを獲得するために、コースへ出る必要はなくなった。金曜日のパフォーマンスにより、クラークは2003年以来、ルーキーとして初めてブリヂストン・ポール・ポジションを獲得。加えて彼の所属するCTEレーシング-HVMチームにとっても、2年ぶりのポールとなった。
雨のため、だれも金曜日のタイムを凌ぐことが出来ない状況だったが、ほとんどのチームにタイムアタックを続行する意味がまだ存在していた。それはこの日の予選でトップを取ったドライバーは、チャンピオンシップ・ポイント1点とフロント・ローのスタート位置を獲得する可能性が残されていたからだ。
タイム・アタックを続行する意欲をそそるものは、それ以上必要ないとはいえ、ほとんどのチームは時間を追うごとにコンディションが悪化するコースをあえて無理に攻めることはなかった。雨が降れば降るほど、タイムが悪くなっていくのが目に見えていたからである。チャンピオンシップ・ポイントを獲得することは、どのチームにも大事なことであるとはいえ、その必要性は2006年ブリヂストン・プリゼンツ・ザ・チャンプ・カー・ワールド・シリーズ・パワード・バイ・フォードのタイトルを争う3人のドライバー以上のものではなかった。2度のディフェンディング・シリーズ・チャンピオン、セバスチャン・ブルデイ(#1 マクドナルド フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)は、タイトル争いでわずかな望みに賭けるA.J.オールメンディンガー(#7 インデック フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)と、ジャスティン・ウイルソン(#9 CDW フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)の両者に対し、現在62ポイントのリードを保っている。
最初に動きを見せたのはオールメンディンガーで、スピード・チャートのトップにその名を挙げるが、すかさずブルデイがそれを阻止して次の周回にトップへ浮上。その時点で約4秒ものタイム差でリードする。ディフェンディング・チャンピオンはわずか5ラップを周回するにとどまったが、4ラップ目のタイムが2分6秒460(平均時速122.517マイル)で自らのタイムをさらに更新し、ライバルたちとの差を広げた。
ウイルソンはブルデイを追撃すべく2番目に多い周回数でタイム短縮を狙うが、依然としてフランス人との差は約0.5秒。その間残り時間は徐々に少なくなってゆく。クラークのタイムが確定的となりつつも、最後まで何が起こるかわからない。だが不規則な雨が強くなり、コースの路面を覆うことで、誰かがシリーズ・チャンピオンのタイムを凌ぐことは困難となった。
ブルデイは今日のパフォーマンスにより、フロント・ロー外側のスタート位置を獲得。さらに彼にとってはもっと重要なチャンピオンシップ・ポイントを得点することが出来たのだ。これによりオールメンディンガーとウイルソンに対しての得点差は63ポイントへと開く。ブルデイが明日のレースでオールメンディンガーとウイルソンの両者に対し、7ポイント以上の差をつけてレースをフィニッシュすれば、これまでチャンプ・カー・シリーズのドライバーで、唯一人テッド・ホーンしか成し得ることが出来なかった、3年連続チャンピオンシップ達成の栄光を手にすることとなる。
ブルデイ以下のラインアップは、金曜日の第一予選のタイムの順位に従い、マイ-ジャック・コンクエスト・レーシングのルーキー、チャールズ・スウォルスマン(#34 マイ-ジャック・コンクエスト・レーシング フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)が自己キャリア・ベストの3番グリッドを確保。ロード・アメリカにおいて過去3回連続で表彰台に上がっているアレックス・タグリアーニ(#15 オージー・ヴィンヤーヅ フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)は、スウォルスマンの横2列目の外側からスタートする。
オールメンディンガーとウイルソンは3列目からブルデイを追撃。オールメンディンガーは5番グリッド、ウイルソンは6番グリッドからのスタートとなる。今回の予選結果によりオールメンディンガーは、今シーズンのここまでのすべてのレースにおいて、予選4位以内からスタートする記録を更新。続く4列目はルーキーが占めた。ロシュフランズ・ルーキー・オブ・ザ・イヤー賞のポイント・リーダーであるウィル・パワー(#5 オージー・ヴィンヤーヅ フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)とキャサリン・レッグ(#20 ベル・マイクロ フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)はそれぞれ7位と8位の位置からスタート。アンドリュー・レンジャー(#27 ウォルマート/タイド フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)は9位で、6戦連続でトップ10スターティング・グリッドを確保する傍ら、ロード・アメリカで優勝経験を持つブルーノ・ジュンケイラ(#2 ホール・イン・ザ・ウォール・キャンプス フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)が、予選10位の位置から明日の決勝レースに挑む。
明日のチャンプ・カー・グランプリ・オブ・ロード・アメリカはアメリカ中部時間午後1時(アメリカ東部時間で午後2時)にスタート。その模様はSPEED TVのライブ放送で観戦することができる。またファンのみなさんはチャンプ・カー・ワールド・シリーズのオフィシャル・ホームページのレース・ディレクターから、詳細なアクションのすべてをご覧いただくことが可能だ。詳しくはwww.champcar.ws へログイン。
トップ3ドライバーのコメント
ダン・クラーク(#14 CTEレーシング-HVM フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)
「とてもいい気分だ。もちろんチームにとっても、これまでにいかに自分たちが前進してきたかを示す、すばらしい結果となったよ。今年はよい結果を残すために、全力で頑張ってきた。おかげでポール・アワードを獲得して、マシンに素敵なステッカーを貼ることができたね。今年僕たちは比較的良いスタートを切ることができている。ポートランドではスタート直後のターン1で2位に上がったし。今回も好スタートを決めて優勝争いができる自信があるよ。そのためには綿密な作戦を立てなくてはいけない。明日の朝のウォームアップ走行も参考になるだろう。明日はこれまでとは一味違う展開になるはずさ」
セバスチャン・ブルデイ(#1 マクドナルド フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)
「今回はかなり波乱の予選セッションだったね。このような結果になってほっとした。昨日は納得の行かない展開だったから。おそらく自分たちは昨日の午前中のセッションで、もっとも速いマシンを手にしていたと思う。午後はウェットとなってしまったが、我々としては比較的ハッピーだったよ。だからあまり無理をせずにマシンを降りた。そうしたら路面が乾いていくじゃないか。マクドナルド・チームにはただ脱帽するしかない。彼らはドライ・タイヤでもいけると読んでいた。でも僕はそうは思わなかったから、最後に逆転されたよ。でも明日は明日で何が起こるかわからない。フロント・ローからのスタートは気分がいいし、それにボーナスポイントの1点もとても貴重だ。明日はどのような展開になるか、楽しみだね」
チャールズ・スウォルスマン(#34 マイ-ジャック・コンクエスト・レーシング フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)
「スタートではどのようなことが起こるか、ある程度予想しなくてはならない。頭の中では、事前にあらゆるシナリオに対する数多くの準備と心構えをもって挑むが、実際のレースでは、その瞬間に何がベストかを一瞬で察知していくしかない。まずは様子をみるよ」
主な注目のポイント
・ダン・クラークはセバスチャン・ブルデイが2003年のサーファーズ・パラダイスでポールを獲得して以来、初となるルーキーのチャンプ・カー・ポールを獲得した。またクラークはCTEレーシング-HVMのドライバーとしては、ライアン・ハンター-レイがポール・ポジションからスタートして優勝した2004年のミルウォーキー以来のポール・ウイナーとなった。
・ルーキーのダン・クラークとチャールズ・スウォルスマンは日曜日の決勝レースでトップ3からスタートするが、これは2003年に二人のルーキーがトップ3からスタートして以来となる。最後にこれがあったのは、ミド-オハイオ・スポーツ・カー・コースでライアン・ハンター-レイが3番手のセバスチャン・ブルデイの二つ前のポジションからスタートして以来。
・キャサリン・レッグは日曜日の決勝レースを8位の位置からスタートする。これは彼女の短いチャンプ・カー・キャリアの中で、自身の持つベスト・グリッドとタイとなる。彼女は6月のミルウォーキーでも8位スタートを決めているが、チャンプ・カーのロード・コースでの結果としては、今回が最高位となる。