Nobuyuki Arai's

カンザスで光った武藤英紀の走り

画像 IRL第4戦カンザスで武藤英紀が素晴らしい走りを見せてくれました。オーバル自己最高の6位という結果以上に内容の濃いもので、オーバルレースを急速にマスターしていることを証明してくれました。
 残念な結果に終わったインディジャパンから間髪入れず2週連続で開催されたカンザス。たった1週間前に「自分の中で一番重要な位置づけだったもてぎで、あのようなミスをしたことはすごく残念です」と、力なくツインリンクもてぎの記者会見場で語っていたものの、そんなことはとうの昔に忘れたとでも言いたげに、カンザスでの武藤の表情は良く、気持ちをしっかり切り替えていたようでした。インディ500以後は連続開催が続く厳しいスケジュールのインディカーシリーズを戦うには、前戦のことを引きずらないことは最低限のこと。とはいっても、シリーズには目に見えない“流れ”というものも存在し、それを断ち切るのはなかなか容易ではないですから、武藤がもてぎでの悪い流れをここカンザスで断ち切れるか注目していたのです。しかし、そんな心配は杞憂に終わるほど、目の覚めるようなパフォーマンスを見せてくれました。

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 初日の予選日は、「ギヤのトラブルで予定通りのプログラムをこなせなかった。予選セットも試せずじまい」とトラブルが続いたことで、予選も13番手。ダニカ・パトリックは3番手とまずまずの結果だったものの、トニー・カナーンは11番手、マルコ・アンドレッティは14番手と、AGR全体がどうにもギクシャクした初日であり、決勝レースに不安を残しましたが、それが翌日には一転するんですから、レースは本当にわからないものです。

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 レース序盤は順位をキープし、中盤にはマルコの背後について燃費をセーブする走りに徹した結果、4度目のフルコースコーション中に給油のピットストップを行う必要がなくなり、順位は一気に5番手にまで浮上。トップグループでこのタイミングを使い給油を行わなかったのは武藤だけでした。中盤に燃料をセーブした作戦が功を奏したのです。もてぎでは、チームクルーが給油の際にミスをし、終盤の追い上げができない歯がゆい思いをしたものの、1週間後のレースでその教訓を生かして実際にレースで実践できたことは賞賛に値します。「ひとつずつステップアップできている実感がある」とレース後にコメントしていたのはまさに本音でしょう。ルーキーの武藤にとっては、前戦もてぎのようなルーキーミステイクは多かれ少なかれ出てしまいます。問題は、同じ過ちをせずに、それを次にどのように生かすかが重要になってきますので、武藤がカンザスでそれをきっちりこなしたあたり、インディカードライバーとして一歩一歩着実に成長していることを示していましたね。

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 そしてレース終盤に見せた、マルコ&ペンスキー2台との超接近戦バトルは見応えたっぷりでした。残り30周から、マルコを含めた4台が毎周のように順位を入れ替えながらのバトルはインディカーレースの醍醐味を十分に堪能させてくれました。そして、ファイナルラップにはライアン・ブリスコーをパスし自己最高の6位でフィニッシュした走りは本当に評価できます。ただ、レース後の武藤は「結果はよかったですが、満足はしていません。ブリスコーは僕に対してはずいぶんとエアをカットする走りをしていましたが、マルコには僕よりもフェアな走りをしていました。そのあたりはドライバー同士のやりとりなんでしょうね」とやや不満顔。ただ、今回のレースで武藤英紀の存在感をライバルチームにしっかり植えつけることができたはずですし、それが今後に生きてくることは間違いないはずです。自己最高位にも決して満足することなくさらに上を目指す姿勢を見て、改めて頼もしく思いました。次はいよいよインディ500。いい“流れ”でシリーズ最大イベントに臨めそうですし、武藤の走りが本当に楽しみです。