CHAMP CAR

CARTチャンピオンシップ・シリーズ 第3戦 テキサス【予選】レポート

<US-RACING>
■初オーバルでブレックが今季2度目のポール、中野が日本人記録を塗り替える5番手

朝は快晴に恵まれたが、昼過ぎから雲が多くなり、少し風が出てきた午後のテキサス・モータースピードウエイ。気温26度というコンディションの中、今シーズン初のオーバル・コースでの予選がポイント・ランキング順にスタートする。現時点でのコースレコードは、1998年にIRLで記録された225.979マイルであり、今回の予選タイムがそのまま同コースの新記録となるだろう。

オーバル特有の1台ずつによる“シングルカー・クオリファイ”で行われるこの予選、プラクティスとは異なり単独で走ることから、前車のドラフティングはいっさい効かなくなる。そのため、現在までのプラクティスにおける最速スピード、236.678マイルからどれだけ遅くなるかも注目したい。

午後1時30分、開幕2戦でリタイアが続いていたザナルディからコースイン。プラクティスでも6位と好調だったザナルディは最初のラップで23.003秒、231.935マイルを記録する。続いてオーバルにおける2度のポールポジション経験を持つカーペンティエが22.864秒を出し、スピードも233.345マイルといっきに2マイル近く引き離す。

唯一のフェニックス(イルモア)エンジンを使うルーキーのウイルソンは、エンジンに問題を抱えていたために24.308秒。昨年の最後のオーバル、カリフォルニアで優勝したフィッティパルディは231.171マイル(23.097秒)を出し、同年のブラジルでルーキーながらポールポジションを獲得したタグリアーニは231.191マイル(23.077秒)。ともに23秒を切れなかった。

今年からチームを持つことになったフェルナンデスは230マイルを超える23.801を記録したが、タイムも23.116秒と今ひとつ。また得意の後方からの追い上げを見ることができるか。次は本来ならグージェルミンがアタックする予定だったが、昨日のプラクティスでクラッシュを喫したために大事を取ってレースも休場することになった。グージェルミンの連続参戦記録は130戦でストップしてしまう。

7番目にコースに飛び出したのは、新生シグマチームから参戦するCART2年目のセルビア。現在トップのカーペンティエに22.900秒、スピードも232.978マイルと肉薄したが、2周目でフォード・エンジンがブローし、白煙を上げながらピットへと戻ってくる。ホンダとトヨタの予選スペシャルエンジン、片バンクターボ勢は大丈夫か。

そのトヨタのドライバーで、プラクティスにおけるルーキー最速のタイムを出していたディクソンは23.319秒とタイムを縮めることができない。スピードも228.792マイルとプラクティス(232.805)から大幅に下回ってしまう。続いてアタックしたジョルダインjr.は230マイルを超える230.761マイル、23.120秒をマークした。

ここで10番目に登場したのはCART2年目の中野。久しぶりのオーバルとなる今回、プラクティスでは総合19位に終わっていたが、2周目のアタックでこの日3人目の22秒台である22.988秒を叩き出し、スピードも232.086マイルに達する。これまで23秒をきることが無かった中野だが、掲示板の上から3番目に中野のカーナンバーである52が掲示され、一気に注目を集めることになった。このまま高位置をキープできるだろうか。

昨年の開幕戦、同じ1.5マイルのオーバルであるホームステッドで初優勝したパピスは23.176秒。同様に昨年初優勝を遂げたモレノは23.580秒となかなか23秒を切れない。今回が初のシングルカー・クオリファイなった昨年のフォーミュラニッポン・チャンピオンの高木は、23.533秒とモレノを上回るタイムを1周目に記録したが、2周目はスピードが伸びなかった。

今年からフル参戦することになったハータは、ほぼ1年ぶり(中野の代役で走った昨年のブラジル以来)のオーバルながら、22秒台にはいる22.931秒を記録して中野をわずか上回った。続くジュンケイラは23.373秒、ミナシアンは23.146秒とガナッシの二人のルーキーは23秒を切ることができない。

次にコースインしたのはこのコースで唯一レースの経験をもつ(IRL時代に5レース、最高位は3位)ブレック。プラクティスでも5番手だったブレックは、予選アタック1周目にそれまでのトップだったカーペンティエを上回る22.854秒、233.447マイルのスピードをマークしてトップに躍進。中野はこれで5位に落ちてしまうが、このままいけば日本人の予選記録最上位となる。

この後、初日の最初のセッションでトップだったカナーンがアタックするも23.142秒。同じホンダの方バンク・ターボを搭載するフランキッティが23.165、チームメイトのアンドレッティが23.215秒と、タイムがなかなか伸びないホンダ勢。一方のトヨタ勢もバッサーが23.479秒と、今回は片バンク・ターボがあまり上位に進出できない。

残るは4人。まずプラクティスでトップだったトレイシーがアタックするが23.097、前戦の覇者カストロネベスも23.292、チームメイトで昨年のチャンピオン、ド・フェランも23.067秒に終わる。結局、最後のアタッカーとなったポイントリーダーのダ・マッタも23.105秒と、この4人は誰も23秒を切ることができず。

この時点でブレックの開幕戦に続く2度目のポールポジションが確定。2位はカーペンティエ、3位セルビア、4位ハータとフォード・ユーザーがトップ4を占める中、この4人に続く22秒台を記録した中野が5位。9人のホンダ・ドライバーの中でトップタイムをマークする大健闘となる。

CART史上、日本人の予選5位は今までの最高記録。これまでは1999年に服部尚貴がストリートコースのヒューストンで記録した予選7位が最高だったが、オーバルにおいては1991年にヒロ松下がミシガンで獲得した9位がベストポジションだった。

明日のレースは250周、596.3キロ(370.5マイル)の長丁場となる。トップ3は勝てば全員が初優勝、日本人の記録を塗り替える大活躍の予選を見せた中野にも期待したい。

●ポールポジションのブレックのコメント
「今日のマシンはまさに完璧の状態だった。今日の結果はボクが他の誰よりもコースを把握しているおかげではなく、単にボクのマシンがより優れたセッティングだっただけさ。トラックコンディションは周回が重ねられるごとにどんどん良くなり、タイム的にはクオリファイ後半グループの方がコンディションで有利に働いたんじゃないだろうか。それにしてもここまでスピードが高くなるとは正直予想していなかったよ。昨年の12月にここテキサスでテストした時は221マイルを記録し、その後スピードウェイは今回のレースのためにトラックのバンプを削って路面を整えていたのは知っていたけど、まさか12マイルもトップスピードが上がるとは思っていなかった。

ここでのレース経験は多少アドバンテージになると思うけど、他のドライバーたちはきっとすぐに調子を上げてくると思う。ただ一ついえることは、各ドライバーがお互いに忍耐強くレースすることが必要だね、特にテキサスのようなハイバンクのオーバルはたった一つのミスが大きなアクシデントを招く。明日の決勝では、とにかくやれることは全てやって、そうすれば結果は必ずついてくると信じているよ」

●予選5位の中野信治のコメント
「昨日はずうっと決勝用のセットアップをやっていて、今日になって初めて燃料を抜いて走ったんだけど、車はほんとうにパーフェクトに近い状態だった。昨日から徐々に良くなっていただけに、いい感じで予選に臨むことができたね。今回、ホンダの予選用エンジンもすごく良かった。問題といえば、ポップオフバルブ(CARTから支給されるエンジンの出力を規制する装置)が走っている時の振動で開いてしまうトラブルがあって、それが無かったらもっとスピードが出ていたと思う。久しぶりのオーバルだし、これからも(オーバルが)続くんでこの調子をキープしたいですね」