日曜日も快晴となったトロント。15時30分の時点で気温28度、湿度61%というコンディションでしたが、強烈な日差しで体感的には30度以上あったと思います。土曜日のレースで実現しなかったスタンディング・スタートが急遽日曜日にも採用され、今回は無事に成功。スロットル・ペダルのトラブルでピット・スタートを余儀なくされた地元のヒーロー、ジェイムズ・ヒンチクリフと、エンジンをストールさせたエド・カーペンターを除き、全車がエンジンの爆音とタイヤ・スモークをグリッドに残していっせいにターン1へと雪崩れ込んできました。
ポールからスタートした前日の覇者スコット・ディクソンは、85周のレース中ピットのタイミング(4周)以外、トップを譲ることなく完璧な走りで連覇。ついにポール・トレイシー、ダリオ・フランキッティ、セバスチャン・ブルデイを破り、現役最多で歴代7位となる32勝目をマークしました。次はアル・アンサーJr.が持つ34勝がターゲットとなるのですが、今年は残り6戦なので、数字的には今シーズン中に歴代5位ボビー・アンサーの35勝を上回る可能性があります。ちなみに歴代4位はアル・アンサーの39勝、3位はマイケル・アンドレッティの42勝、2位はマリオ・アンドレッティの52勝で、最多勝利はAJフォイトの67勝。まだ御大の半分もいってないとは…
土日のダブルヘッダーの両方を制したディクソンは、持ち越しとなっていた前回のデトロイトの分も加えて、特別ボーナスの10万ドルを獲得しました。先週の土曜日までは今季未勝利でランキング7位だったのですが、わずか8日間で3連勝して現在ランキング2位と大躍進です。ダブルヘッダーが多かった60年代は同様に8日間で3連勝することもあり、マリオ・アンドレッティが67年に記録。68年にはアル・アンサーが8日間で4連勝したそうです。昨年はライアン・ハンター-レイが3連勝しましたが、ディクソンはかつて07年に3連勝した経験があり、その時はワトキンス・グレン(ロード)ナッシュビル(オーバル)、ミド-オハイオ(ロード)でした。次は現役最多の4勝を記録している得意なミド-オハイオなので、連覇の可能性は十分に高いでしょう。
「スタンディング・スタートはみんなナーバスになっていたと思う。今日も失敗してローリングスタートになるのを僕は待っていたんだけど、朝のドライバーズミーティングではうまくいくまでやるって言ってた。でも、まずまずのスタートになったし、エリオが来てたのが見えて、プッシュトゥパスを使った。ターン1のコンクリートパッチがすごくスリッピーだったからスライドし、エリオに当たったかと思ったけど、巻き込まなくて良かった。全車がうまくスタートして、予想していたコーションにもならなかったから、すごく驚いたね」とスタンディング・スタートを振り返るディクソン。あの速さで燃費もセーブして走っていたそうで、「終盤になってコーションも増えてきたけど、僕らはいるべき場所に、いるべきタイミングの時にいた。完全にうまくいったね」と語っています。10万ドルのボーナスに関しては「連覇してボーナスがもらえるなんて、全然気づいてなかった。シーズンの序盤が大変だったから、クルーにとっても素晴らしいよ。もっと重要なのはポイントで、7日前は92ポイントも差があったのに、今は29しかない。少しエリオにプレッシャーを与えるのはいいことだし、この調子を維持していきたいね」
2位は絶妙なスタートでフランキッティをパスし、そのままポジションを守り切ったカストロネベスです。ディクソンよりも2周ピットを遅くするほどの燃費を披露しましたが、「スコットとガナッシに追い付くほどのクルマではなかった」とカストロネベスは語っています。「ブラックタイヤを履いて少し良くなり、このままいけると思った。でも我々が渋滞にはまっている間、彼はすでに13秒先も行っていたからね」
チャンピオンシップ・バトルでハンター-レイの他にディクソンも追い上げてきたことについて、「我々はこのままのアプローチで、何も変える必要はない」とポイントリーダー。「クルマがいい時は強さを発揮して戦うし、良くない時は賢く戦う。他の誰よりもそれができているから、これだけのポイントを稼ぐことができたんだ。彼らはチャンピオンだし、素晴らしいチームにいる。でも我々にだって最高の道具とスタッフがいるんだから、自分たちの仕事に集中するだけだよ」
表彰台ではブルデイにシャンパンを思いっきりかけられていたカストロネベス。ダブルヘッダーを戦った後の疲労については、「昨日のレース(6位)はそうでもなかったけど、できるだけハードに攻めてスコットと上位を走った今回は、かなり疲れたと感じるよ。あまりイエローもなかったしね」と語っています。
昨日の2位に続き、連続表彰台をものにしたブルデイ。昨日は予選2位スタートでしたが、今回は7番グリッドからの追い上げで、一時10番手までダウンしたことを考えると、大健闘と言えるのではないでしょうか。最後のリスタートでアウト側からウィル・パワーの前に出たのも見事でした。「今日はプッシュトゥパスを持ってなかったんだよ」とブルデイ、それでいて3位まで躍進してきたのは驚きです。「ベースとなるセットアップを見つけることができたのが大きい」と好調の要因を語る彼、今後の市街地コースでも要注目ですね。
「かつてトップ・チームで勝てるクルマに乗り、たびたびチャンピオンになれることを証明したけど、今はまったく違うチャレンジをしている。ほぼゼロからチームを作り上げているようなものだ。これをきっかけに残りのシーズンがよくなるといいね」と語ったチャンプカーの4年連続チャンピオン。表彰式でブルデイと抱き合っているのは、チームオーナーのジェイ・ペンスキーで、昨日は父親のチームよりも上でフィニッシュ。07年に創設されたチームにとって昨日が初表彰台でしたが、いっきに2戦連続となりましたよ。
4位でフィニッシュしたのは、予選2位スタートながらカストロネベスに先行され、その後ろに追突してピットインするはめになったフランキッティでした。フロントウィング交換で22番手までダウンした彼は、「毎ラップ予選のように走った」と猛追。2度目のピットが終わってからは13番手を走行し、3度目のピット後は6番手まで上がっていました。パワーとハンター-レイが接触リタイアしたことで4位となったのですが、スタートで遅れたせいか、スタンディング・スタートには反対のようで。「インディカーの歴史はローリングスタート。戻すべきだ」とコメント。意外な弱点を発見した気分?(笑)
朝のウォームアップで8位だった佐藤琢磨は、昨日と違ってスタート時にレッドタイヤをチョイス。14番グリッドながらスタンディングスタートがうまく決まり、いっきに10番手へ躍進しました。その後7番手までポジションを上げて最初のピットへと入り、再び7番手で2回目のピットに臨んだのですが、ホイールのナットがうまく外れないトラブルで後退。終盤に9番手まで追い上げ、完走目前となった残り2周、再スタートで前方に多重クラッシュが発生し、減速しきれなかった琢磨は止まっていたハンター-レイに追突して4戦連続リタイアとなってしまいました。
「リスタートそのものは悪くなかったし、2つぐらいポジションを上げて1コーナーに入っていきました。しかし昨日はメカニカルトラブルのリタイアで、今日はなんとしても完走してポイントを稼ぎたかったこともあり、空いているアウト側から攻めていったんです」とアクシデントの状況を語る琢磨。「ここは2コーナーが徐々に狭くなっていくんですが、前でアクシデントがあってほとんど止まるような状況になり、急いでブレーキを踏んだものの全く何もできなかったです」
「後半戦、このストリートコースをすごく楽しみにしていました。トロントは好きなコースなんですが、なぜかリザルトは良くなかったので、今回はそれを払しょくしたかったです。今回、ここで色々と学ぶこともできたので、それを持って久しぶりのロードコース、ミド-オハイオではさらに上位を目指して頑張っていきたいです」と次戦への抱負を語った琢磨。来年のためにも、シーズン終盤にかけて上り調子で行って欲しいですね。
さて、今年2度目のダブルヘッダー、みなさん楽しんでいただいたでしょうか。この写真はディクソンの下の娘で、インディ・ジャパン・ファイナルの直前に生まれました。早産だったこともあり、ディクソンはレース後すぐに帰国したのですが、もうこんなに大きくなったとは…。取材も大変なダブルヘッダーですが、もしインディジャパンが復活するとしたら、ダブルヘッダーになるといいですね。「インディ・ジャパン・デュアル」ってことで、どうでしょう? あ、でもオーバルのダブルは難しいかな…。
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