ふと気がついたらインディ・ジャパンも終わり、今はなんだか少し寂しく感じますね。
このたびはインディ・ジャパンの週末を通して、応援ありがとうございました! 木曜日から多くの方がパドックを訪れて僕にエールを送っていただき、みなさんの応援がレースを最後まで走りきるパワーとなりました。
今回のインディ・ジャパンは、みなさんがロジャー安川応援ファンドにご協力していただいたことによって無事に参戦ができ、決勝も完走することができました。みなさんのサポートには心から感謝しています。そして、一緒に戦えたことを誇りに思っています。みなさんのお名前が入ったステッカーは、僕の宝物です。
今週のコラムは僕のインディ・ジャパンの週末の流れを、“ロジャー安川レース・レポート”としてまとめたいと思いますので、どうぞご覧下さい。
まず、僕がツインリンクもてぎに入ったのは水曜の夜でした。ツインリンクのゲートを通る時は、不思議とインディアナポリス・スピードウェイのトンネルを潜るような気持ちで、なんだか気合いが入ります。やはり僕にとっては、ホームレースだからかな?!? 中に入ると緊張感が高まり、ホテルにチェック・インしても最初の晩は、なかなか眠りにつけませんでした。
インディ・ジャパン初日は昨年までと違い、走行は金曜日からで木曜日はファン・デーとなったので、たくさんのイベントに参加しました。その合間を縫ってガレージに戻り、マシンに乗り込んでシート・ポジションの確認と、ペダルやシート・ベルトの位置を決定。決勝前の走行は1日しかないので、普段以上にシビアに設定し、翌日の走行で問題がないようにマシンを入念にチェックしました。
イベントやチームとのミーティングの間には、スポンサーやゲストに渡すパドック・パスや駐車券の手配などで、初日はほんとうにてんてこまい。しかし一緒に同行してもらっていた従兄弟に助けてもらい、なんとか無事に全ゲストへのパス配布を完了することができました。さすがに初日は大忙しだったので、ホテルに戻ってご飯を食べ、9時過ぎにはベッドでグッスリ(笑)。
さて、いよいよ2日目は1年半ぶりのインディカーでの走行です。ワクワクしていたせいか5時半には起床。マシンに乗り込むのが楽しみで、7時前にはパドック入りしてしまいました。そのままガレージに行ってチーム・スタッフと挨拶を交わしてから、すぐにレーシング・スーツに着替えです。
そしてマシンに乗り込み、すべてのポジションを最終チェック。フルーツなどの軽い朝食をとって、8時からドライバーズ・ミーティングがスタートしました。ミーティングでは週末のスケジュールや、コースの特徴などの話があり、最後に“Have a Good & Safe Week End”で終わります。
ドライバーズ・ミーティング直後には、ロード・コースのホーム・ストレート上で、毎年恒例となっている全ドライバーの記念撮影。僕は9時から走行開始だったので、そのままピット・レーンへ移動してマシンに乗り込む準備をしました。新しいヘルメットを被り、いよいよセッションがスタートです。
早速マシンに乗り込み、エンジンをかけるとお尻から伝わってくるエンジンの振動が、またたまらない! エンジンの暖気が終わり、セッションが開始されると同時に、ギヤを1速にいれてインストレーションラップを開始します。インストレーションラップではゆっくりと1周し、無線のチェックや、ギヤがローからトップまでしっかり入るかなどをチェック。新しいブレーキパッドを装着していたので、ブレーキを少し引きずってパッドの皮むきも行いました。
ピットに戻ってマシンのチェックが終了したら、コースに戻っていよいよ全開走行を開始。久しぶりのインディカーだったので、最初はハンドルをギュッと握りしめ、身体も緊張して固いな〜と思いました。しかし数周もすれば感覚がすぐに戻り、マシンを思うように操ることができたのです。
出だしのマシンのバランスは、超アンダーステア。去年までのデータでセットしていたマシンは、気温や湿度の差のせいかフロントへの空力バランスが足りません。まずは理想とする空力バランスを得るためにフロント・ウィングを立てたり、ガーニー・フラップなどを付け加えました。空力バランスを適した数値に合わせておかないと、マシン本来のバランスを読み取ることができないので、ここはエンジニアが最初に確認を取るところです。
何度かピット・イン&アウトを繰り返し、空力バランスを合わせてから、今度はメカニカル・グリップを向上させるために、ダンパーやスプリング、ロール・バーの設定なども変更しました。やはり4月開催と9月開催では、コースのコンディションが全然違います。かなりアンダーステアが強いマシンだったので、セットを色々と変更し、すこしでもターン3〜4区間を速く駆け抜けるマシンを作り上げることに専念しました。
色々と試していくうちに、最初のセッションはあっと言う間に終わってしまい、順位は21位とイマイチ・・・。スピードは出ていませんでしたが、着実にセットは前進していたので個人的にはまったく心配していませんでした。むしろ、久しぶりにインディカーに乗った喜びで、なんだかニヤニヤしてしまったくらいです(笑)。
ガレージに戻ってチームとセッティングに関してのミーティングをしたら、すぐに2セッション目が開始。ドライバーズ・ミーティングで行われたセッション分けのくじ引きでは11番を引いてしまったので、僕はグループ1で出走です。スタッフはドタバタと用意をして、ピット・レーンにマシンを持っていきました。
2セッション目はチームメイトのトーマス・シェクターが、1セッション目の最後に試したマシン・セットから始めることにしました。1セッション目よりもマシンは数段レベル・アップしていましたが、まだターン3〜4のアンダーステアは解消されていません。そこでリア・タイヤのアライメントを変更したりして、ハンドリングをさらに向上することに成功しました。
このデータは次のグループ2で走るマイク・コンウエイやトーマスにもフィードバックされ、完全に僕はテスト・ドライバーとなっていましたね!?!(笑) 2セッション目の最後には予選のシミュレーションをして、欲を言えばもう少しスピードが欲しかったものの、バランス的には満足のいく内容で予選突入となりました。
さすがに2デー・イベントとなると、走行初日は慌ただしく、チームとゆっくりミーティングをする暇もなく予選に入ってしまいます。今まで以上に今回のインディ・ジャパンは、レースまでに良いマシンを作り上げるのが大変です。
予選はインディ500と同じ方式で、インディ・ジャパンでは初めて4ラップ平均速度の予選が行われました。4ラップでスピードを保つためには、最初のラップがかなりルーズ(オーバーステア)でないと、最終ラップまでにアンダーを最小限に抑えることはできません。予選で自分の番が回って来るまで、静かにコックピット内で集中していたら、な〜んと自分の前に予選アタックをしていたヒデキが大クラッシュ!
その時点でエンジニアを担当していたラリー・カリーから、「ヒデキは予選直前にかなりダウンフォースを減らしていたからだ。コンディションは悪くない!」とフィードバックが入り、少し安心しました。しかし後ろ向きでかなりの速度で壁に当たったヒデキが気になっていたら、マシンから自力で降りたと聞いたので一安心。いよいよ自分の予選アタック開始です。
最初のラップはさすがに直前で大きなクラッシュを見た後だったので、コースのコンディションを見極めながらいってしまい、もうちょっと突っ込めたかなと思う部分もありました。でも最後の3ラップは、なかなか良い走りができました。当然ターン1〜2は全開、ターン3〜4区間はノー・ブレーキングでコーナリング中にギヤを2速落とし、ダウン・シフトが終わった時点で迷わず全開です。いや〜、やっぱモテギのコースはスリリングだなと、あらためて実感しました。
ヒデキやエリオ(カストロネベス)がクラッシュしたり、トニー(カナーン)が失格になったため予選は17位まで繰り上げ。決して良い順位ではありませんが、決勝マシンのセットには自信がありました。1年半ぶりに乗ったとは思えないほど、自分自身も「乗れている」気分だったので、翌日のレースが楽しみでした!
予選終了後は1時間のサイン会で多くのファンからプレゼントをいただいたり、熱いメッセージをもらい、ほんとうにありがとうございました! ロジャー安川応援ファンドの方にサポートしていただいた方にもたくさんお会いすることができて、良かったです。1時間のサイン会もあっと言う間に終わり、日本人ドライバー3人の記者会見をして、ホテルに戻ったら午後7時半を回っていました。
久しぶりのドライブでかなり神経が疲れていたので、そのまま家族と夕食。9時過ぎには寝床について、翌日のレースに備えてぐっすりと眠りについたのです。
次回、決勝編は来週までお待ち下さい!