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アメリカン・ル・マン・シリーズ ウインター・テスト 【セブリング】 フォト&レポート

<US-RACING>

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今年で56回目を迎える伝統のセブリング12時間レースは、プジョーの参戦によって、アウディとの直接対決が実現する。クリーン・ディーゼルの両雄がコース上でバトルするのは、昨年のル・マン24時間レース以来だ。この2日間に行われた事前テストでトップ・タイムをたたき出したのは、やはりプジョー908。今年1月末に行われたウインター・テストでも、圧倒的な速さを誇示していただけに、下馬評どおりの速さが見られた。特にステファン・サラザンが記録した1分43秒302のタイムは、昨年アウディがマークしたポール・ポジション・タイムを1.672秒も上回る驚異的なものだった。「僕は2005年と06年にアストン・マーチンに乗ったことがあるんだけど、今のプジョーとは何もかも違うよね。アウディに比べても僕たちは速いし、全ての点で上手くいっているよ。今のところ、マシンはこの路面コンディションにとても合っているんだ。路面がすごくバンピーだから、ル・マンに向けてかなり良いテストになるよ。この12時間を生き残ることが出来たら、ル・マンでも完走できるだろうね」と、自信を見せるのはチームメイトのペドロ・ラミー。サラザンと、かつてチップ・ガナッシからチャンプ・カーに参戦していたニコラス・ミナシアンとともに、初出場初優勝を狙いに行く。

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プジョー対アウディの一騎打ちに割って入ったのは、なんとLMP2クラス、アンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)アキュラのマルコ・アンドレッティ。初めて乗るアキュラのマシンを難なく乗りこなし、LMP1のアウディを上回る1分44秒435をマークする快走を見せた。「まだやるべき事はあるけど、マシンのバランスはいいし、十分なダウンフォースもあるね。何周かはターン1を全開で走れたよ。今のところこのコースではベストなマシンになっている。他のマシンとは比べ物にならないくらい、まとまっているんだ。確かに僕のお祖父ちゃん(マリオ・アンドレッティ)は、このコースで沢山の歴史を作ってきた。彼はどこに行っても速かったから、僕も同じように速く走りたいね」と話すアンドレッティ。昨年のセブリングで、アキュラを見事にデビュー・ウインへ導いたAGRだけに、今年も早くから期待が膨らんでしまう。

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すっかりプジョーの速さにやられているアウディ勢。2日目にはLMP2のAGRアキュラにも先行を許してしまい、苦戦をしいられている。だが、今のところチームの雰囲気やドライバーのコメントからあせりの色は見られない。「プジョーと一緒にレースをするなんて、スポーツカー・レース黄金期の再来のようだね。今週末は一流のマニュファクチャーによる、すばらしいバトルになると思うよ。このレースとこのコースは、マシンはもちろんのこと、タイヤ、チーム、ドライバーにもかなり大きなストレスがかかるんだ。セブリングを走るということは、全てのことに必要以上の関心を払わなくてはいけない。ル・マンに出場しようとするマシンには格好のテストになるね」とまだまだ余裕のディンド・カペッロ。明日以降の巻き返しに秘策があるのだろうか。

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マリーノ・フランキッティが抜けたAGRには、新たにクリスチャン・フィッティパルディが加入。チャンプ・カーではお馴染みのフィッティパルディも、2003年にNASCARへ数戦参戦した以降は、しばらく北米のレースから遠ざかっていた。今回かつてのチームメイトでもあるマイケルのオファーを受け、北米レース界に久々の復帰を果たすことになった。「アキュラのマシンをドライブできて嬉しいよ。またトップ・カテゴリーでレースができるなんて、とてもエキサイティングだね。まだまだマシンを学ばなくてはいけないけど、セブリングへの準備はできているよ」と喜ぶフィッティパルディ。チームはアウディを上回る好調ぶりを見せており、デビュー戦でのクラス優勝も夢ではないだろう。

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アキュラ勢のハイクロフト・レーシングには、1996年のIRLコ・チャンピオンであるスコット・シャープが、お抱えスポンサーのパトロンとともに移籍してきた。マシンもパトロン・カラーにお色直しされ、ライムグリーンが映える鮮やかなカラーリングになっている。昨年まで慣れ親しんできたオープン・ホイールを離れ、スポーツカーという全く違うジャンルへの挑戦を決断したシャープだが、アキュラのマポテンシャルには驚いたようだ。「初めてマシンに乗った瞬間、アキュラの技術がいかにすばらしいかが分かったんだ。ダウンフォースレベル、ハンドリング、システムの全てに圧倒されたね。ほんとうにすごいマシンだよ。今までドライブした中でベストなマシンだね」と興奮を隠しきれないシャープ。今日は1分46秒537の7位につけ、アキュラでのデビュー・レースに備えている。

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薄っすらとした雲がかかるセブリング・インターナショナル・レースウェイ。時折雲間から太陽がのぞくこともあったが、晴れと曇りが繰り返されるはっきりとしない天候だった。気温は23度とそれほど暑くなかったため、まさにテスト日和といえた。今週末に控えたレースに向けて月曜日から行われているテスト・セッションは、ウインター・テストという名目のため、関係者のみしかサーキット内にアクセスできない。明日、水曜日からレース・ウィークが始まり、サーキットには毎年恒例のレースを観るため、アメリカ各地から大勢のファンがキャンピングカーとともにサーキットにあふれるだろう。