INDY CAR

伝統のショートオーバルでの戦いはトニー・カナーンが2年連続で制す

<Honda>

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2007年6月3日(日)・決勝
開催地:ウィスコンシン州ウェスト・アリス
会場:ザ・ミルウォーキー・マイル(全長1マイル)
天候:晴れ
気温:21℃

ウィスコンシン州ミルウォーキー郊外にあるザ・ミルウォーキー・マイルは、100年を超す歴史を有しており、伝説のオーバルと呼ばれている。ダート・トラックからスタートし、舗装オーバルとなったショートオーバルはバンクの傾斜角が9.25度と小さく、見た目も、ドライバーが走っての印象もフラットに近い。コーナーへの進入ではブレーキングも必要となるテクニカルさを持っている。

インディアナポリス500マイル・レース(Indy500)の翌週という日程が今年から採用されているが、それもミルウォーキーにとって伝統あるもの。2007年のABCサプライ・AJ・フォイト225/プレゼンテッド・バイ・タイム・ワーナー・ケーブルはシリーズ第6戦として開催された。
今年から2デー・イベントとされ、土曜日には予選が行われ、日曜の午後3時過ぎに決勝レースのスタートが切られた。決勝日は予報に反して朝から太陽が照りつけたが、スタート時刻の接近とともに雲行きが悪化。雨による中断や短縮も考えられる状況下で、18台がエントリーした225マイル・レースは始まった。

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決勝日に練習走行がスケジュールされていないため、予選日と異なる気候コンディションでの戦いとなった場合には、前日に仕上げたマシンセッティングにどれだけ調整を加えるかが大きなカギとなる。決勝日の天候は、午前中は快晴だったものの、スタートが近づくとともに見る間に雨雲に覆われた。しかし、降った雨はほんのわずかで、再び青空がコース上空に広がった。
気温は再び上昇し、得られるダウンフォース量がどれほどのものになるのか、路面のコンディションはレースを戦っていく中でどのように、どれだけ変化するのか、出場ドライバーとチームには非常に難しい課題が与えられた。
ミルウォーキーで2年連続のポールポジションを獲得したエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)は、レースでもそのスピードを維持。彼に対抗したのは、トニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)、スコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)、ダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)、サム・ホーニッシュJr.(チーム・ペンスキー)らだった。
カストロネベスは序盤からハイペースでレースを引っ張り、周回が重ねられてもそのスピードを保ち続けた。いつの間にか雨の心配は吹き飛び、晴天の下で周回が重ねられた。225周のレースが200周を迎えたとき、カストロネベスは2位を走っていたカナーンに3秒もの大差をつけていた。ところが、201周目を終えようというところでリアウイングのステーが突然折れ、ダウンフォースを失ったカストロネベスのマシンはスピンし、コンクリートウオールにクラッシュしてしまった。
トップを快走していたカストロネベスのリタイアにより、難なくレースリーダーの座に躍り出たのはカナーンだった。2番手にはウェルドンがつけていたが、それをIndy500ウイナーのフランキッティがパスし、アンドレッティ・グリーン・レーシングによる1-2フィニッシュが達成された。カナーンはこれでミルウォーキー2連勝。ツインリンクもてぎでのブリヂストン・インディ・ジャパン300マイルに続くシーズン2勝目となった。
17戦で争われる2007年IndyCarシリーズだが、6戦を終えた時点でポイントリーダーとなったのは、今日のレースを2位でゴールしたフランキッティ。2位はウェルドンで、ディクソンが3位で追っている。カナーンはトップと20点差の4位だ。
松浦孝亮(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は予選で6番手という好位置につけ、レース序盤はその位置をキープしていた。しかし、1回目のピットストップを迎える前にハンドリングが悪化し始めて後退。セッティング変更を施したマシンでばん回を目指したが、思うようなペースアップは果たせず。周回遅れに陥った直後にフルコースコーションが出されるなど、流れが悪い方へと向かった。それでもピットタイミングをずらすなどの作戦を駆使して、2周の遅れを取り戻そうと奮闘。松浦はゴールまで走り切り、12位フィニッシュを果たした。
前日6月2日(土)に開催されたINDY PRO SERIES第5戦では、武藤英紀が予選5番手からスタートしたものの、直後の第2ターンでスピンアウトし、リタイアに終わった。しかしながら、武藤は依然ランキング2位を維持している。

■コメント

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■トニー・カナーン(優勝)
「最速のマシンが勝たないときもある。今日のレースはそういうものだったと思う。いくつかの不運も重なり、僕はトップ争いに食らいついていくのが精一杯だった。ピットストップで止まるべき位置にマシンを止められず、作業に時間をかけさせてしまったこともあった。しかし、僕がミスを冒したときにはチームがそれをカバーし、チームにミスがあったら、僕がそれをカバーすべく走りで力を発揮する。そうやって僕らのチームは強さを身につけて来た。さぁ、今度はテキサスだ。次のレースが待ち遠しい」

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■ダリオ・フランキッティ(2位)
「スタート時のマシンセッティングはアンダーステアが強過ぎたため、ピットストップのたびにそれを解消するべく、セッティングのファインチューニングにトライした。僕らのマシンはどんどん速くなっていき、トニー・カナーンの後ろの2位でゴールすることができた。彼はいったん後方までポジションを下げながら、すばらしいレースを戦い抜いて勝利をつかんだ。アンドレッティ・グリーン・レーシングとして1-2フィニッシュを飾れたことをとてもうれしく思う」

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■ダン・ウェルドン(3位)
「最後のピットストップでタイヤ交換を行わないという判断は、チームとして十分に計算してのことだった。考え抜かれたギャンブルだったといえると思う。レースがその後にどう展開するかは、誰にもわからない。そこに可能性があると見たからこそ、僕らはタイヤを換えない作戦を選んだ。そして結果は、本当にわずかな差で勝利を逃すこととなった。自分たちの選択した作戦に対して後悔はしていない」

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■松浦孝亮(12位)
「スタート直後はよかったのですが、右タイヤの内圧が上がらないまま周回を重ねていった結果、突然ハンドリングがオーバーステアになってしまいました。1回目のピットストップでウイングを寝かせ、タイヤの内圧も変更したのですが、今度は大きなアンダーステアになり、第2スティントもスピードが上がらず、周回遅れになってしまいました。スタート時のタイヤプレッシャーの設定がコンディションに合っていなかったことでセッティング変更に対する判断が狂い、流れが一気に悪い方向へと進んでしまいました。しかし、ミルウォーキーという難しいコースで12位フィニッシュを果たせたのは大きいことです。次戦テキサスからはもっとよい戦いをすることができるはずです」

■ロバート・クラーク(HPD社長)
「ミルウォーキーでのレースはIndy500の直後に行われるのが伝統であった。今年からその伝統あるスケジュールに戻ることとなったが、そのよさを改めて感じた週末だった。Indy500は非常に大きなコースで行われ、伝統と格式があり、非常にフォーマルな印象だが、ミルウォーキーはそれとはまったく逆に、小さなコースで、とてもカジュアルな雰囲気を漂わせている。そのコントラストの大きさは、IRL IndyCarシリーズがバラエティに富んだレースを有していることを如実に表している。もちろんミルウォーキーでのレースもIndy500と同じように競争が激しく、ここ数年間の出場チーム全体のレベルアップから、今日もトップグループから後方に至るまで、すべてのポジションがし烈に争われていた。悪天候の予報が出されていた中、225周のレースをすべて行うことができ、集まってくれたファンには大いにインディカー・レースを楽しんでもらえたことと思う」
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