<US-RACING>
予選10位からスタートしたダ・マッタが、チャンプ・カー復帰後わずか4戦目にしてうれしい今季初優勝を飾った。オルタネート・タイヤを装着してスタートに臨んだダ・マッタは、グリーン・フラッグ後に13番手までポジションダウン。その後再び10番手まで順位を上げた後、他のドライバーの動向をよそに13周目にピットス・トップして17番手まで後退した。しかし、このピット・ストップのタイミングを変えた作戦が功を奏し、47周目に発生したイエロー・コーションで上位勢が2度目のピット・イン。ここでダ・マッタはトップに躍進し、しかもオルタネート・タイヤで燃料の重くなったドライバー達との距離を広げることに成功する。ひと足早く75周目に最後のピットを済ませて5番手に後退したダ・マッタは、他のドライバーがピットに入ると82周目に再びトップへ。最後までレースをリードし、チェッカード・フラッグを真っ先に受けた。トップ・グループとピットのタイミングをずらす作戦が当たったわけだが、チームメイト兼オーナーのヴァッサーは、他のドライバー達と同様のタイミングで入って6位でフィニッシュしている。2位となったボウデイが順当に行けば優勝していたレースだが、ダ・マッタのように作戦次第で勝つことができるのも面白い。さすが名将ジム・マギー。
週末の予報は良い方向に外れ、決勝日も昨日に続き快晴となった。朝のうちは曇っており、気温も15度低かったが、レースがスタートすると最高気温は29度まで上昇。蒸し暑い一日となった。ドラック・レースも開催される長いフロント・ストレートの途中には、ロード・コースのレースの際に使用されるフェスティバル・シケインと呼ばれるS字シケインがあり、毎年スタート時にアクシデント発生が危惧されている。昨年はこのシケインでジョルダインJr.がドミンゲスのマシンに押し出されてイエロー・コーションとなったが、今年は接触するドライバーはなく、クリーンなスタートとなった。レース中のイエロー・コーションもウイルソンがコースサイドにマシンを止めてリタイアした時だけとなり、クラッシュなどのアクシデントは発生せずに1時間51分51.404秒で終了。これまでのポートランドで最短のレース・タイムを更新することになった。
フロント・ローからスタートしたルースポーツの2台。トップでレースをリードしていたウイルソンは、確実に2番手とのタイム差を広げ、41周目には10.718秒ものリードを築いていた。しかしレースも中盤へと入ろうとしていた45周目、スタート・フィニッシュ・ラインあたりでエンジンが突然止まってしまい、フェスティバル・シケインを惰性で通過すると、ターン2を過ぎたあたりでコースサイドに停止。エンジンのアクシデントはワンメイクになってからあまり起こらなかったが、運悪くトップをリードするウイルソンに発生してしまった。一方、予選2位からスタートしたオールメンディンガーは、オープニング・ラップでトレイシーに抜かれて3番手に。トップ・スリーをキープしたかったものの、マシンのバランスが悪くなり、気持ちとは裏腹に徐々に後退して5位でレースをフィニッシュした。チームと両ドライバーにとって、初優勝を飾るのに最高のスタート・ポジションとなったが、やはり優勝するのはそう簡単なことではない。
予選5番手からスタートしたボウデイは、レース中の最速ラップを記録する走りでポジションを上げ、72周目には前を走るトレイシーをパスして2位でフィニッシュした。これで106ポイントとなり、ランキングでトップを維持。3位でフィニッシュした前戦のウイナーであるトレイシーは、ランキング3位から2位にポジションアップする。このレースでボウデイとの差は11ポイントとなり、二人のチャンピオン争いが今後展開するかもしれない。今回リタイアに終わったウイルソンはランキング3位で、チームメイトのオールメンディガーが4位。優勝したダ・マッタが5位、4位でフィニッシュしたドミンゲスが6位と、ランキング3位から6位までが70ポイント台となっている。この中からボウデイとトレイシーに追い着くドライバーは現れるだろうか。
チャンプ・カー・ワールド・シリーズのオーナーの一人でもあるカルコーベンが2003年から共同オーナーを務めるPKVレーシング(2003年まではPKレーシングで、そのころのPはクレイグ・ポロックのPだった)。2004年からはポロックが抜け、カルコーヴェンのビジネスパートナーであるダン・ペティトが加入し、1996年のチャンピオン・ドライバー、ヴァッサーもオーナーのひとりとなる(現在唯一のオーナー兼ドライバー)。今年から2002年のチャンピオン、ダ・マッタがチームメイトに加わり、二人のチャンピオン・ドライバーによるチームが誕生。これまではヴァッサーが昨年トロントで入賞した2位が最高だったが、前戦のミルウォーキーでチームにとって初のポール・ポジションをヴァッサーが獲得し、今回はダ・マッタの手によって念願の優勝を達成した。予選まではルースポーツの初優勝になるかと思われたが、蓋を開けてみれば、一年早く参戦を始めたPKVレーシングが作戦勝ちで初優勝を勝ち取ることになる。退院したばかりのカルコーヴェンも大喜びだった。