3連戦の最後、第4戦アラバマでジョセフ・ニューガーデンがみごと初優勝を飾りました。予選5位だったニューガーデンは、スコット・ディクソン、サイモン・パジノウ、ウィル・パワーらをスタートで次々とパス。1周目を終えた時点で、2番手にジャンプ・アップを果たしていました。
ポール・ポジションのカストロネベスと同じ19周目に最初のピットへと向かい、カストロネベスの右フロントのクルーがタイヤを外した際に、ホイール・ナットがガンから外れてしまうアクシデントが発生して出遅れ。ニューガーデンがカストロネベスよりも先にピット・アウトすることに成功し、トップに躍進します。
コーション中の2度目のピットではカストロネベスに先行を許したものの、グリーンで再スタートして2周目の最終ターン手前でカストロネベスをきれいにパス。再度トップに君臨したニューガーデンは、63周目に最後のピットも無難に終え、インディカー参戦55戦目にして真っ先にチェッカードフラッグへと飛び込みました。
このアラバマのすぐ上、テネシー州出身のニューガーデンは3年前の2012年にデビュー。これまでのベストは2013年ボルティモアと2014年アイオワの2位でした。「うまくいえないほど緊張したよ。いつものレースではなかった。長い間こうやって勝ちたかったからね」と語った1990年生まれの24歳。「ここで起きたことがまだ信じられないよ」
今年合併したばかりのカーペンターとフィッシャー・ハートマン・レーシング。ピットのミスをニューガーデンが走りで挽回するほどのみごとなレース運びで、ペンスキーやガナッシといった強豪を打ち破ったのも特筆すべきことと言えます。これまでどちらかといえばオーバルが得意なチームでしたが、今後のロード・コースでも要注目となるでしょう。
2位は最終ラップでディクソンを交わしたグラハム・レイホールで、この日2度目のピットを上位勢と同じ2度目のイエローで入らなかったレイホールは、最後のピットをニューガーデンよりも12周後に入っていました。燃料に余裕のある彼は最後のスティントでスパートをかけ、6番手から2番手まで大躍進。3位はディクソンで、6年連続で表彰台獲得です。
予選20位からスタートした佐藤琢磨は、11番手を走行中の19周目、ピットから出てきたパワーが琢磨の存在を知らずにそのままインへダイブして2台が接触。22周目にピットへ入ってウィングを交換し、コースへ復帰した時は21番手まで転落していました。その後8番手までポジションを上げるも、レッド・タイヤが急激に性能を落とし、21番手で最後のピットへ。最後にブラック・タイヤを投入した琢磨は17位まで追い上げてゴールし、3連戦を終了しました。
「僕はすでにコーナーへ入っていて、彼がものすごくアグレッシブに来るなと思ったのですが、コールド・タイヤだったし、サイド・バイ・サイドでいくのかなと一瞬思いましたけど、見えてなかったんでしょうね。後で謝りに来てくれましたが、僕のレースは戻ってこなかったです」と琢磨。「中盤はレッド・タイヤとピットのタイミングが合わず、タイヤが終わった状態で7周近くを走らなければならなかったので、大きく順位を落としてしまいました」
序盤の3連戦が終わり、4戦を経て毎回異なる4人のウィナーが誕生しました。開幕後はペンスキーとガナッシが一歩抜きん出ているようにも見えていましたが、今回のニューガーデン&カーペンター・フィッシャー・ハートマン・レーシングの勝利で、まだまだ他のチームにもチャンスがあり、誰が勝つか分からないインディカーらしさは今年も健在だと感じます。
24歳のニューガーデンと25歳のレイホールという若手アメリカンによるワンツーが実現し、これからもふたりの活躍に注目が集まるでしょう。シリーズとしては理想的な形でマンス・オブ・メイに突入することになりました。レイホールの素晴らしい追い上げは、エアロキットに苦労していたホンダ勢にとって、明るい兆しとなったはずです。
次はインディアナポリスのロード・コースを皮切りに6週連続の中盤へと突入します。4戦連続で接触に遭ってしまった琢磨、インディ500前のロード・コースで今度こそ無事に、上位でのフィニッシュを期待したいと思います。(斉藤和記)
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