＜US-RACING＞
今年で56回目を迎えるアメリカ伝統の耐久レース、セブリング12時間のレース･ウィークがスタートした。初日は午前と午後に2回のプラクティスが行われ、総合トップを叩き出したのは、1号車のアウディR10。月曜日と火曜日に行われたテストでは、プジョー908の先行を許していたが、ここに来てアウディが反撃に転じた。「まだまだマシンには納得していないよ。月曜日のテストでクラッシュしてしまったから、今乗っているのは新しいシャシーなんだ。コース･コンディションが整っていないときのハンドリングに苦労している。なんとか快適にドライブできるセット･アップを、見つけようとしているよ」と話すのは、1号車に乗るディンド･カペッロ。7年連続のアメリカン･ル･マン王者の名にかけ、なんとしてもプジョーのデビュー･ウインを阻止したいところだろう。
テスト･デイで圧倒的速さを見せていたプジョーは、アウディの後塵を拝し、総合2位となった。とは言え、トップの1号車アウディとの差は、わずか0.017秒。午後のプラクティスでは、きっちりアウディを巻き返しており、依然としてプジョー優位を感じさせた。アウディとの総合優勝をめぐる戦いは、ますますヒート･アップしている。「マシンに関しては全てうまくいっているね。でも1日を通してこんなに路面コンディションがかわるのには驚いているよ。良い経験になる。今年に入ってから何度かテストをしてきたけど、他のシリーズでは大体ショート･コースを使うんだ。レースに向けて出来る限りのことはやれているから問題ないよ」と語るステファン･サラザン。明日の予選で、アウディとプジョーのどちらがポール･ポジションを獲得するのか、目が離せない。
LMP2クラスでトップをひた走るアキュラ勢。今日はフェルナンデス･レーシング（FR）が、P1クラスの2号車アウディを上回る1分46秒029を記録し、総合3位に入った。昨年は信頼性の高いローラ･シャシーを採用して参戦したFRだが、今年から満を持してアキュラ･シャシーにスイッチ。ウインター･テストでも積極的に走りこんでいたため、早くも成果が現れた「良い調子だよ。特に予選では強さを見せることができるんじゃないかな。もちろんレースでも問題ないだろうね。ポルシェに比べると経験がないし、特に僕たちはこのマシンになって3回しかテストしていないから、まだルーキーのようなもの。でもマシンの信頼性はあるので、アキュラ･シャシーのパッケージには、ポルシェと十分に戦える強さがあるんだ」と、自信を見せるオーナー兼ドライバーのアドリアン･フェルナンデス。昨年果たせなかったチーム初優勝を、この伝統の舞台で狙いに行く。
ポルシェ勢のトップは、ティモ･バーンハードとロメイン･デュマスが駆る、7号車ペンスキーのマシン。アキュラ勢2台の先行を許し、1分46秒978の総合6位に留まった。今年からインディカーに移籍したライアン･ブリスコーが乗る8号車は、総合7位。そのあとにダイソン･レーシングのポルシェが続き、今日はポルシェ勢のスピードが伸びていない。特にアキュラ勢トップのフェルナンデス･レーシングとは、1秒近くのタイム差があり、昨年王者の速さにかげりが見られる。明日の予選で巻き返しはあるのだろうか。
午前中のプラクティスでLMP2クラスのトップ･タイムをマークしたアンドレッティ･グリーン･レーシング（AGR）。最終結果では同じアキュラのフェルナンデス･レーシングにLMP2クラスのトップを明け渡すが、テスト･デイから続く好調ぶりをアピールした。昨年からチームに所属するブライアン･ハータと、新加入のクリスチャン･フィッティパルディ、今回スポット参戦するマルコ･アンドレッティとのコンビネーションも上手く機能しているようだ。「マシンはかなり乗りやすいよ。ブライアンのおかげでマシンに早くなれることが出来たからね。今回はマルコと一緒に走れるのが嬉しいよ。彼は驚くほどすばらしい仕事をするし、とても早くマシンに慣れていたんだ。アキュラは間違いなくスピード･アップしている。レースでもトラブル･フリーで走れるかもしれないね」と手ごたえを感じているフィッティパルディ。2年連続のクラス優勝を狙うAGRだが、もしかすると最大のライバルは同じアキュラ勢のチームになるかもしれない。
雲の切れ間から青空がのぞくセブリング。テストが行われていた2日間よりも晴れ間が多く、観戦にはもってこいの天候となった。気温も昨日より3度上昇して26度。少しばかり湿度が高いせいか、体感温度は実際よりも高く感じた。今日からサーキットがオープンとなり、場内にはキャンピングカーがぞくぞくと集結。大勢のファンが訪れたことで、サーキットの雰囲気も昨日までと一変し、レース･ウィークが始まったことを改めて感じさせた。