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CARTチャンピオンシップ・シリーズ 第1戦 モンテレイ【決勝】レポート

<US-RACING>
■ダ・マッタが移籍後の初レースで優勝、デビュー戦となった高木は一時5位を走行

決勝レース当日は晴れ時々曇り、気温30度、トラック温度41度というコンディション。1981年以来となる久しぶりのメキシコラウンドだが、朝から続々と観客が集まり、その数は実に11万6千人! この4日間で31万8千人という驚異的な記録が達成された。スタンドは熱狂的な観衆で埋め尽くされ、スタート前からエキサイティングな歓声があちらこちらで飛び交っている。

超満員の観衆が見守る中、午後3時6分にレースがスタート。オープニングラップはポールポジションからスタートを切ったブレックが快調に飛ばしてトップの座をキープ。21世紀初のCARTは、昨シーズンのルーキー・オブ・ザ・イヤーのリードでその幕を開けた。

オープニングラップでトップグループに大きな混乱はなかったが、今シーズンからCARTに復帰したザナルディと、古巣であるチップ・ガナッシのルーキー、ジュンケイラのマシンが接触。これによってジュンケイラのマシンがコースアウトし、エンジンをストールさせてしまった。ジュンケイラはその後セーフティカーに引っ張られながら、エンジンに再度火を入れてコースへと戻るが、牽引ロープを付けたままだったためにブラックフラッグが振られピットイン。ロープを外して再度コースへ復帰した。

マシンのセッティングも決まって、トップを快走するブレックはレース序盤から順調に後続を引き離してアドバンテージを確立していく。トップポジションをしっかりと守りながらレースをリードするブレックに同じローラ・シャシーのダ・マッタ、カストロネベス&ド・フェランのペンスキー、そして今シーズンからチーム・モトローラに移籍してホンダパワーを手に入れたアンドレッティらが続く展開となった。

レース9周目、ルーキーのマックス・ウィルソンが最終コーナーでコントロールを失いコンクリートウォールにクラッシュしたため、この日初めてのフルコース・コーションが発生。ここまでリードを拡大していたブレックだったが、築いたリードが縮まってしまうことになった。この時、ザナルディとフィッティパルディ、高木らがピットへ。高木は燃料だけを入れてコースに復帰し、14周目にグリーンとなってレースが再開。

その後、レースは23周目に今度はベテランのモレノが先ほどと同じ最終コーナーでコントロールを失い、激しくクラッシュ。コースはこの日2回目のイエローコーションとなった。このイエローでトップグループは一斉にピットへと向かうことになる。

それまでトップを快走していたブレックだったが、ピットインしないでコースに留まったルーキーのディクソンにトップの座を譲ることになる。同様に1ピットストップにチャレンジするハータとフェルナンデスが続き、ブレックは4位でコースへ復帰。ブレックはその後28周目にフェルナンデスをパスして3位へ浮上する。

28周目、未だ勘が戻らないのか、ザナルディがターン5出口でアクセルコントロールを誤り単独スピン。マシンにダメージはなかったためコースへと復帰するが、大幅なタイムロスを強いられてしまった。

レースが30周を経過した時点でのトップはディクソン、これにハータ、ブレック、ダ・マッタ、そしてド・フェランらが続き、トップグループの順位に大きな変化がないままレースは中盤へと展開。

しかしこの頃後方では日本期待のルーキー、高木が着実にポジションをアップ。序盤のコーションで先に燃料だけを入れていた高木は、トップグループがピットへ入ったことで8位までポジションを上げていた。その後、前を走るフェルナンデスと激しいバトルを繰り広げることになる。

高木は前を走るフェルナンデスに背後からピタリと付け、プレッシャーを与えながら全く焦りのない落ち着いた走りを見せた。そして高木は燃費が苦しいフェルナンデスの一瞬の隙をついてパス。トップ争いよりも地元の英雄であるフェルナンデスとのバトルに観客は興奮し、高木に抜かれた瞬間大きなため息が流れる。

やがてぎりぎりまで燃料をセーブしていたトップグループがピットインを行うと、高木は一時5番手までポジションアップ。高木はここで守りに入らずさらに前を目指し、今度は4位を走っていたカストロネベスの前に出るが、勢いあまってコースアウト。その後再びカストロネベスをパスするも、3回目のピットインを行うためにピットレーンへと向かう際、ピット入り口で痛恨のスピン。マシンにダメージがなかったものの、いったんコースに戻らなければならず、大幅なタイムロスを強いられてポジションを18位まで落としてしまった。

全員がピットインを終えてトップは再びブレック、背後にダ・マッタ、ド・フェランらを従えながらトップを快走するが、43ラップ目にエンジンのカットオフが突如働いてしまうというトラブルが発生。ブレックはすぐにリカバリーするものの、ダ・マッタはパッシングポイントが少ないコースで、この一瞬のチャンスを逃さずにトップの座をブレックから奪い取った。

レースも終盤に差し掛かろうとしていた53周目、トップのダ・マッタを激しくプッシュするブレックがターン10手前でパスしようと試みるが、ブレックのマシンはコントロールを失いコースアウト。ブレックはすぐにコースへ復帰して2位のポジションをキープ、再びダ・マッタにチャージをかけるものの、依然としてトップの座を奪い返すことができない。

その後コーションも無く、57周目を迎えたところでトップグループは2回目のピットインを開始。ダ・マッタはトップを維持したままピットアウトすることに成功するが、2位にはド・フェランが浮上、さらにポール・トレイシーが続き、ブレックは4位まで後退してしまった。

68周目、フィッティパルディが最終コーナーでコントロールを失いコンクリートウォールにヒット。最終コーナーはアスファルトの一部が剥げているために、その破片のせいでラインを少しでも外れてしまうとマシンのコントロールが非常に困難となっていた。このフィッティパルディのクラッシュでコースは再びイエローコーション。これでレースは予定の80ラップに到達する以前に、規定時間の2時間に達する事が濃厚となった。

レースはこの終盤のイエローで各マシンの差が再び一気に縮まる。トップを快走していたダ・マッタにとっては辛いシチュエーションだが、背後からポジションアップを狙うドライバー、またはレースを観戦するものにとってみれば、これほどのクライマックスはないといっていい。

ダ・マッタにとって、この終盤のイエローは非常に大きなプレッシャーとなったはずだが、73周目にグリーンとなってレースが再開された後も、後続に全くスキを与えずにトップをしっかりとガード。結局77周目に規定時間に到達し、ダ・マッタは78周でチェッカードフラッグを受けて21世紀初のウィナーとなった。ダ・マッタにとっては、昨シーズンのシカゴ戦で獲得した初優勝以来のうれしい2勝目だ。

気になる日本勢だが、高木は18位にポジション転落後も粘り強い走りを見せて10位までポジションを挽回。ルーキーでは最高となるシリーズポイント3点を獲得した。一方の中野はピット・ストップでのエンジンストールや、ザナルディとの接触などが相次ぎ、5回もピットインを行うことになってしまった。しかしそれでも最後までしっかりと走り抜き、18位でレースをフィニッシュしている。

フォード、ホンダ、トヨタによる注目のエンジンウォーズ、最初の2回のプラクティスは大方の予想どおりホンダがトップだったが、予選はフォード。そして終わってみればトヨタがレースを制覇する結果となった。ホンダは2位から4位までを含めたトップ10の中に6台も入るなど、ドライバーの安定感ではダントツ。しかしローラシャシーが今回好調だったことを考えれば、自陣に一台もローラがないホンダは一瞬たりとも気を抜けない状況にあるといえよう。トヨタは今後もダ・マッタや高木の活躍が大いに楽しみであり、ブレックの初優勝も時間の問題といえるかもしれない。

注目の第2戦、ロングビーチ・グランプリは4月8日に決勝のグリーンフラッグが振られる。

■優勝したクリスチアーノ・ダ・マッタのコメント
「ニューマン/ハース・レーシングのドライバーに抜擢されたことで、ドライバーとして自分にプレッシャーをかけてきた。それだけに移籍して初のレースで優勝できたことはとても嬉しい。ケニー(ブレック)は力強い走りでトップを走行していて、僕がパスした後も、なかなか振りきることが出来なかったよ。そしたら彼はその後急に何かのトラブルでスローダウンしたみたいだ。2度目のピットストップのあと、マシンのバランスがどんどん良くなり、かなりコントロールが楽になった。それにしても優勝という形でシーズンをスタートできるというのは、とても気分のいいものだね」

■2位表彰台を獲得したジル・ド・フェランのコメント
「今週末の体調を考えると、2位という結果はシーズン開幕戦としては上出来といえるだろう。もう土曜日の朝から何ものどを通らなくてどんどん体力が落ちて行くのが分かった。それでもなんとか決勝レースでマシンに乗り込み、地元のファンの熱狂的な声援を感じた時、力が漲ってきた。最後のピットストップではタイヤ交換をしなかったにもかかわらず、最後までトップのダ・マッタを追いまわすことが出来たよ」

■3位表彰台を獲得したポール・トレイシーのコメント
「金曜日は手くセッティングが決まらなくて、クラッシュしてしまった。それもあって予選もあまり良くなかったんだ。それが、いざ決勝レースでは使用したタイヤのバランスがとても良くて、予選よりもレース中のほうがラップタイムが上がったぐらいだ。何度かライバルのマシンをパスする時も思い切って行けたし、納得のいくレースが出来て良かったよ。チームスタッフの努力の甲斐が実ったレースだった」