<US-RACING>
アメリカン・ル・マン・シリーズ第10戦は、IRLの予選終了後の午後3時15分に、2時間45分のレースが幕を明けた。短いホーム・ストレートを立ち上がり、ペンスキー・ポルシェの2台がターン1に飛び込んでいく。その後ろにLMP2クラスのマシンが続き、デトロイトの市街地レースはLMP2クラスの独壇場となるかに見えた。
総合優勝を手にしたのは、ロメイン・デュマス/ティモ・バーンハード組のペンスキー・ポルシェ。第3戦ロング・ビーチから続く8連続総合優勝を達成したが、今日のレースはアウディが最後まで粘り強さを見せたため、一筋縄ではいかなかった。2時間45分レースのハイライトとなったのは、最後の3分間。不利な状況を打開してトップを快走していたアウディを、バックマーカーを利用してパスする。直後のストレートで抜き返されるも、コーナリング性能で勝るペンスキーは次のコーナーでもう一度パスを試み、勝負を決めた。「マシンが走るたびに良くなり、とくにフロント・グリップが良かったんだ。アウディのエマヌエル(ピロ)に追いつくのは簡単だったよ。コーナーでも凄く安定していたから、エマヌエルと違うレーシング・ラインを通って彼を抜き去ることが出来た。残念ながらコーナーの後にはストレートがあるから、抑えるのは無理だなって思ったね。それでも次のコーナーで、アウトサイドからラインをクロスさせてもう一度抜いたんだ。凄く楽しかったよ」と大喜びのデュマス。テクニカルなコースでは負け無しのペンスキー・ポルシェだが、アウディはその差を詰めつつある。次戦のプチ・ル・マンでもアウディを抑えることが出来るだろうか。
予選7位、8位からスタートしたアウディ勢は、不利と思われていた市街地コースで善戦を見せ、ペンスキー・ポルシェと壮絶な優勝争いを演じた。レースは終盤にトップへ躍り出たカーナンバー2のアウディが、ペンスキーを必死に押さえ込む展開となる。8戦ぶりの総合優勝が目前に迫っていたアウディだが、残り3分となったとき、周回遅れの引っかかった一瞬の隙をつかれ、ペンスキーにトップを奪われてしまう。一度抜かれてしまうと、抜群のコーナリング性能を誇るLMP2クラスのマシンを抜き返すのは難しく、結局アウディは2位と3位に終わった。それでもドライバーのピロは、優勝を逃したことより、不利な状況でも良く戦えたことを喜んでいる。「長くレースをリードしていたから、今日は勝てるかもしれないと思っていたよ。8番手からスタートし、結局2位で終わったけど、嬉しい気持ちばかりだ。良いレースを見せることができたんだからね」と語るピロ。惜しくもあと一歩ペンスキーに及ばなかったが、アウディがこの苦境を脱する日も近そうだ。
アキュラ勢はハイクロフト・レーシングがスピンを喫しながらも、フィニッシュまでマシンを運び、総合5位と健闘。LMP2クラスの3位表彰台を獲得した。「我慢して良いチャンスをじっくり待っていたんだ。このようなコースでオーバーテイクを決めるには、この方法しかないからね。リスタートでみんなが団子状態になっているときが一番のチャンス。アドリアン(フェルナンデス)がちょっと出遅れたから、なんとか抜くことができた。いろいろ問題があったけど、5位に入れて凄く嬉しいね」とドライバーのステファン・ヨハンソンは語った。一方、予選3位を獲得し、総合優勝が期待されたアンドレッティ・グリーン・レーシングは、ギアシフトのトラブルから14週遅れの総合19位に終わっている。ローラ・シャシーにアキュラ・エンジンを積むフェルナンデス・レーシングは、ハイクロフトに次ぐ総合6位に入った。
今日も快晴に見舞われたデトロイト。最高気温は24度と過ごしやすく、歩くと少し汗ばむくらいの陽気となった。デトロイトで初開催されたアメリカン・ル・マンは好評を受け、2008年もアメリカの“勤労感謝”の日に当たるレーバー・デイの週末、8月29日〜31日に再びIRLとのダブルヘッダーで開催されることが発表された。