<US-RACING>
シリーズ最終戦のメキシコ・シティでも、セバスチャン・ブルデイは4年連続チャンピオンの名に恥じない走りを披露し、チャンプ・カー・キャリア最後のレースで有終の美を飾った。決勝前のスタート練習の際、1回しか許されてない練習を2度やってしまったため、パワー‐トゥ‐パスが75秒から53秒に減らされるペナルティを科せられてしまうハプニングがあったブルデイ。レースがスタートするとトップを走るウィル・パワーをピタリとマークし、24周目のターン1では、パワーの隙をついてインサイドにダイブし、コース上でトップを奪って見せた。ここからはどんどん後続との差を広げていくという、ブルデイお得意の作戦で、2回目のピットへ向うころにはパワーとの差は10秒以上に広がっていた。レース終盤の55周目にコーションが発生し、パワーとの差がなくなる緊迫した場面が生まれたが、ブルデイはリスタートを完璧に決め、パワーに付け入る隙を与えない。結局そのままトップでフィニッシュ・ラインを通過し、アル・アンサーJr.とポール・トレイシーと並ぶ、チャンプ・カー史上6位タイの通算31勝目を手にした。「チャンプ・カー・キャリア最後のレースで優勝できるなんて、これ以上最高の終わり方はないだろうね。チームのみんなががんばった結果だよ。最後のレースでも運が良かったし、チャンスを上手く活かせた。ほんとうに最高だよ」と喜びを爆発させるブルデイ。5年間のチャンプ・カー・キャリアに終止符を打ち、いよいよF1での挑戦が始まる。
セバスチャン・ブルデイを倒す最後の機会を失ったウィル・パワー。2年目の若手ドライバーにとって、やはり4年連続チャンピオンの背中は遠かったようだ。24周目にトップを奪われ、じりじりとブルデイとの差が開いていくもどかしいレース展開のなか、55周目にコーションが発生したことでパワーにもチャンスが巡ってきた。リスタートで前に出れば、ブルデイとやり合えるチャンスもあったのだが、最終コーナーであっさりと引き離され、勝負あり。ターン1でインサイドをうかがうことすらできなかった。しかし、パワーが手首の怪我をおして2位表彰台を獲得したことは、賞賛に値する。「オリオールが最終スティントでレッド・タイヤを使って、僕を捕らえようとしていることがわかったね。僕も最後にレッド・タイヤを選んでいたら、セバスチャンをパスする可能性があったかもしれないけど、彼は速すぎるんだよ。最初から最後まで、彼のペースは落ちなかったよね」と話すパワー。最強を誇ったブルデイがチャンプ・カーから去ってしまうが、このパワーが次世代のチャンプ・カーを盛り上げてくれるに違いない。
スタートでいきなりエンジン・ストールを喫し、4番手のポジションをふいにしたオリオール・セルビア。後方から追い上げを強いられることになったが、またしても驚異的な挽回を見せ、結局スタートの・ポジションからひとつ上の3位表彰台を手に入れた。開幕戦のシートがなく、フォーサイスから代役出場のチャンスを得た第2戦のロング・ビーチでは2位表彰台を掴み、フォーサイスを放出されてPKVでの復帰戦となった第13戦サーファーズ・パラダイスでは、初日にトップ・タイムを出すなど、今シーズンのセルビアはいくつもの逆境を跳ね除けてきた。今日のレースはまさにそんなセルビアを象徴するようなレースだったと言える。「来年はもっと一貫性が欲しいところだね。僕は今までシリーズのなかで強力な3チーム、フォーサイス、PKV、ニューマン/ハースで走った経験があるけど、どのチームも強いから、そのなかのどこかに所属していることを願うよ。来年、何が起こるのかとても楽しみにしているんだ」と来期のシートの展望を語るセルビア。スペインでのチャンプ・カー開催が決まった来年こそ、開幕戦からレギュラーに就きたいところだ。
チャンプ・カー開催地のなかの6都市(ロング・ビーチ、ヒューストン、クリーブランド、エドモントン、サンノゼ、サーファーズ・パラダイス)で、開催されるフェイス・オブ・チャンプ・カー。そのグランド・フィナーレが、今年もメキシコ・シティで行われた。審査員による投票結果がでた金曜日には、なんとミス・インディ300のケイト・ホクリーさんとミス・グランプリ・オブ・ヒューストンのアンジェラ・サルツマンさんが、同数票で引き分けとなるほど、今年のフェイス・オブ・チャンプ・カーはレベルの高い争いとなった。土曜日に協議が持ち越され、ホクリーさんをフェイス・オブ・チャンプ・カーにすると発表があったが、その後ホクリーさんがフルタイム・モデルとして活躍しているために、フェイス・オブ・チャンプ・カーに必要な条件が満たせないことが判明。一転してミス・グランプリ・オブ・ヒューストンのサルツマンさんが、2008年フェイス・オブ・チャンプ・カーの栄冠に輝くことになった。サルツマンさんは来年のチャンプ・カーの顔として、世界中の開催地を飛びまわることになる。
今日の決勝を前に、マシンのカラーリングやデザインを競うシャーウィン・ウィリアムズ“イッツ・オール・イン・ザ・フィニッシュ”カラー・アンド・デザイン賞の授賞式があり、コンクエスト・レーシングのネルソン・フィリップが操る、#34ジュニパー・ソウルのマシンがメキシコ・シティの大賞に選ばれ、PKVレーシングが年間大賞を受賞した。この一風変わったコンペティションは、チャンプ・カーのオフィシャル・スポンサーを務める塗料メーカーのシャーウィン・ウィリアムズが主催し、各地で行われてきた。審査はチャンプ・カーを開催する都市にあるシャーウィン・ウィリアムズの支店から、ファンが投票するというユニークなもので、受賞したチームには1万ドル(1ドル110円で110万円)の嬉しいボーナス付き。メキシコ・シティは最終戦ということで、賞金も2倍に増額され、今回見事に大賞を受賞したコンクエスト・レーシングのオーナー、エリック・バシェラートは「この賞を受賞できるなんて最高の週末だね」と大喜び。本業ではいまだ未勝利のコンクエストだけに、今度はレースでも勝ちたいところだ。
三日間とも晴天に恵まれたエルマノス・ロドリゲス・サーキット。気温は23度と過ごしやすく、まさに絶好のレース日和となった。スタンドを埋めるメキシコ人ファンお目当ての地元ドライバーは、マリオ・ドミンゲスの8位が最高位で、デイビッド・マルティネスはトラブルでリタイアと、少々ものたりない結果となったかもしれない。しかしマルティネスの方は、このレースで2番目に速いタイムをマークしており、今後の成長が楽しみなメキシコ人ドライバーだ。このメキシコ・シティで2007年のチャンプ・カーは閉幕し、ドライバーやチームは束の間のオフ・シーズンに入る。DP01が投入された今シーズン、開幕戦からパワーが優勝するなど、若手ドライバーが一気に台頭した。しかし、シーズンが終ってみれば、やはりセバスチャン・ブルデイが若手をねじ伏せ、4年連続チャンピオンを勝ち取った。来年はディフェンディング・チャンピオン不在の年となるが、ブルデイとの激戦で成長を遂げた若手ドライバーがさらに白熱した戦いを繰り広げてくれるだろう。