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CARTチャンピオンシップ・シリーズ 第12戦 シカゴ【決勝】レポート

<US-RACING>
決勝レースが近づくにつれ心配されていた雨雲も徐々に遠のき、午後3時、俳優のシルベスタ・スタローンとコメディアンのティム・アレンの「ジェントルメン、スタートユアエンジンズ!」の掛け声を合図に全車一斉にエンジン始動。

気温は29度、路面温度は37度というコンディションで、マシンのパレードラップが始まった。ところがスタート直前となった時、予選6番手からスタートしたマックス・パピスのマシンにトラブルが発生。パピスのマシンはメカニカルトラブルでエンジン回りから炎を噴出し急遽ピットイン、そのままリタイアとなる。そして3時5分、グリーンフラッグが振られ、いよいよ225周のレースがスタートした。

レースは序盤、フロントローのファン・モントーヤとエリオ・カストロネベスがクリーンスタートでレースをリード。1周目でポジションを上げた上位のドライバーは、ケニー・ブレック、ジミー・バッサー、ジル・ド・フェラン。トップのモントーヤと2位カストロネベスの差は10周目で約0.5秒と大きくは開かない。

スタートから20周、コース上にマシンの破片のようなものがあるため、CARTオフィシャルはフルコースコーションを出す。ここで13位のマイケル・アンドレッティから21位の中野信治までがピットイン、給油とタイヤチェンジを済ませる。25周目にグリーンとなるが、その直後、ミモ・ギドリーと接触したガルター・サレスのマシンがターン1でスピンし、壁に激突。コースは再度フルコースコーションとなる。

32周目にグリーンが出され、レース再開。ここで2位を走行中だったカストロネベスのマシンのスピードが急激に落ち、これをブレックがパスして2位へと上がる。カストロネベスに何らかのトラブルが派生したのは明らかであり、35周目にエンジン部分から炎が上がったため、即座にコース脇にマシンを寄せ、ストップする。

カストロネベスはマシンから離れ早々にリタイアとなってしまう。これでレースは3度目のフルコースコーションとなり、その間、上位陣はピットを目指す。グリーンフラッグが出された43周目の順位は、1位ブレック、2位モントーヤ、3位ミシェル・ジョルダインJr.の オーダー。

レースも3分の1に差し掛かろうとした76周目、11位と12位を走るチームメイト同士のダリオ・フランキッティとポール・トレイシーがなんとターン1で接触。2台とも同時にスピンし、ウォールに激突してそのままリタイア。チームグリーンにとっては、なんとも言えない結果となってしまった。

この4度目のフルコースコーションでギリギリまで燃料補給を我慢していたブレック、バッサー、ジョルダインJr.がピットイン。だがこのピットストップでブレックがピットアウト時に痛恨のエンジンストール、大きく後退してしまう。

82周目グリーンフラッグでレース再開、トップ3はモントーヤ、アンドレッティ、カナーンで、ロベルト・モレノとクリスチアーノ・ダ・マッタも4位、5位へとポジションを上げてきた。

レースは中盤を過ぎ、いよいよ後半戦へ突入。145周目、トップのモントーヤの隙を狙うアンドレッティが、ターン1でしかけ一気にパス。いったんここでトップが入れ替わったものの、162周目にモントーヤがターン3でトップを取り返し、さながら前回のミシガン500を彷彿とさせる展開となった。

この間、ド・フェランが161周目に、続いてダ・マッタが162周目とそれぞれ早めのピットストップを行う。アンドレッティも最後のピットストップを166周目に行い、モントーヤは170周目にピット、各ドライバーともレース終盤の勝負に備える。

172周目、いよいよ終盤へと差し掛かってきたところでパトリック・カーパンティエがターン4でスピンして壁に激突、フルコースコーションとなる。175周目、イエローフラッグ中にブレック、フェルナンデス等がピットインすると、トップは素早いピットワークで上位に上がっていたダ・マッタとなった。

終盤に向けてトヨタ同士のトップ争いに注目が集まった中、ここで2番手につけていたモントーヤが、なんと178周目のイエローコーション中にマシン内部で漏れていた燃料に出火し、配線を燃やしたためにコース上に突如ストップ。レースの約半分にあたる111周もトップを走ってきたモントーヤの2連覇ならず。

これでトップとなったダ・マッタは、間に周回遅れが入っていたこともあり、200周目には2位アンドレッティとの差を4秒以上まで広げ、独走態勢に入った。そしてダ・マッタは残りの数周で周回遅れをうまく交わし、ベテラン達の追撃を振り切る。最後は2位アンドレッティが1.69秒まで追い上げてきたが余裕でゴール。

ビクトリー・サークルで待ち構えていた大勢のチームクルー達に、小柄なダ・マッタはいっきに担ぎ上げられ、沢山のストロボがいっせいに光る。98年のインディライツチャンピオンは、シリーズ参戦2年目にして念願の初勝利を飾ることとなった。また、この勝利はチームPPIにとっても96年の参戦以来となるCART初優勝だ。ダ・マッタはこれでランキングでもトヨタ最上位の4位に上がった。

今回2位に入ったアンドレッティは、シリーズポイントで合計120ポイントとなり、2位のモレノ(98ポイント)との差を更に広げる。シリーズは今回12戦が終わった時点で、初優勝を勝ち取った4名のドライバーを含む9人もの異なるウイナーを出すという混戦が相変わらず続いている。エンジンメーカーのマニュファクチャラーズポイントでも、ついにトヨタがホンダを上回って2位に浮上、今後の展開も目が離せない。

次回の第13戦は8月13日にポートランド以来となるパーマネントロードコース “ミド‐オハイオ・スポーツカーコース”で行なわれる“Miller Lite 200”。引き続き白熱した戦いが期待できそうだ。

●優勝したダ・マッタのコメント
今日のレートはとても厳しかったよ。最後のイエローが解除されたときのリスタートが最もリラックスすることができた時かな。マイケルに対して4秒以上のリードを奪うことができたからね。序盤は本当に大変だったんだ。最初のピットストップの時までマシンの調子はいい状態とは言い難かったからね。 でもピットの後はだんだん良くなってきた上に、ラッキーにも後続が周回遅れにつまずいているときに、ボクの前には全く前が他のマシンがいない、まるで予選を走っているかのようなクリアラップができたんだ。これで引き離すことができた。 この日が来るまで2年間待ったけど、焦りはなかったよ、だって今年のチームは本当にいい状態をキープしているからね。 とにかく今日勝つことができて本当にうれしいよ。

●2位でフィニッシュしたアンドレッティのコメント
今日はダ・マッタには一歩届かなかったけど、やることは全てやり尽くしたよ。 2位に入って貴重なポイントを獲得することができた。 それにしても今週は本当に大変だった。 マシンのセッティングがなかなか決まらなくてね、でも今日の朝、エンジニアのピーター・ギボンがいくつか変えてくれたんだよ。そしたらかなり良くはなったんだけどね。 今日のレースは上位に入賞するには厳しい後ろからのスタートだったんだけど、 イエローコーションが味方してくれたよ。 とにかく非常に厳しいレースウィークだったけど、今日の結果には満足している。 チャンピオンに向けてのこりのレースもどんどん行くよ。

●3位に入賞したド・フェランのコメント
今日の結果には満足している。 土曜日まではマシンのセッティングがなかなか出なくてね、 昨日の夜にもう一度いろいろと見直してみたんだ。 そしたら今朝、マシンは見違えるように良くなっていたんだ。 ミシガンでケガした指は全く問題なかったよ。 でも何か飛んできたら指に当てないように注意しなくちゃね。

●チーム同志で相打ちとなったトレイシーのコメント
ボクがフランキッティをパスしようとしてダリオのインに入ったんだけど、 ダリオは前を走るダ・マッタとのバトルでボクがいることに気がついていなかったようなんだ。 それでボクのフロントタイヤと接触してしまった。 チームにとって残念な結果に終わってしまった。 でもここで沈まないで、次に向けて頑張るよ。

●チーム同志で相打ちとなったフランキッティのコメント
あとでポールとビデオで確認して、話し合おうと思っているよ。 ボクとポールは今日いい仕上がりのマシンをドライブしていただけに、 残念なことになってしまった。 チームのみんなに申し訳ないよ。 ポールのマシンがインサイドから迫ってきているのには気がつかなかった。

●トヨタ・モータースポーツ、VP、ジム・オーストのコメント
今日の結果にはとても興奮しているよ。 PPIとはずっと一緒に戦ってきたからね。 クリスチアーノのここ2ヶ月の活躍で、この日が来るのは確信していたよ。 今日この日が来たのは、今までチームが一丸となって頑張ってきたからだね。 あとモントーヤのリタイヤは非常に残念だよ。今日レースに残っていれば、 確実に表彰台入りの走りをしていたからね。

—マニュファクチャラー・ポイントでトヨタが2位に躍進—
トヨタエンジンユーザーのダ・マッタが第12戦で優勝したことによって、 エンジン・マニュファクチュアラー・ポイントでトヨタが187ポイントとなり、 1位のフォード(211ポイント)に次いで、2位に躍進する結果となった。 3位になったホンダは182ポイントでトヨタを追う立場となった。 4位のメルセデスは52ポイント。 トヨタがCART参戦でホンダのポイントを上回るのは初めてのことだ。