INDY CAR

第99回インディ500予選はディクソンがポールで佐藤琢磨27位。99回目にして迎えた厳しい試練

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迎えた日曜日の予選二日目。初日の予選が雨でキャンセルとなったため、日曜日にすべての予選を行うことになっていましたが、予選前の第7プラクティス中にエド・カーペンターがターン2でクラッシュ。今回も後ろ向きになったマシンが浮き上がり、裏返してロールバーから着地したことで、急遽予定が変更されることになりました。
 
この5日間で起きた3回のクラッシュ(13日のエリオ・カストロネベス、14日のジョセフ・ニューガーデン、今日のカーペンター)によってシボレー勢が舞い上がったため、INDYCARオフィシャルは
 
・ファスト・フライデー以降140kPaとされていた予選ブーストを、レース時の130kPaに戻す。これによって40馬力相当のパワーダウンとなる。
 
・予選で使用するエアロダイナミック・ボディワーク・パッケージは、レースで使用されるものでなければならない。
 
とルールを変更。インディアナポリス・モーター・スピードウェイとINDYCARを所有するハルマン&カンパニーCEOのマーク・マイルスは「我々は始めた時から速くなることを望むと言ってきたが、我々は安全であることを望んでいる。予防措置として、INDYCARは今日の予選エアロ・セットを来週のインディ500と同じものにすることを要求し、ブースト・レベルもレース・コンディションに戻す。以上の措置から、今日の予選をノー・ポイントとすることを選択した」と経緯を説明しました。
 
カーペンターがクラッシュした時点でトップだったのはスコット・ディクソンで、昨日のカストロネベスのスピードに迫る233.001mphをマーク。2位はウィル・パワー、3位がカーペンターとトップ3がシボレーで、ライアン・ハンター-レイがホンダ勢最速となる4位に入り、佐藤琢磨も231.502mphまでスピードを上げて5番手にいました。
 
急遽決勝用セットに変更されて13時30分から始まった予選前の30分の第8プラクティスでは、シボレーのパワーが227.377mphでトップ。AJフォイト・レーシングのジャック・ホークスワースが227.316mphとホンダが2位に入り、シボレーとホンダがトップ10に5台ずつとほぼ拮抗している状況に。その一方で佐藤琢磨はスピードが伸びず、225.222mphで22位から予選に臨むことになりました。
 
迎えた15時15分、すでに昨日予選を走っていた1番手のカルロス・ウェルタスからもう一度アテンプトがスタート。2番目のハンター-レイ(ホンダ)が224.573mph、Tカーを間に合わせたカーペンター(シボレー)が224.883mphとハンター-レイを上回り、4番目に朝の第7プラクティス(予選セット)でトップだったディクソンが出走しました。
 
2008年にポールを獲っているディクソンは、予選用から決勝用セットへの突然の変更という事態にもしっかりと対応し、226.760mphの4周平均スピードをマーク。その後誰もディクソンのスピードを上回るドライバーは現れず、インディ500で2度目のポールを獲得しました。前回のポールだった2008年には、ポール・トゥ・ウィンを達成しています。
 
予選2位は第8プラクティスでトップだったパワー、3位はチームメートのサイモン・パジノウで、フロントローに並ぶこの3人が226マイル台でした。最終的にシボレー勢がトップ5を占め、ホンダ最上位はアンドレッティ・オートスポーツからスポット参戦しているベテランのジャスティン・ウィルソンの6位。第8プラクティスとは大きく異なり、ホンダはトップ10に2台だけという結果になりました。
 
チームメートのジャック・ホークスワースが第8プラクティスでパワーに次ぐ2位に入り、望みをつないでいた佐藤琢磨は13番目に出走。1周目に223.469、2周目に223.407、3周目223.050、4周目222.978と周回ごとにスピードを落とし、4周の平均は223.226mph。最終的に予選27位、9列目からのスタートとなりました。ホークスワースは最後列の31位、3台目となるアレックス・タグリアーニは8列目の22位です。
 
「想像以上にスピードが伸びず、かなり苦労しました」と予選を振り返った琢磨。「(231マイルに入った)朝のプラクティスで非常にいい手応えを掴んでいて、自力で31マイル台に載せられたのは良かったんですけど、プラクティスでカーペンターがクラッシュし、クルマがひっくり返るのは3回目ということで、全車が決勝用のクルマに変えなければなりませんでした。ここまで作ってきた予選用のトリムが使えなくなり、残念です」
 
予選前の第8プラクティスではホンダがトップ10の半分を占め、好バトルが期待されたものの、実際に蓋を開けた予選では相変わらずシボレー勢が優位となりました。立て続けに浮き上がったシボレーのエアロ・キットに問題があるのではないかというオフィシャルの判断によって、急遽決勝用のマシンで予選を走ることになったわけですが、琢磨をはじめとするホンダ勢に多大な影響を及ぼしたのは間違いありません。
 
第100回大会に向けてスピードをアップし、メーカーの違いを際立たせたいという主催者の目論見によって導入されたエアロ・キットですが、伝統の予選を台無しにする結果となりました。さらに問題なのは、今回の措置が根本的な解決につながるわけではないということです。140kPaとされていた予選ブーストをレース時の130kPaに戻したものの、カストロネベスとニューガーデンはまだレース・ブーストの時に起きたもので、これは単にスピードをおさえるためだけの措置です。
 
今回クラッシュしたシボレーの3台に共通するのは予選用と言われていたサイドポッドを使用していたことで、これもルール変更の引き金になったと思いますが、急激にリアが流れるという問題以外に、後ろを向いてから浮き上がるという点においては、開口部が大きく、浮かせやすい内部構造をしているリア・バンパーにも問題があるのかもしれません。今回のようなスピンを想定して、後ろから空気をあてるシミュレーションをしていたのかどうか、疑問が残ります。
 
2003年のオフシーズンにここで行われたタイヤ・テストで、ディクソンのチームメートになったばかりのトニー・レナがターン3でスピンし、後ろから舞い上がったマシンはフェンスを破ってグランド・スタンドまで到達。レナは帰らぬ人となりました。マシンが浮くということは、それだけのリスクを秘めているということでもあり、観客まで犠牲になる可能性を否定できないと思います。
 
決勝まで1週間あります。使える風洞などをフルに活用して徹底的にシミュレーションし、根本的な解決策が見当たらなかった場合、いざとなれば実績のあるDW12に戻してプラクティスを追加するような大英断も必要ではないでしょうか。99回目にして、インディ500は厳しい試練を迎えています。ファンのためにも無事に来年の100回目を迎えることこそが、何よりも重要ではないかと思うのです。(斉藤和記)
 
●予選リザルト

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●プラクティス総合リザルト

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●第8プラクティス・リザルト

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●第7プラクティス・リザルト

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●予選ハイライト映像

 
●カーペンターのクラッシュ映像

 
●ニューガーデンのクラッシュ映像

 
●カストロネベスのクラッシュ映像