午前中のプラクティスでトップ・タイムをマークしたあと、午後の第一予選で暫定ポールポジションを獲得したブルデイ。積極的にコースを攻めながら残り時間10分、ターン1で単独スピンを喫した。幸いレッド・フラッグとはならずにそのままコースへ復帰したので、ベストラップ剥奪のペナルティにはならなかったが、彼のすぐ後ろにはトレイシーがいた。記者会見の質疑応答でメディアの一人がそのことについて触れ、「デンバーに次ぐトレイシーとの第二ラウンドには発展しなかったようですね」という問いかけに、隣のウイルソンをはじめ、室内には笑いが起こった。しかし当の本人にしてみれば「まだ笑えないよ」、といった感じでムスっとした表情。どうやらまだまだ2人の確執は続くようだ。
昨年、怪我で戦列を離れていたジュンケイラの代わりにニューマン・ハースのシートに座ったセルビアは、ここモントリオールでキャリア初優勝を飾った。それから1年が経ち、金曜日初日の予選ではトップのブルデイから0.330秒遅れの2番手をマーク。「昨シーズンはニューマン・ハースからのエントリーだったが、彼らはどのサーキットでも圧倒的な強さを見せていた。やはりその群を抜いたレベルは、決定的なものだったね。でもPKVだってここ4〜5戦は予選で上位に入ることが多くなり、現在のチームの状況にはとても満足しているよ」とコメント。明日の最終予選でも、上位に上がってくる可能性は大だ。ところでこのジル・ビルニューブ・サーキットは川の中州にあり、緑も多くてとても良い環境だが、野生の小動物も多く、朝のプラクティス中には鴨の親子がコースに迷い込んで赤旗中断。高速で疾走するマシンにとっては非常に危険だ。しかしモニターに映った親鴨と子鴨の行列はとても愛くるしく、それを追い回すマーシャルの姿がなんとも心和むシーンだった。
予選3位となったウイルソンは、タイトル争いに生き残るためにも、このモントリオールでは絶対に気を抜くことができない。「前がつまらなければ、もっとタイムアップできたはず」と語るウイルソンは、やる気満々。明日の予選ではさらにポジションアップが期待できそうだ。グランドスタンドを見てのとおり、サンノゼ、デンバーとトレイシーVSタグリアーニ&ブルデイの場外バトルが続いたせいか、今週末のモントリオールは金曜から大盛況となった。にっくきトレイシー(!?)をブルデイやタグリアーニが倒す姿を見たいのか、すでにグランドスタンドは完売になっているという。
トロント、エドモントンに続き、今年3度目のカナダ・ラウンドとなるが、同じカナダでもフランス語圏のモントリオールはまるで違う。英語圏とは考え方が異なるからか、ライバル意識が相当高く、関東VS関西どころの比ではない。同じカナダ人のトレイシーはここでまったく人気がなく、それどころか今回は完全なヒール(悪役)になってしまったかのようだ。前2戦で地元モントリオールのタグリアーニとフランス出身のブルデイと一戦を交えたトレイシーは「どうもフランス人(フランス語圏のカナダ人も含めて)は、ヘルメットを被ったまま喧嘩したがるようだ」とテレビのインタビューで発言。これで火に油が注がれ、トレイシーがコースに出るたびブーイングの嵐となる。目の前でスピンした時は大喝采が上がり、トレイシーはわざと手を振って応えていた。同じカナダ人なのにねー・・・。