Roger Yasukawa's

2011年シーズンをおもしろくするためのルール変更(後編)

画像前編に引き続き、今回はその後編として1月11日の“State of Indy Car”で発表された新ルールについて、紹介したいと思います。
前回、ピット・ボックスの位置が同じタイプのコースの前戦の予選順位によって決まると書きましたが、さらにピット・コミット・ラインの開始場所も変更されることになりました。これっていったい何のこと? と思った方もきっと多いと思います。
これまではピット・コミット・ライン=ピット・レーンのことで、スピード制限が始まるラインのことでした。それが今シーズンからはピット・スピード制限が始まるラインとは別に、ピット・レーンに向かうまでのエリアもはっきりとさせようということになりました。基本的にオーバルで採用されるルールです。

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各コースによって異なりますが、オーバルのレースではコースからピットへ向かう際にエプロンと言われる走行エリアがあり、ピットのためにコースから外れてそのエリアに進入し、スピード制限が始まるピット・レーンまでを“No-man’s land”と呼んでいました。“No-man’s land”なんていうくらいですから、誰の土地かわからないような(笑)グレー・ゾーンだったわけです。
レースのグリーンの最中にピット・インしようとし、このゾーンに入ってまだピット・レーンまで辿り着いていなかった場合、それがたとえ1m手前だったとしても、イエローが出た瞬間にピット作業は禁止になっていましたよね(燃料切れ寸前の場合のみ、スプラッシュ&GOだけはOK)。新しく付け足されたルールでは、この“No-man’s land”を走行中にイエローが出てもピットに戻って作業をすることが可能となったのです。

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これはチームやドライバーにとって良いルール変更だと思います。イエローが出るタイミングというのは戦略的にコントロールできませんが、少なくともグリーンの最中のルーティン・ストップで損をすることはなくなります。もちろん場合によっては、タイミング的に得をするドライバーが出てくると思いますが、根本的にルーティンで入ってきているドライバーに損をさせないためのルールだと言えます。
次の変更点は、ロードや市街地コースの予選で選択できるタイヤに関してで、第1ステージから最終ステージのファイアストン・ファスト6まで、各ステージで1セットしか使用できなくなりました。つまり、ステージ中にタイヤを交換することができなくなったのです。

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これまでは序盤に中古タイヤで様子見をしてから、ステージ後半に新品タイヤに履き替えてアタックをするケースが多かったですよね。新しいルールでは、よほど余裕がない限り、最初の2ステージで柔らかいレッド・タイヤを投入し、確実に予選6位以内となるファスト6への進出を目指すドライバーが増えるでしょう。
以上のように様々なレギュレーション変更があったわけですが、それらとは別に、レース・ウィーク・エンドのスケジュールも変わることが発表されました。
第1プラクティスの時間が75分間となり、最初の45分はルーキーとポイント・ランキングがトップ10以下のドライバーのみ走行が可能となります。45分経った時点で残りのドライバーが加わるのですが、ランキング・トップ10に入っているドライバーは、最後の30分間しか走行することができません。
最初の45分間の走行に参加するドライバーにはタイヤが1セット多く供給され、75分のセッションが終わった時点で全車がタイヤを返却することになりました。この時、1セット余分に持っているルーキーとトップ10以下は2セット返却となるのですが、有償で1セット・キープすることが可能となります。

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タイヤの返却が義務付けられたことによって若干紛らわしく感じますが、ルーキーやランキング・トップ10以下のドライバーにとって、走行時間が多くなることと、必要十分なタイヤを供給してくれるので、上位勢との差を短縮しやすくするメリットがあると感じます。
なおかつセッションでトップ10に入ることができれば、比較的フレッシュなタイヤを1セット持ち越せるので、レース中にタイヤ1セット分の余裕ができるとも言えるでしょう。今までは走行時間を増やしても、週末に使えるタイヤのセット数に限りがありました。それだけにセッション序盤で待機というマシンが多かったのに対し、ルール改善によって常にコース上でマシンが走ることになると思うので、ファンにとっても嬉しい変更だと思います。
ファンが喜ぶと言えば、今年から9歳以上であればガレージ・パスを使って、メカニックらが作業しているガレージ・エリアへの入場がOKとなりました。入場制限の年齢を下げることによって家族連れのファンも楽しむことができ、ファン層を厚くするためにはとても良いアイディアだと思います。

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ファンはレースだけを楽しむのではなく、ガレージ・ツアーで技術的な話が聞ける「テック・トーク」などのイベントに参加することによって、観戦をより深いものにすることができるでしょう。ドライバーやマシンと身近なところがインディの良さなので、たくさんの子供たちに興味を持ってもらい、レースを好きになってもらいたいですね。
その他、2012年の新エンジン導入に向けて、早速ルール変更がありました。以前発表された2.4Lから、2.2Lへダウンサイズするというものです。「まだ始まってもいないのに何故・・・?」という疑問もありますが、軽量で効率性が高く、耐久性も高いエンジンにするためのルール変更だとシリーズは述べています。

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今のところホンダ、シボレー、そしてロータスがエンジン・マニュファクチャラーとしての参加を表明していますが、ここにきて排気量を引き下げた背景として、他にも交渉しているメーカーがあるのかもしれません。かつてのCARTの頃のように、もっと多くのメーカーに参戦して欲しいと思うので、増えるのは大歓迎です。
さて、ルール変更の説明を2回にわたってお届けしましたが、ヒデキのブログに今季はインディカーにフル参戦しないと書いてありました。子供の頃から弟のように可愛がっていた僕としては、実に悲しいニュースでした。今後、どのシリーズに参加してもインディで得た経験を活かしてがんばって欲しいのと同時に、インディ500やインディ・ジャパンへのスポット参戦に向けての活動も、ぜひ続けて欲しいと思います。がんばれヒデキ!
同時にKVレーシング陣営も気になるところですが、Takuは必ずどこかのチームでシートを獲得することでしょう。最終的にシート獲得合戦がどのように落ち着くのか、ほんとうに楽しみです。