<US-RACING>
チップ・ガナッシ独走のレースとなったカンザス。しかし、優勝したのはポール・ポジションのディクソンではなく、2番手スタートのダン・ウエルドンだった。予選同様、ディクソンを先頭にガナッシの2台がレースを引っ張る展開が終盤まで続き、この間ウエルドンはディクソンの後ろで燃費を稼ぐことに成功。ディクソンが152周目のグリーン状態でピット・インを強いられる一方、燃料に少し余裕があったウエルドンは運よく153周目のコーションにタイミングが合い、そのままトップへ躍り出た。172周目にレースが再開されると、悠々とカナーンを引き離し、1年ぶりのトップ・チェッカー。カンザスでは初めてとなるリピート・ウイナーが誕生した。「ヴィクトリー・レーンに戻ってくるまで、ストレスが溜まるレースが続いていたんだ。やっと勝てるってことを証明できたよ。スコットの後ろにいたことで、燃料を少しだけセーブできた。もしスコットが誰かの後ろでレースをしていたら、結果は違っていただろうね」とウエルドン。不振にあえいだこれまでを払拭する快勝となった。
今週末はスピードが上らず、予選11位と出遅れてしまったカナーン。決勝もスタートで2つポジションを上げた以外に見せ場はなく、我慢のレースが続く。だが、トーマス・シェクター、ダニカ・パトリックなど上位を走るマシンが次々にトラブルで消え、最後のコーションを終えたときには、なんと2番手まで浮上していた。ここからトップのウエルドンを出し抜きたいところだったが、今日のガナッシ勢のスピードは別格。ウエルドンとの間隔を詰めることが出来ず、最後はバック・マーカーにも引っかかり、そのまま2位で走りきった。「最後の30周を見てもらえば、僕がダンを捉えようとしていたことが分かると思うよ。実際には何も出来なかったけどね。2位という結果はとても良い。特にインディ500の前だということを考えると、この勢いのまま5月を戦えるはずさ。良いフィニッシュだったから、インディでは何が起こるか楽しみにしていてよ」と、次戦を見据えるカナーン。優勝を逃したものの、開幕戦から続いていた悪い流れをようやく断ち切り、ここから波に乗りたい。
先週のもてぎ同様、燃費がディクソンの明暗を分けた。予選でみせた圧倒的なスピードは、決勝でも健在のディクソン。スタートからチームメイトのウエルドンとともにレースを引っ張るが、ここで燃費を稼げなかったことが災いした。200周レースの145周で最多リード・ラップを獲得しながら、グリーン状態でピット作業を終えた直後にコーションが発生し、コース上に戻ったときは7番手に。鬼神の走りで追い上げを図るも、トップと4.3922秒差の3位が精一杯だった。「2週間続けて3位だよ。いったいどうしたら勝てるのか分からないね。少なくともチップ・ガナッシのマシンは勝てると思っていたから、ダンにはおめでとうと言いたい。彼は僕の後ろで賢く燃費を稼いでいたので、僕らも戦略を考え直す必要があるね」と肩を落とすディクソン。次戦以降の巻き返しを誓った。
昨日発生したギア・トラブルにより、決勝用のセット・アップを全てやり直してレースに挑んだ武藤英紀。スタート直後に2つポジションを落として苦しい序盤戦を送るが、粘り強くコースに留まり、徐々にポジションを上げていく。9番手に上ったところで燃費作戦に切り替えたことが見事にはまって、最後のコーションが終わったときにはなんと5番手にジャンプ・アップ。リスタート後はライアン・ブリスコーの攻略にてこずり、隙をつかれてディクソンとアンドレッティのパスを許したものの、最終ラップでついにブリスコーを捉え、オーバル自己最高位となる6位でフィニッシュした。「13番手スタートということを考えれば、良い結果と言えます。でも、もっと上位を狙えたはずなので悔しいですね。ブリスコーはあまりフェアな戦い方ではありませんでしたが、最後に彼をパスできたのは良かったです。今日の6位でインディ500に弾みが付きました」と武藤。伝統のインディ500で、どんな走りを見せてくれるのか期待が持てる。
インディ・ジャパンを制したダニカ・パトリックは力走実らず、メカニカル・トラブルで156周目に戦列を去った。アンダーステアに苦しみながらも序盤はトップ5をキープするが、最初のピット・ストップで8番手にポジションを落とすと、みるみるトップ10圏外へ後退。上位陣のトラブルに助けられて再びトップ10圏内を取り戻し、ここから追い上げという156周目、右リア・ホイールのマウント部分にトラブルを抱え、ピットに戻るとそのままマシンを降りることになった。「ポジションを取り戻してリーダーが見えていたのに残念だわ。トラブルはルーズな感覚がはっきり分かったの。たぶん最後のスティントでは、コーナーに入るときに右リア・タイヤがぐらぐら動いていたかもしれないわね」と残念がるパトリック。もてぎ同様ルーキー・イヤーの2005年に快走を見せたインディ500で、再び輝きを取り戻せるだろうか?
スポット参戦ながら予選4位を獲得するパフォーマンスを披露したトーマス・シェクター。決勝でもその勢いは続き、スタートでまずパトリックをかわすと、6周目のリスタートではウエルドンまで捉え、チップ・ガナッシの1-2体制を崩してみせる。このままフィニッシュまで調子を維持したいところだったが、1回目のピットストップで思わぬアクシデントに襲われた。ピット・ボックスでタイヤ交換を始めるまさにその時、マーティ・ロスが突然スピンしてシェクターのピットへ突っ込み、なんとピット・クルーと接触してしまったのだ。想定外のアクシデントで22番手まで転落したシェクター。なんとか11番手まで挽回するものの、98周目にはアーネスト・ヴィソに接触され、リタイアを余儀なくされる。スポット参戦とは思えない素晴らしい走りを見せたが、不運によって結果を残すことが出来なかった。
依然としてオーバルでは厳しい戦いが続くチャンプ・カー勢。第2戦セント・ピーターズバーグではIRL勢の度肝を抜く走りを披露し、ニューマン/ハース/ラニガン・レーシングの新鋭グラハム・レイホールが優勝したが、経験がものを言うオーバルでは簡単に上位進出を許してくれない。それでも今回はピット戦略を変えたジャスティン・ウイルソンが、コーション中の27周目から5周にわたってトップを快走してみせる。リスタートが切られるとさすがにポジションをキープすることは出来ず、ずるずると後退していったが、最後まで粘りの走りを見せ、1周遅れの9位でフィニッシュ。データを積み重ね、インディ500ではさらにIRL勢に迫りたいところだ。
スタート直後にエンリケ・ベルノルディがウォールにヒットし、序盤から荒れ模様となったカンザス。23周目にはポジション争いで行き場を失ったウィル・パワーが、ターン2のウォールに激突して戦列を去った。アクシデントはまだまだ続き、98周目にトーマス・シェクターとアーネスト・ヴィソが接触。ヴィソはなんとかレースに復帰するが、目を見張る快走を続けていたシェクターはそのままレースを諦めざるを得なかった。最後は153周目のバディ・ライス。サスペンション・トラブルでコントロールを失い、ターン2のウォールに激しくぶち当たって、マシンの右側が完全に大破する。幸いライスは自らマシンを降り、無事を確認できたが、フラストレーションが溜まるレースが続いているため、マシンのサイドポンツーンに拳を振り下ろすシーンが見られた。一方ピット・レーン上でもアクシデントが多発。オーバーランや接触などによって、合計3人のドライバーがペナルティを受けることになった。
予選日とは一転して青空が広がったカンザス・スピードウェイ。日の光が僅かばかりの暖かさをもたらしてくれたが、昨日と同じく冷え込みは厳しく、冬用のジャケットが必要なほど。寒さのためになんとインディ・ライツの予選はキャンセルされてしまった。インディカーのレースとはインターバルがあったため、定刻どおりインディカーのレースはスタートが切られる。オープニング・セレモニーでは、背中にエンジンらしきものを背負った“ロケット・マン”が空中を飛ぶパフォーマンスが行われ、客席からは歓声が上っていた。