チャンプカーからの転向組による初のインディカーテストがセブリングとホームステッドでそれぞれ行われ、今年からインディカーに参戦する5チーム9台が参加。この注目の初テストへ、早速取材に行ってきました。
最初に行われたセブリングでのテストは、もちろんロードコース用のもの。インディカーシリーズでは合同テストとして行われたのは今年が初めてでしたが、チャンプカーでは毎年合同テストが行われていたお馴染みの場所です。そんな慣れ親しんだコースであったからか、チャンプカー組は走り始めから好タイムを連発していました。初日はKVレーシングのウィル・パワーが、52秒台に突入する52秒9685をいきなりマーク。インディカー組のテストのときに52秒台に入ったドライバーはたった4人のみだったことから、いきなりのこのタイムにはIRL関係者もチャンプカー組のロードコースでのポテンシャルに、かなり驚いていたのが印象的でした。
翌日には、同僚のオリオール・セルビアが52秒7035までタイムアップ。インディカーテストに置き換えてみると、ペンスキーの2台に次ぐ総合3番手というものでした。たしかに、路面コンディションは4日前に行われたセブリング12時間レースによりタイヤのラバーが乗り、グリップが相当あったこともタイムアップの要因としてはありました。セルビア自身も、「グリップがありすぎたから、タイムはあんまり参考にならないよ」とコメントしていたほど。それでも、初のインディカーマシンの走行でこのタイムには、さすがはロードコース戦での兵ぞろいだと改めて実感させられました。また、インディカーマシンの印象についてパワーに聞いたところ、「チャンプカーとすごく似ている。タイヤも同じだし、重量もほぼ一緒。エンジンパワーはやや劣っていて、メカニカルグリップもそれほどないけど、基本は同じだよ」とのこと。さすがにこのクラスのドライバーになると、乗り換えてからアジャストするまでの時間も早いですし、ロードコースに関しては特に問題はなさそうでしたね。
チャンプカー組最大の懸案事項は、何と言ってもオーバル。9名の転向組でオーバルレースの経験者はセルビア、パワー、ジュンケイラそしてジャスティン・ウイルソンの4名のみ。1.5マイル以上のハイスピードオーバルになると、セルビア、ウイルソン、ジュンケイラの3名だけです。そんな状況だったこともあり、ホームステッドでの初オーバルテストは僕も非常に注目していたのですが、結論から言えば、経験不足が露呈してしまいましたね。オーバル経験者の3人はそれなりに乗りこなしていましたが、それ以外のオーバル未経験者は一様に、それこそ恐々アクセルを開けていたという印象でした。ただ、グラハム・レイホールだけは初日の走り始めからいきなりアクセル全開。初日、たったの37周しか走行していないにも関わらず、パワーからたった0.1262秒遅れでチャンプカー組2番手につけ、「さすがはあのボビーの息子!」と関心していたのですが、2日目に勢いあまってターン1立ち上がりで大クラッシュ! 新品のクルマは大破し、オーバルの洗礼を受けてしまいました。ただ、これは誰もが通る道。ここからさらにオーバルでの走行に磨きをかけていってほしいですね。
さて、このチャンプカー組の今シーズンの活躍予想ですが、さすがに楽観的になることは難しそうです。インディカーのマシンは今年で6年目となり、各チームとも豊富なデータを所有しています。こういったインディカー組と対等に戦えるチームは、さしものニューマン・ハース・ラニガンとて容易ではありません。また、シリーズ16戦中11戦あるオーバルレースでの経験不足も、大きなディスアドバンテージになっていくことは確実です。チャンプカー組は、今シーズンは「学びの年」として割り切り、来季以降を見据えて戦っていくことになっていくはずです。そんな中でも、ウイルソン、パワー、セルビア、ジュンケイラのオーバルレース経験者には注目したいですね。その経験はもちろん、純粋に“速い”ドライバーでもある彼らが、インディカーでどのような走りを見せるのか非常に注目です。また、ロードコース戦ではチャンプカー組も奮起し、かなり熱い戦いが見られるはず。中でも注目は、マルコとグラハムの“2世対決”で、ロードコースでの彼らふたりの対決には多くのレースファンが注目するでしょうし、何より話題性に欠けていたオープンホイール界にとって、これ以上の新鮮な話題はありません。彼らふたりの若き2世対決も含め、“12年ぶりに開幕する”新生インディカーシリーズに、今から興奮を抑えられそうにありません。