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予想外!50回目のメモリアル・レースを制したのは?

画像今年も素晴らしいレースとなったNASCARスプリントカップ開幕戦『デイトナ500』。最後の最後まで誰が勝つか分からない緊迫したレースを制したのは、あっと驚くダッジを駆るペンスキー・レーシングのライアン・ニューマンでした。2位にもカート・ブッシュが入り、ペンスキーが1−2フィニッシュ。誰もが予想しえなかったと思われるこの結果ですが、今シーズンを占う上ではダッジの復調は非常にポジティブだったと思います。
 50回目の記念大会となった今年の『デイトナ500』で話題の中心だったのは、ヘンドリック・モータースポーツに移った人気ナンバー1のデイル・アーンハートJrと、今年からトヨタにスイッチしたジョー・ギブス・レーシングでした。アーンハートJrは多くのファンの期待通り、前週のエキシビション・レース『バドワイザー・シュートアウト』を制し、木曜日に行われた予選レース『ゲータレード・デュエル』でも優勝するなど絶好調。亡き父デイル・アーンハートの真骨頂だったリストリクター・プレート・レースでの強さを受け継いだアーンハートJrは、2005年ごろまでは“リストリクター・プレート・キング”と呼ばれるなど滅法強かった。ここ数年は前所属デイル・アーンハート・インク(DEI)の内部でのゴタゴタなどがあって鳴りを潜めていましたが、NASCARナンバー1マシンを手にしてすぐさま結果を出していたあたりはさすがでしたね。そのアーンハートJrに負けず劣らず、ジョー・ギブス&カムリの新パッケージのスピードも驚異的でした。『ゲータレード・デュエル』では若手のデニー・ハムリンが優勝。土曜日のネイションワイド・シリーズ(旧ブッシュ)のレースではエースのトニー・スチュワートがアーンハートJrらを抑えてトヨタに同シリーズ通算3勝目をもたらすなどこちらも絶好調で、本番の『デイトナ500』では間違いなく優勝候補の筆頭と召されていました。しかし、結果は前述の通り。ここまでまったく名前さえ挙がっていなかったダッジ勢が、まさか決勝レースであれほどの走りを見せるとは、恐らく現地メディアの誰もが思ってなかったと思います。

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 レース中、ダッジ勢が常に主導権を握っていたかというと、決してそうではありませんでした。大方の予想通り、アーンハートJrとジョー・ギブス勢の激しいバトルが展開され、ビッグアクシデントが起きない限りは、どちらかが優勝するだろうと僕も思っていました。特にカムリのエンジンは素晴らしく、単独ではアーンハートJrのシボレー・インパラをスピードで完全に上回っていましたね。間違いなく“最速マシン”でした。アーンハートJrは終盤にタイヤ交換をしない“不可解な”作戦が最終的に裏目に出て最後のペースアップが出来ず9位に沈んでしまいましたが、ジョー・ギブスの2台、スチュワートとカイル・ブッシュは最終ラップまでトップグループを形成し、間違いなくそのまま押し切るだろうと思われました。しかし……。詳しくは「フォト&レポート」を見ていただければと思いますが、ペンスキーの勝因は間違いなく“チームの勝利優先”を取ったチームワークだったと言えます。

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 ニューマンは優勝記者会見で、「カートとはトラック上でもプライベートでもすごくいいコミュニケーションを取れてきている。それがチームにとってすごくいい結果になった」とコメント。「カートは最後、3ワイドで勝負に出ることもできたけど、あえてそれをしないで僕をサポートしてくれた。本当に感謝している」と優勝の喜びをこう表現していました。ブッシュ自身も「ライアンを助けなければたぶん僕らは優勝できるスピードがあった。それでも、ライアンを助けてチームが1−2を達成できたのは素晴らしい気分だよ」とチームの結果を優先したことになんら後悔はないことを語っていたことが全てを物語っていましたね。単純なクルマのスピードではアーンハートJrやカムリには劣っていたたものの、最後はチーム一丸となって手繰り寄せた優勝だったと言えます。じつは、ニューマンは2004〜2005年ごろ、当時のチームメイトだったベテランのラスティ・ウォレスと確執が生まれ、クルマは確実にスピードがあったもののチャンピオンを獲得できなかったという苦い経験があったんです。もちろん今ではふたりの関係は修復していて、NASCARの放映権を持っている米スポーツ専門チャンネルESPNの解説をしているウォレスとは優勝後に番組内でがっちり握手をしていましたが、そういう苦しい時期を乗り越えての初優勝でした。

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 また、チームの総帥ロジャー・ペンスキーにとっては23回目の挑戦にして念願のデイトナ500初優勝。長年ペンスキーのエースだったウォレスを持ってしても一度も届かなかったこのビッグタイトル。じつは、『デイトナ500』だけではなく、リストリクタープレート・レースでも今回が初優勝ということでした。「我々オープンホイールのチームがNASCARに挑戦するのは本当にタフなことだ。しかし、今日デイトナ500を勝てて、全従業員にとって最良の1日になった」と記者会見で笑顔を見せたロジャー・ペンスキー。インディ500では通算14勝を誇るものの、NASCARではトップチームになりきれなかったペンスキー・レーシングが、今年いよいよタイトルを狙えるほどの体制になったといえるのではないでしょうか。また、同じペンスキーで、今年からフル参戦を開始したサム・ホーニッシュJrの走りも賞賛に値するものでした。序盤は堂々トップ争いを展開し、その後も終始上位で走行。結果は15位でしたが、順位以上に印象的な走りだったと言えます。「サムの走りは本当に素晴らしかったし、大いに驚いた」とロジャー自身が言うとおり、ストックカーのドライビングを急速にマスターしているようです。今後が非常に楽しみです。
 ペンスキーの1−2フィニッシュを含め、ダッジがジョー・ギブス勢の3−4位を除いてトップ8を独占する快挙を達成したの注目に値します。昨年はシボレー&フォードに戦闘力で完全に後れを取りわずか3勝。『チェイス・フォー・ネクステルカップ』にもカート・ブッシュの1台のみと散々なシーズンを送ったダッジですが、今年の『デイトナ500』の結果はダッジ・チャージャーのポテンシャルを十分示した結果となりました。この結果に財布の紐が緩んだか、ダッジの親会社クライスラーが、優勝ボーナスとして100万ドルをニューマン&12号車クルーに送ることをレース後に発表。ニューマンは優勝総額ですでに150万6045ドルを獲得していますが、これにさらにボーナスが加わることになったんですから、もう笑いが止まらないことでしょう。『デイトナ500』中継中の30秒コマーシャルが2008年ベースで約50万ドルだったということですから、その相場を考えても100万ドルではまだ安いほうですかね?

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 50回の記念大会となった今年の『デイトナ500』は、全米の視聴率が去年より1%増の10.2%で、3350万人がテレビ中継を視聴したとのこと。昨年は毎戦視聴率が落ち、完売しないイベントが続いてNASCAR人気の凋落が心配されましたが、今年はそんな話を吹っ飛ばすほどの最高のスタートとなったようです。