最終予選開始の午後2時25分、グリーン・フラッグと同時に誰よりも早くコースインしたトレイシー。しかし最終コーナーの立ち上がりで、勢い余ってスピンを喫してしまう。それがボウデイの進路妨害にとられてしまい、ペナルティというハンディを背負ったにも関わらず、コース・レコードを生む白熱のタイムアタックを披露した。渾身のパフォーマンスを披露したトレイシーは、昨年に続きクリーブランドで3度目のポール・ポジション。ここまでの5戦中、今季2回目のポールはトレイシーが初となる。「自分のスタイルはほとんどが一発勝負のタイム・アタックだけど、今回はペナルティがあって連続で速いタイムを記録しなければならなかったから、いつもと勝手が違ったよ」というトレイシー。見事チームの期待に応えて通算24度目のポール・ポジションを勝ち取った彼は、赤旗中断で予選が終了すると同時に、ピットボックスで安堵の笑みを浮かべていた。まさにトレイシーに始まり、トレイシーで終わった予選。今回の立役者は、間違いなく彼だといえる。隣の女性はクリーブランドの市長さん。
「最初のアタックは問題なくスムーズにいった。2度目はコース上に他のマシンが多かったから、思うようにアタックができなかったんだ。この予選ではオプション・タイヤの持つポテンシャルのすべてを出し切ったという感じではない。ベスト・ラップをマークしたのは、ブラック・タイヤ(スタンダード)だったからね」と、少し不満の残る最終予選となったダ・マッタ。わずか0.005秒という僅差でポールを逃したが、チームの雰囲気はそれほど悪くなかった。ミルウォーキーではポール・ポジション、ポートランドでは優勝と着実に力をつけてきたPKVレーシングは、「自信」という大きなアドバンテージも見方につけてきているようだ。とはいえ、4人のチャンピオンのうち、他の3人が大活躍しているだけに、オーナー・ドライバーのバッサーにももう少しがんばって欲しいところ。
「ちょっと苦戦気味かな。今回はなんとかトップ3に食い込めた、という感じ。チームはこの二日間、全力を尽くしてマシンの持てる性能を引き出しているよ。マシンのバランスには満足している」とボウデイ。特に問題があるわけではないのに、得意のクリーブランドでポールが取れず、いささか納得のいかない様子だ。どうやら、トレイシーに行く手を阻まれて失速した際に、そのまま次のラップでアタックを続けるべきかどうか迷った末、いったんピットに戻ったことが凶となってしまったようだ。後半になってコースインした時点で、なかなかクリアラップを取れなかったという。それぞれ性格の異なるチャンピオンたちが予選トップ3を占める結果となったが、明日の決勝ではとにかく全員がクリーン・スタートを決め、今日の予選同様白熱したレースを展開してほしい。
「マシンはセッティングを煮詰めていったことで、昨日から比べて格段に良くなった。ドライビングも楽になったし、とても好ましい状態だね。まだアンダーステアが多少残るけど、チームは予選用にしっかりとした仕事をしたよ。今回は4番手のスタートだから、良い結果を残せるようにがんばる」と語るのは若干18歳で、ルーキー最上位のレンジャー。2002年から2004年の歴代チャンピオンたちに続く、2列目4番グリッドを獲得してみせた。まだチャンプ・カーへ参戦して5戦目であるにもかかわらず、予選終盤でいきなり上位に顔を出して周囲を驚かせたルーキーは、果たしてどんな気分で明日の決勝スタートを迎えるのだろうか。