Roger Yasukawa's

開幕直前! テストで明らかになったドライバー&チームの実力(後編)

画像いよいよ今週末に迫った開幕戦! 今回は後編として、まずは注目の日本人ドライバーからいきましょう。
トップからわずかコンマ3秒差、総合6位でテストを終えたのは、元F1ドライバーの佐藤琢磨です。初日から精力的に走りこみ、2日間通して最多の141ラップを走行、インディカーの特性をしっかり掴んだように見えます。KVレーシングのヘッド・エンジニアは、僕が2003年にデビューした時のエンジニアだったジョン・ディック。彼に琢磨のパフォーマンスについて聞いたところ、エンジニアとのコミュニケーションもスムーズにこなし、チーム・スタッフ全員が感心しているとのことでした。

画像

その学習能力の高さからくる適切なマシン・セットアップへのコメントや、旋回速度を高く保ちながらコーナリングするドライビング・スキルなど、どれを取ってもかなりレベルが高いとジョンは絶賛しています。F1で得た経験を考えるとロードでの速さは当たり前なだけに、琢磨にとってほんとうのチャレンジはオーバル・コースにあると彼自身も考えているのではないでしょうか。テストのパフォーマンスを見る限りでは、開幕戦からいきなりの活躍が十分に期待できそうです!

画像

KVレーシングは琢磨の他にEJ・ビソと契約し、元ホンダF1のテスト・ドライバーだったジェームス・ロシター(写真↑)を3台目として走らせる予定のようです。インディ500やカナダのレースではポール・トレイシーも参戦予定なので、状況によっては4台体制の大規模なチームに変身し、相当なデータを収集できそう。チームに所属するドライバー全員がアグレッシブなだけに、今年のKVレーシングは表彰台の常連になるかもしれませんよ。

画像

今年でインディ参戦3年目となるヒデキは、AGRから名門ニューマン/ハース・ラニガン・レーシング(NHLR)へ移籍。なかなか発表されず、その動向が気になっていただけに、シートが確定したことを聞いたときは僕も安心しました。
今年のNHLRは、現時点でヒデキだけの1台体制。データ量が減ってしまうのが少し気になるところで、チームはテストのプログラムをしっかり考えながら進めていかないといけません。ヒデキの専属エンジニアには、マーティン・パレが就任。マーティンは以前AGRに所属していて、ダニカがインディ・ジャパンで優勝した時のエンジニアです。AGRの時からヒデキとは面識があるだけに、最初のテストからお互いのコミュニケーションはバッチリ進んでいるように見えました。

画像

走るたびにNHLRに所属する大御所エンジニアが揃ってヒデキのコメントに耳を傾けてくるそうで、さすがのヒデキも「緊張する」と言っていました(笑)。昨年までは4台体制で戦っていたのに対し、今年はヒデキの一声でマシンセットアップを変えることができるので、かなり自分の好みのマシンを作ることができるでしょう。2年連続で表彰台に立っているヒデキ、過去多くのチャンピオンを作り出したNHLRで、今年こそは頂点を目指してがんばって欲しいです。
さて、オフシーズンの間にチーム名をアンドレッティ・オートスポーツ(AA)に改名し、マイケルが完全に指揮をとる体制となったAAは、今年こそ再び2強へ食い込むことを狙っていると思います。昨年はパフォーマンスが低迷し、特にロードや市街地コースでのセットアップに悩まされていました。バーバーでのオープン・テストでもマルコの8位がトップで、4台全員があまりパッとしないように見えてしまいました。

画像

今年からIZODのスポンサーを持ち込み、スポット参戦が決定しているのがライアン・ハンター-レイ(写真↑)で、僕のアトランティック時代のチームメートです。テストの合間を縫ってライアンと話をした時、「AAは足回りをガチガチに固くし、車高をものすごく低くして走る傾向のセットだね。マシンを乗りこなすのがとても難しいよ」と言っていました。今シーズンからチームのスポーティング・ディレクターとして加入したトム・アンダーソンが、どこまでチームのパフォーマンス・アップを果たせるかがポイントとなりそうです。

画像

今回のテストには参加していませんが、今年のダークホース的な存在となりそうなチームは、アレックス・タグリアーニ(写真↑)が共同オーナーとなるファズト・レーシングです。というのも新生チームでありながら、チーム・スタッフはベテラン揃い。昨年までAGRでチーフ・エンジニアをしていたアラン・マクドナルドが入り、オフ・シーズンの間は頻繁に風洞実験や足回り開発のためにシェーカー(サスペンションのシミュレーション装置)にかけていたと聞きます。もうベテランの域に入ったアレックスは、しぶとい走りでコンスタントにトップ10フィニッシュが期待できると思いますよ。

画像

他にもバーバーのオープン・テストには参加せず、その翌日セブリングでテストを行なったパンサー・レーシングのダン・ウェルドン(写真↑)や、デール・コイン・レーシングも注目です。ダンとしてはパンサーに戻って2年目となる今年、チームとの関係はさらに深まっているはず。スーパースピードウェイでの速さはピカイチなだけに、今年のインディ500でも活躍することでしょう。

画像

デール・コイン・レーシングに関しては、グラハム・レイホール獲得に向けて動いていたのですが、どうもグラハムが断ってきたらしく、今の時点で決まっているのはミルカ・デュノ(写真↑)のみ・・・。しかし噂ではセブリングでテストを担当したアレックス・ロイドが、リード・ドライバーとしてチームに加入するようです。プロ・シリーズでヒデキと争ったアレックスの走りが楽しみですね。
2回にわたって注目のドライバーやチームを紹介してきましたが、今シーズンのラインアップを見ると、今まで以上にレベルが高くなっています。まだ早すぎるかもしれませんが、僕の予想としてはチャンピオンがウィル・パワー、ルーキー・オブ・ザ・イヤーは佐藤琢磨という線がカタイと言っておきましょう! みなさんはどう予想しますか?

なんといっても今年は日の丸が表彰台の真ん中に上がることが期待できそうで、日本のみなさんにとって今まで以上におもしろいシーズンとなるのは間違いありません! 時差で深夜の観戦が多くなると思いますが、今年もがんばっていきましょ〜!!