INDY CAR

第13戦ソノマのベスト・ショット&撮影裏話です!

インディカー写真
サンフランシスコのダウンタウン北部にある観光名所、ゴールデン・ゲート・ブリッジを通過し、そのまま101号を約20マイル北上すると、カリフォルニアのワイン・カントリーとして有名なソノマ、ナパ・バレーへと向かう37号線の標識が見えてきます。車の進路を37号に移し、東に10マイルほど走ると121号線があるのでね、それを北上するとすぐ左手にインフィネオン・レースウエイがあります。
 
ワインを飲みにそのままソノマへ向かいたい衝動をぐっと抑えつつ、車のハンドルを左に切ってコースに入ること3日間。結局ワイン・カントリーに足を踏み入れることなく、約410マイル(約660キロ:日本では東京の皇居地点から青森県八戸市ぐらいまで)のロング・ドライブを経て、ロサンゼルスまで戻ってきました。行きは同乗者がいたのですが、帰りはひとりだったので、これまた長く感じましたよ。
 
しかし今回のソノマのレースは予選トップ5が変ることなく、そのままの順位でフィニッシュするといった、ある意味単調なレースでしたね。単調さで言えばサンフランシスコ〜ロサンゼルス間の約230マイル(約370キロ)の、何もないフラットな直線のハイウエイ5号線と同じぐらい? そんなことないか。
 
もちろん、トップ5でフィニッシュしたドライバー達は、ミスやトラブルなくレースでの駆け引きもうまくこなし、極限の状況を保って75周を走りきったわけで、だからこそトップ5相応の順位でフィニッシュできたと思うのですが、観ているファンとしてはそれほどエキサイティングなレースではなかったかも、とレース後にふと思ったりして。まあ、それもレースなんですけどね。
 
撮影している側としては、予選トップ5のままフィニッシュしてくれることは、写真をおさえるという意味でとてもありがたいです。最初のトップ5くらいまでは間違いなく撮っていますから。それ以外のマシンもおさえてはいるものの、コーションのタイミング次第でどんでん返し的なレース展開になり、予想もしなかったドライバーがトップ3を占めるとね、写真あったかな〜って、結構あせるときもありますよ。
 
ですから、逆転で優勝や表彰台っていうパターンには、ぜひ佐藤琢磨がきてくれると、もちろん写真をたくさん撮っているし、とてもハッピーなわけです。今回チームはそれを期待した作戦を立てたようですが、コーションは一度しか発生せず、18位と残念な結果になってしまいました。それでもレース直後に琢磨の“幻”の順位に一瞬興奮したのでね、そのときの様子をお伝えしたいと思いますよ。
 
今回は予定していたとおりの撮影移動を計画どおりこなし、ラスト10周となったところでフロント・ストレート・エンド、ターン1のカーブが始まるところのコース内側に落ち着きました。そこでレース終盤のマシンを撮影しながらね、チェッカーフラッグが振られるのを待つという段取りです。
 
優勝したウィル・パワーのゴール・シーンを撮影後、早く表彰台に行かねばと移動しているときにふと電光掲示板を見ると、なんと5位のところに5番の文字が! そんなわけないなと思いながらも、そういえばレース途中にもその位置に5番が表示されていたなって思い出したのです。ひょっとしたら、レース終盤にもそのあたりを走っていたかもなって、物事をポジティブに考え始めてね、さては最後のコーションでどんでん返しがあったんじゃね? と状況を今ひとつつかめないまま、とりあえず表彰台に向かう前に琢磨のピットへと走ったのでした。
 
するとマシンから降りた琢磨がチーム・クルーと握手をしているシーンに出くわし、おお、これは本当に5位フィニッシュだったのかとヘルメットを脱いだ琢磨を撮影していると、僕と同じように電光掲示板を見て駆け足で一足先にピットに到着していたMカメラマンが「実は18位なんですって。表示されていた番号は9番で、一部が消えていたから5番に見えただけだったみたい……」と、疲れきった顔で教えてくれました。
 
それを聞いて僕もガクッときたのですが、その場にとどまっているわけにもいかず、残りの力を振り絞ってね、今度は表彰台に駆け足で急ぎましたよ。ウィルの歓喜のジャンプ・シーンには間に合いませんでしたが、ウィナーがインタビューされている間に表彰台の撮影ポジションを確保し、表彰式のセレモニーを待つことにしました。
 
3位のライアン・ブリスコー、2位のエリオ・カストロネベスのトロフィー授与が終わり、いよいよウィナー、ウィル・パワーの名前がアナウンスされて表彰台の中央に来るとね、ガッツポーズをした後になんと、2週間前のニュー・ハンプシャーで問題になったポーズを人差し指で再現したんです!
 
ニコニコしながらね、してやったりといった顔でそのポーズを堂々と見せたウィルの姿を見て、ビクトリー・サークルにいた関係者はもちろん、カメラマンやファンも爆笑でおおいに盛り上がりましたよ。そんなわけで、前回のベスト・ショットの流れもありますし、今回は禁断のダブル・ファ●●から一転、誰もが納得のダブル・ナンバー1のポーズを選ぶことにしました。
 
それにしても今回のソノマは、電光掲示板の欠陥表示に惑わされることになったレースでした。ボルティモアでは琢磨のカーナンバー5がトップ3内(もちろんトップが一番いいですけどね)に表示されればと思っていたのですが。はい。
 
Photo & Text by Hiroyuki Saito
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 70-200mm f/2.8 IS USM
ストロボ: Canon スピードライト580EX ?
撮影モード: マニュアル露出
シャッタースピード: 1/250
絞り値: F9.0
測光方式: 評価測光
ISO感度: 100
焦点距離: 148.0mm
ストロボの種類: 外部E-TTL
調光補正: +1
シンクロタイミング: 先幕シンクロ
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
※第13戦Pick the Winnerのプレゼントはこちらの写真となります。