<US-RACING>
10月26日に行われたサーファーズ・パラダイスのレースで、2008年の全日程が終了したインディカー・シリーズ。ホンダ・エンジンのワンメイク・レースとなって3年目の今シーズン、開幕直前の2月22日にチャンプ・カー・ワールド・シリーズとの合併が電撃発表され、アメリカン・オープン・ホイールは新たな時代へ突入した。新時代の幕開けにふさわしく、9名のウイナーが誕生し、スコット・ディクソンとエリオ・カストロネベスによるタイトル争いは最終戦までもつれ込むデットヒート。日本人ドライバーの武藤英紀が、第8戦アイオワで日本人の歴代最高位となる2位を獲得するなど、話題が豊富な1年だった。今回、US-RACINGではインディカー・シリーズにエンジンを供給するホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)のチーフ・エンジニア、堀内 大資氏にインタビューを行い、今シーズンのインディカー・シリーズを振り返っていただいた。その模様を3回にわたってお送りする。ホンダのCART初参戦からエンジン開発に携わり、長年にわたってアメリカのオープン・ホイールにかかわり続けている堀内氏の目に、2008年のインディカーはどう映ったのだろうか?
2008年はインディカー・シリーズとチャンプ・カー・ワールド・シリーズが合併し、12年ぶりにアメリカン・オープン・ホイールが統一されました。昨年と比べて、インディ500以外のレースにおいても参戦台数がいっきに増加し、毎戦30台近くのエントリーがあるなかで、エンジンを供給する側としてどのような苦労がありましたか?
堀内大資氏(以下:HD)「やはり台数が増えたので、設備やエンジンの組み立て要員に対応するのが苦労しました。トラック・サイドのサポートもチャンプ・カー勢が増えた分、うまく人をまわして対応しなくてはいけませんでしたね。もちろんイルモアさんと一緒にやっていますので、イルモアさんの負担も増えたのではないかと思います」
ホンダとしても合併には常々尽力されてきたと思いますが、シリーズが統一されたと実感を持つのはどのようなときでしょうか?
HD:「いちばん感じるのはチャンプ・カー勢が加わることで、レースの内容が変わってきたというところです。オーバルではインディカー勢のドライバーが力を発揮していますが、ロードではそれが逆転します。インディカー勢とチャンプ・カー勢のレベルが完全に分離しているわけでなく、混ざり合ったところでドライバーの得意、不得意が明確になってきたのでしょう。ドライバーからは急にレベルが上がったということも聞かれますし、合併によってレース自体のレベルが自然と上がりました。力のないドライバーはまわりのレベルについていくことが難しくなってきていますし、トップ・ドライバーでもトップを維持するためにこれまで以上の努力が必要になってくるので、これからもっとレースが面白くなっていくのではないかと思います」
今年から加わったチャンプ・カーのドライバーやチームをどう評価していますか?
HD:「インディカーとなってからチャンプ・カーを観たことがほとんどありませんでしたが、かつてCART時代に戦っていたニューマン/ハース/ラニガンなどはものすごくレベルが高いということを改めて実感しました。新人でいうとグラハム・レイホールが速いですよね。今までのロードコース戦は、インディカーの仲間内だけでなんとなく走っていたのに対し、今年は実力のあるチームとドライバーがいっきに入ってきたことで、レベルが底上げされました」
(つづく)
◆Vol.2は来週の木曜日にアップ予定です。