<US-RACING>
■ドライバーの安全が保証できないため、CARTは第3戦のテキサスのレースを順延
CARTは第3戦のレーススタート2時間前、現地時間の12時過ぎに、FedExチャンピオンシップシリーズ第3戦“Firestone Firehawk 600 Presented by Pioneer”の延期を発表。
今回の舞台となったテキサス・モーター・スピードウエイは、CARTにとって初開催のオーバルとなったが、ほとんどのCARTドライバーはでそれまでに経験したことの無い24度のハイバンクを初めて体験する。しかし、土曜日の予選までに記録された最高スピードが予想を遙かに上回り、さらに24度のバンクがドライバーの体に許容量以上の重力を与えてしまったため、体調の異変を訴えるドライバーが続出。ドライバーの安全を第一に考えたCARTは、決勝レースを行うのは危険との判断を下す。
「レースファンとわれわれの仲間であるテキサス・モータースピードウエイには心から謝罪したい。しかし、235マイルものスピードで1.5マイル・オーバルを周回することが、ドライバーの身体に深刻な影響を与えることが分かり、安全を最優先させるべきだという考えに至った」とCARTの代表であるジョー・ハイツラーは語る。
ドライバーの体調に関して、CART担当医のスティーブ・オルベイは「25人中21人ものドライバーが軽い頭痛や「めまい」などの症状を訴えた。特に20周以上周回するとその症状はさらに悪化し、しばらくの間コクピットから自力で出ることができなかったドライバーもいたほどだ。25年以上モータースポーツにかかわってきた自分には初めてのことであり、ロケットの打ち上げなどに関わっていた元NASAのフライトディレクターなどとも相談した結果、縦と横の異なるGがもたらす強烈な重力によって、失神する場合もあるということがわかった。このようなことが分かった上で、ドライバー達をそのような危険な状況にあわせるわけにはいかない」とコメント。
1周の間に2回に渡って5.5Gもの重力がかかるこのオーバルは、23秒前後というタイムから考えると、5〜6秒間隔で毎回そのGにドライバーが襲われることになる。「僕もクラクラしたんだけど、久しぶりのオーバルだったからだと思っていたら、そうじゃなかった。問題はこの状態で250周走るとどうなるか、というのが誰にも分からないこと。昨日のプラクティスでレース用に長い間走っていたドライバーは、特に危険だと言っていたね」と、昨日の予選で5位を獲得した中野は語る。
また、CARTで40勝を挙げているベテランのマイケル・アンドレッティも「20年以上レースをやってきたが、この週末に経験したような重力は今まで無かった。ドライバーの安全を尊重し、このような難しい決断を下したCARTに拍手を送りたい気持ちだ。土曜日のドライバーミーティングまで、僕も含めてほとんどのドライバーが同じような症状に悩まされていることを知らなかった」と言うように、土曜日になって初めてその事実が明らかになったのだ。
このためCARTは土曜日の夜11時までミーティングを行い、急遽、決勝レース当日の日曜日の朝までに高さ1.5インチのウィッカーをリアウイング後端の上部に追加し、ポップオフバルブの過給圧を37インチから36インチに落とすこと決定した。しかしドライバー側はこの対策だけでレースの根本的な安全は確保できないと判断。CART側と協議の結果、レースを延期する結論に達したのである。
CARTは何らかの解決策を見いだした上で、今シーズン中にテキサスでのレース開催を目指す。