日曜日の第10戦ヒューストンは、予選3位からスタートしたサイモン・パジノウが制覇。第4戦インディGPに続く今季2勝目で、通算4勝目です。パジノウはスタートでチームメートのミハイル・アレシンを抜いて2番手にアップ。49周目にエリオ・カストロネベスをパスしてトップに浮上してからは、一度もリーダーの座を譲ることなく、最後は6.2155秒もの大差で勝利を挙げました。
「最高のレースだ。クルマはとてもビューティフルだったよ」と語るパジノウ。「ブレーキング、トラクション、グリップとどれも最高で、これ以外にドライバーは何を期待するだろう。この週末はこんなに速いクルマがあったのに、昨日はほんとうにがっかりした。デトロイトの後にもう一度やり直してこのパッケージが仕上がったんだ。シュミット・ピーターソン・モータースポーツに感謝するよ。ビューティフルで、ほんとうにホットだったね」。ホンダが表彰台を独占し、ヒューストン2連勝です。
2位はロシア人ルーキーのアレシンですが、その道のりは劇的なものがありました。予選2位からスタートした彼は、上位勢では最も早い26周目にピットイン。その後レイホールと接触してフロントウィングにダメージを負ってピットへ入り、19番手までポジションをダウンしたのです。「もう終わったと思ったよ」とアレシン。「しかしその後の戦略が素晴らしく、また追い付くことができたんだ」と本人が言うように、チームはコーション中の50周目に彼をピットに入れ、前日のウェルタス同様残り40周をピットなしで走り切ったのです。「最後の数周はタイヤがパンクしていたんだ。ほんとうにラッキーで、とてもハッピーだ。チームに感謝するのに十分な英語の単語を持っていないよ!」
3位はイギリス人ルーキーのジャック・ホークスワースが入りましたが、何と予選23位からのスタートでした。「ほんとうに素晴らしい日だった。すでに何度も前からスタートしているけど、いつも結果は良くなかった。それが今日は予選がひどかったにもかかわらず、今はこうして表彰台にいるんだよ」と語ったホークスワース。第4戦インディGPのトップ快走といい、これからの活躍も注目したいルーキーです。
予選10位からスタートした佐藤琢磨は、シケインへの進入で横にいたカルロス・ムニョスが曲がりきれなくなったため、やむなくコースアウト。その後ムニョスが再び横に並んでターン4へと進み、シケインに入る前の状態に戻ったと認識した琢磨は、ペナルティはないと判断しました。そしてターン5でムニョスをパスしたのですが、数周後にオフィシャルはショートカットのペナルティを科しました。琢磨はムニョスの後ろに下がらなければならなくなった中、当のムニョスはさらにポジションを下げており、結局15番手までのダウンを強いられます。
それでもレース中盤には6番手までポジションを上げ、今度こそ上位でのフィニッシュが期待されたのですが、54周目の再スタートでマルコ・アンドレッティに接触されてバランスを失い、大きくポジションをダウン。タイヤもパンクしたことから56周目にピットへ入ったものの、今度は燃料補給に手間取って大幅にタイムをロスすることになります。16番手からの追い上げを余儀なくされた琢磨は、12番手まで挽回した73周目、縁石に乗り上げすぎてコントロール不能となり、壁にヒットしてリタイアとなりました。
「順位が上がったり下がったりで、ペナルティやアクシデントがあっても必死に追い上げたのですが、最後は自分のミスで台無しになってしまいました」とレースを振り返る琢磨。「今日は速さもそこそこあって、上位入賞もできたと思うのですが、それが叶わなかったのは非常に残念です」
第1レースでは1位のウェルタスを含めて2人のルーキーが表彰台に立ち、第2レースは別のルーキー二人が初の表彰台を獲得しました。この10戦で7人のウィナーとポールポジションが誕生していることからも、次はいったい誰が勝つのか、今シーズンもまったく予測できないレースが続いているといっていいでしょう。その中でとても残念なのはレースコントロールで、第1レースは5回もペナルティが出ていたにも関わらず、第2レースではなぜか一度もありませんでした。特に保護観察中のマルコがウィルソンや琢磨を押し出しても、ペナルティにならなかったのは理解しがたいものがあります。
今回はチームの地元であるにもかかわらず、一貫性のないオフィシャルのジャッジに2レースとも翻弄された佐藤琢磨。第1レースでコメントを求められたAJフォイトは怒りのあまり、久しぶりに放送禁止用語をぶちまけ、ラリー・フォイトのあのようなこわばった表情も初めて見ました。しかし悔しい思いをしたのは彼らだけではなく、レース観戦に訪れたチームの関係者や家族も、同様の気持ちを抱いたはずです。この一件がチームの絆をより強いものとし、これからの大躍進につながるきっかけとなることを、願わずにはいられません。(斉藤和記)
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