1ヶ月前の2月9日、いつものようにTwitterを見ていたら、インディ・ジャパンが今季限りで終了するという衝撃的なニュースが飛び込んできました。2003年から6回参戦してきた僕にとって、非常に残念なニュースだったのは言うまでもありません。
日本のインディカー・レースのファンにとっても、年に1度の楽しみが無くなってしまうだけに、寂しく感じていることでしょう。レースに参戦していた数多くのドライバーやチーム・スタッフも、モテギのレースを毎年楽しみにしていたので、とても残念だとコメントする関係者がアメリカにもたくさんいました。
ツインリンクもてぎを運営するモビリティランドにとっては、厳しい決断だったことでしょう。そもそもツインリンクもてぎと言えばオーバル・コースがメインで、アメリカン・モータスポーツを広めるために作られたというイメージが強いと思います。だからこそ、ツインリンクもてぎが存続する以上、インディのレースが必ず続くのでは、と思っていた自分は甘かったのかもしれません。
僕自身、2003年にインディカー・デビューを果たして以来、アメリカン・モータスポーツの人気を向上させようと必死に努力し続けてきただけに、やはり今回の発表はショックでした。昨年はF1からTakuが転向してきて、インディの人気&知名度もようやく上昇してきていましたし、 未だに「どうして?」という疑問が何度も頭の中を駆け巡ります。今回は僕なりに、中止となった原因を探ってみたいと思います。
みなさんもご存知だと思いますが、他のレースと違ってインディ・ジャパンは招待レースなので、参戦するマシンや機材の空輸費、ドライバーやチーム・スタッフの旅費も含めて、プロモーターが負担しなければなりません。インディカーのレースを開催するにあたって、他のアメリカ国内で行なわれているレースよりも、かなりコストが高くなってしまう事情があり、イベントとして利益を生み出すことが非常に難しかったはずです。
ツインリンクもてぎはモーター・スポーツ好きにとってはたまらない、ひとつのテーマ・パークだと思います。ミュージアムやホテル、そして様々なコースが存在し、アメリカのほとんどのコースと比べても、施設のレベルは格段に上。ウォシュレット付きのハイテク・トイレはいつもきれいだし、パドック・カフェでは美味しい料理を食べることができます。アメリカではレースのたびに仮設のトイレやホスピタリティが用意されますが、常設のカフェはほとんど見たことがありません。当然のことながら、そのような施設を維持することも、大変だったであろうと容易に想像できます。
また、2008年にインディカーがチャンプカーと合併したことも、インディ・ジャパンにとって大きな打撃になったのかもしれません。合併以来、チャンプカーのレースを主催していたプロモーターがインディのレースをやりたいと主張し、レース開催を検討しているサーキットや都市が増えています。
インディ・ジャパンを持続させるには、レースの運営団体であるINDYCARに対し、他のプロモーターからのオファーを断るくらいの条件を常に提示する必要があったと思います。アメリカは最近になって景気回復の兆しが見え、インディカー人気が上昇しているタイミングなだけに、これまで水面下で色々な交渉があったのではないでしょうか。
ドライバーとしては、もてぎのオーバルはチャレンジングで走りがいのあるコースだったものの、見ている観客のみなさんにとっては、サイド・バイ・サイドになりづらい構造だったので、そのおもしろさが伝わりにくいのではないかと心配でした。さらにここ数年で路面はだいぶ傷み、特にターン1〜2のバンプがひどく、昨年はクラッシュも多くなっていました。このバンプを修復し、ついでにターン3〜4にもっとバンク角度がつけば、もっとおもしろいレース展開になりそうだと勝手に想像していたのですが、修復するだけでも相当な費用が必要となるわけです。
以上のように、インディ・ジャパンの開催を今季限りで断念することになった裏には、様々な難しい理由があったのだと想像します。でも、和記さんがコラムで書いていたように、できれば“SayonaraっていうよりもSee you”ってことであって欲しいと願います。
今年でいったん幕を閉じるインディ・ジャパンに、もちろん僕も参戦したいと考えています。今まで6回も参戦しておきながら、ベスト・フィニッシュは11位・・・。納得のいくレースができていないどころか、ファンのみなさんの期待に一度も応えられなかったと思うので「絶対に参戦しないと!」って今から気合いが入っています。みなさんと一緒に、今年こそ最高のインディ・ジャパンにしなきゃいけないと、心から思うのです。