まだ金曜なのに4万人以上も入り、初日からヒートアップしていたサンノゼ。ここのところ熱波に襲われているカリフォルニアだが、28度とそれほど高くはなかったのも幸いした。快晴のもと、予選トップに立ったのはトレイシーで、昨年の覇者ブルデイをわずか0.004秒上回った。このコースの特徴は第1ターンのヘアピンで、長いストレートのあとに40キロまでスピードをダウンしなければならない。「ここが最もおもしろい観戦場所になるだろうね」というのは昨年の覇者ボウデイ。このブレーキング競争が、勝負の行方を左右しそうだ。
昨年はスケジュールどおりに始めることができず、準備不足が露呈したサンノゼだったが、今年は見違えるほど、素晴らしい仕上がりとなった。まずは路面で、バンプが削られてスムーズになっただけでなく、問題だった線路もしっかりと整えられている。「昼と夜ほどの違いがあるよ」と語るのは、初日の予選でトップ・タイムをマークしたトレイシー。このコースを担当しているのはクリス・ナイフェルで、元チャンプ・カーのドライバーでもあり、2年前までは競技委員長もやっていた。記者会見でトレイシーはその場にいたナイフェルに賛辞を送り、メディアからも拍手があがる。昨年、自ら大汗をかいてコンクリート・ブロックを動かしていたナイフェルの苦労が、報われたかのようだ。
この週末の最大の話題が、来年以降のシャシーであるパノスDP01が発表されたことだ。市役所でセレモニーは午後7時から野外で始まり、ハーレーで乗り付けたドライバーへのインタビューやダンスなどが1時間ほど続いたあと、カルコーベンの掛け声によって新車のベールがとられた。日本ではIRLのシャシーで知られるパノスだが、同じオープンホイールでも、そのデザインコンセプトはまったく異なる。発表されていたイラストがいまひとつ洗練度に欠けていたこともあり、いったいどんな実車となるか心配だったファンも多いはず。しかし目の前に現れた新車は、紛れもなくチャンプ・カーそのものだった。トロイリー・デザインのカラーリングもいい。
2000年シーズンに参戦していたスイフト以来となるアメリカ製シャシーのパノスDP01は、カルコーベンによると、3つのコンセプトを基にデザインされたという。一つ目はファンにもっとエキサイトメントを提供することで、より接近戦となり、オーバーテイクもしやすくなること。二つ目はファンと同じようにチームにもエキサイトメントをもたらすことで、三つ目として劇的なコストダウンを達成することにより、新しいチームの参入を促進することが目的だ。値段はローラが450000ドルなのに対し、295000ドルと大幅にダウン。ちなみにIRLは306000ドルだったりする。
デザイン的なところで見ると、最近のトレンドともいうべきハイノーズにはなっているが、チャンプ・カーらしいロールバー周辺の処理やロー&ワイドのフォルムはそのまま。重量は100ポンド(約45キロ)も軽くなっていながら、ドライバーを保護する安全性は格段に向上しているという。また、コーションを少なくするためのエンジンスターターを装備し、自力でエンジンの始動が可能に。驚いたのはセミオートマチックのパドル・シフターを採用したことで、ドライバーはダウンシフトの際にスロットルで回転数を合わせる必要がない。代わる代わるドライバーが乗って、まるで子供のようにペダルをいじったり下を覗いたりで大盛況。いったいどんな走りを見せてくれるのか、興味津々だ。