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チャンプ・カー・ワールド・シリーズ第10戦デンバー[決勝日]フォト&レポート

<US-RACING>

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このレースウィークではチーム関係者はもちろん、各チームのマシンやメディア関係者のシャツなど、いたるところにこのダマッタのステッカーが貼られていた。ルースポートが彼の一日も早い回復を願って、このステッカーを配布したのだ。KIKIというのはダマッタが幼少のころからのニックネーム。彼と同い年の女の子の従兄妹が2歳のころ、まだ“クリスチアーノ”と発音できなく、その代わりに「キキ(Kiki)」と言っていたことから、家族や友人からはこの愛称で呼ばれるようになったとのこと。その下に書いてある“Push Please”というフレーズは、クリスチアーノがF1に参戦していた当時、トヨタの日本人エンジニアから、出走前にいつも「ダ・マッタ・サーン、プッシュ・プリーズ」と言われていたそうだ。今、彼の家族や友人、世界中のダ・マッタ・ファンから彼の元へ見舞いのエールが送られてきている。クリスチアーノ、プッシュ・プリーズ、なんとしても頑張って欲しい。皆がまた君の笑顔がサーキットに戻ってくる日を待ち望んでいる。

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予選2位フロントーからレッドタイヤを装着してスタートしたオールメンディンガーは、スタンダードタイヤを装着したブルデイの独走を許さず、射程内で追走。ブルデイにプレッシャーをかけ続けた。2回目のスティントでは後半レッド・タイヤの磨耗に苦戦するブルデイをとらえると、48周目のターン1で一気にこれをパスしてトップに躍り出る。「スポンサーの看板の前でパスできたから、いい絵になっただろう」と余裕のコメント。これでシーズン4勝目とはいえ、ブルデイとの32ポイント差を縮めるのは、容易でないことは確かだ。しかし勢いに乗るものは強い。次のモントリオールから、本当の戦いがスタートするのかもしれない。

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昨年のインディ500での大怪我から復帰したものの今シーズンは不調に見舞われていたジュンケイラだが、この得意とするデンバーで今年2度目の表彰台に上がった。ラッキーな展開になったとはいえ、やはりポディウムはうれしかったようでおおはしゃぎ。途中、あっさりとブルデイに先を譲ったように見え、物議を醸したシーンもあったが、その件については「絶対にない!」と言い切っていたジュンケイラ。帰り際にガレージで会って話しかけたら、「今回はラッキーだったけど、今までついていないことばっかりだったから、これぐらいはいいだろう。この勢いで残り4レースを戦いたいよ」と、久しぶりにいい笑顔だった。

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ルーキーらしくクラッシュが多いクラークは、クリーブランドやサンノゼではあと一歩のところで表彰台を逃していた。ジュンケイラ同様ラッキーな表彰台になったものの、その喜びようは半端ではなく、マシンを降りてクルーに飛びついたり持ち上げたりで大騒ぎ。チーム体制を一新したCTEにとっても、うれしいポディウムとなった。前回のサンノゼではギアボックストラブルでリタイアし、マシンから離れ際、タイヤにキックを入れていたクラーク。まだ22歳と血の気も多く、これからも大暴れしそうだ。

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それは最終ラップの最終ターンで起きた。バックストレート・エンドでアウトからパスしたブルデイの横に、ブレーキングでコントロールを失ったトレイシーが激突。2位争いをしていた二人はともにリタイアとなってしまう。完全にトレイシーをパスしていたブルデイにしてみれば、まったく信じられないといった様子で、マシンから降りてすぐにトレイシーに駆け寄って胸を突き飛ばす。トレイシーも「来るなら来い」といった感じで、一触即発のまずい雰囲気になってしまった。すぐにオフィシャルによって制止させられたが、サンノゼで保護観察処分となっていただけに、トレイシーはペナルティ間違いなしか。「マシンに問題があったのなんか、理由にならない。チームメイトのためにあんな事をしていいと思っているのか?」とブルデイ。確かにこれでオールメンディンガーはランキング2位に上がり、タイトル争いは面白くなったが、ブルデイにとってはたまったものじゃない。一方のトレイシーは「最後の5周は燃料がうまくピックアップできない状態になり、かなりフラストレーションがたまっていたよ。あいつは35ポイントもリードしているのに、たった2ポイントのためになんであんなリスクを犯すんだ。正直言って、悪いとは思ってないよ」といつものトレイシー節炸裂。なんだかんだ言って、今年もこの二人は見せてくれます。

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プッシュ・トゥ・パス・ボタンと同様に、このシリーズにエキサイトメントを加えているのがこのブリヂストン・ポテンザの“レッド・タイヤ”だろう。しかし、今回のレースでは、このオルタネート・タイヤが各チームの戦略に大きな影響を与えたようだった。デンバーのコースでは、“レッド・タイヤ”の寿命が通常よりも短かったようで、しかも新品と消耗したものとの差が大きかったらしい。可能な限り燃料とタイヤを温存して2ストップで走りきるために、各チームとしてはスタンダードの“ブラック・タイヤ”のみを使用したかったのが本音のようだった。しかしルール上レース中にかならず一度は“レッド・タイヤ”の使用を義務付けられていたので、どのタイミングでこれを使用するかがカギとなった。