<US-RACING>
オープン・テスト二日目にトップ・スピードをマークしたのは、アンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)のダニカ・パトリック。なんとカゼで体調を崩した中でのドライビングだったにも関わらず、それをまったく感じさせることがないほどの好走だった。前日のテストに参加できなかったためか、誰よりも多い186周を走りこんだパトリック。213.182mphのスピードは前日との総合結果でも3位にはいる速さなのだが、マシン・バランスにまだまだ注文があるようだ。「昨日よりも体調が悪いわ。くらくらするし、頭が重いのよ。でも、昨日走行できなかった分、トップになれたのは良かったわ。レース・セッティングは特に苦しんでいて、今日の最後までかなりのオーバーステア傾向だったの。それでも最後のさいごで進歩できたのは良かった。チームはオフ・シーズンの間に良い仕事をしてくれたわ」と話すパトリック。コメントとは対照的なテスト・タイムに、彼女の優勝を期待せずにはいられない。
初日にワン・ツーのスピードを記録したターゲット・チップ・ガナッシの二台。二日目もダン・ウエルドンとスコット・ディクソンの二人で310周も走りこみ、ダニカ・パトリックのトップ・スピードには及ばないものの、ダン・ウエルドンが3番手、ディクソンが5番手となった。結局、前日に記録したスピードを上回るものがいなかったため、総合結果で1位と2位を堅持。ガナッシの二人には実りのあるテストになったようだ。「テストの結果だけを見れば、上々の出来だよ。もちろんまだまだ改良の余地があるけどね。開幕戦でここへ戻ってきたときには、きっと良い走りが出来ると思うよ」と上機嫌のウェルドン。昨シーズン後半に失速してしまい、ファンを心配させてしまったが、得意なコースで自信を取り戻したようだ。
ペンスキーからインディカー再デビューを果たすライアン・ブリスコー。両日ともにトップ・スピードを記録することはなかったものの、チームメイトのベテラン、エリオ・カストロネベスを上回る総合4位に入り、存在感をアピールしている。どのセッションでも積極的に走りこむブリスコーの姿が見られただけあって、このテスト期間でもっとも多い326周を走行。クラッシュ・キングの印象が強いブリスコーだが、どうやら今シーズンは一味違うようだ。カストロネベスはダンスに励んでいる場合じゃないかも。
今回のテストで光る走りを見せていたのは、ヴィジョン・レーシングのA.J.フォイト4世。チップ・ガナッシ、アンドレッティ・グリーン、ペンスキーが速いことはいつものことだが、このトップ3に割って入り、総合5位の結果を残した。いつも下位に甘んじている印象があるヴィジョン・レーシングだけあって、フォイト4世の結果は注目すべき点といえる。「僕たちにとってすばらしいテストになったね。このテストに向けてどれだけ一生懸命準備してきたかを証明できたよ。このままの調子をキープして、レースではもっと良いマシンで戦いたいね」と自信を見せるフォイト4世。2008年はこのヴィジョン・レーシング&フォイト4世のコンビネーションが、ダークホースとなるのか?
昨日の曇り空から一変し、快晴となったホームステッド・マイアミ・スピードウェイ。抜けるような青空は温暖な気候を想像させるのだが、風がひどく冷たく、フロリダとは思えないほど肌寒かった。午後から行われたインディプロシリーズのテスト・セッションには、ようやく気温が上りはしたものの、日が暮れると13度まで低下。午後4時から10時までのナイト・セッションで行われたインディカーのテストでは、寒さに耐え切れないドライバーがトランスポーターに戻ってしまうほどだった。1ヶ月後の開幕戦では暖かくなっていることを期待したい。
チャンプ・カーのレッド・タイヤのホワイト版ともいうべき、“ホワイト・タイヤ”が登場した。ただしこれはプロモーション用の撮影のためで、スペックなどの変更はないそうだ。合併しただけに、これからはレッドタイヤのコンセプトも引き継がれるとうれしい。チャンプ・カーのパワー・トゥ・パスはターボならではのものだが、今年のホンダエンジンは圧縮比を下げて再び燃料ミクスチャーの変更ができるようになり(昨年はエタノール100%の最初の年だったので、このシステム外されていた)、60〜70馬力ぐらいの変化があるので同じような使い方ができる。チャンプ・カーのように、その様子をパソコンやテレビなどでモニターできたら最高だ。
昨日に引き続き、AGRのテスト・プラグラムをこなす武藤英紀。ピット・ストップが主なプラグラムだった初日とは異なり、今日は実戦を想定したレース・セットを行った。時間がたつにつれて路面温度が下がるナイト・セッションでは、温度変化に合わせたセット・アップが必要となる。武藤も崩れていくバランスを修正しながら走行し、セッション終盤にはトラフィックでのバランスも確認した。二日目は137周を走り、6番手となる212.596mphのスピードを記録。昨日との総合結果は初日と同じ8位と変らないが、武藤は手ごたえをつかむと同時に新たな課題も見つけたようだ。
「今日の課題は、レースに向けてのマシン作りでした。昨日の悪かった点を直してセッションに臨みましたので、マシンは走りはじめから乗りやすくなっていました。特にタイム・アタックをしたわけではないですが、良いポジションに入れましたね。セッションが進むにつれて気温が低くなるため、マシンバランスが崩れていくのを修正しながらのセッションとなりました。おそらく一番気温が低かったのは最後のセッションだと思いますが、そこでのバランスもよく、ライアン・ブリスコー選手と一緒に走行してトラフィックも経験できたので、良い仕上がりになったのではないかと思います。手ごたえと言ってよいのか分かりませんけども、良い感触を得ることが出来ました。もう少しスピードがあっても良いのかなと思う面もありますから、スピードと操縦性のバランスの取り方が課題になりました。予選のシミュレーションをやったときに、思ったほどタイムが伸びなかったのも今後の課題ですね。まだマシンの操作系に慣れきっていない部分があるので、自信を持ってマシンをアジャストできるようにならなくてはいけないと思いました」