観光客の減少、高齢化などによる赤字
小樽GPは倒産寸前の街を救えるのか?
“財政再建団体”という名称を聞いたことがあるだろうか。地方財政再建促進特別措置法に基づき、市町村の赤字額が実質収支比率の20%を超えた場合、総務大臣に申請して指定を受けた自治体のことをいう。いわゆる破産した企業と同じで、会社更生法が適用されるのと同様の意味合いを持つ。
こうなると自治体は国の管理下で財政の建て直しを行わなければならなくなり、市は主体的な自治能力や責任を失うことになる。公的な事業は切り捨てられて市民サービスが低下するのはもちろんのこと、住民税などは標準税率を超えて課税されるようになり、市の職員らは整理された末に給与水準も低下する。市民に強いられる負担は並大抵ではない。
2年連続の赤字予算計上を余儀なくされた小樽市は、現在この危機に瀕している。財政危機がこの状態の収支で移行すると、2007年には累積赤字が収支の20%オーバーとなる62億円を超え、財政再建団体への転落ラインに達するのだ。「つまり倒産です。このままでは、そうなる一番手でしょうな」と小樽の山田勝麿市長は言う。事態は深刻だ。
当然このような状況は事前に予測されていたことで、「2002年に財政緊急対策会議を設け、2004年度に危機的状況が来るということを認識していました」と山田市長。「2004年度からの3年間で年間40億円の財政効果を出す第3次行政改革を計画し、40億円のうち20億円は市の人件費削除、15億円は市民サービスや事業の見直し、残り5億円は収入増で何とか生み出そうというものです。これは、市の職員や市民も痛みを伴う、みんなで痛みを共有しようということです」
実際、それまで70歳以上のお年寄りは無料だった市内バスが有料化され、市の職員の給料も段階的に3年間で7%カットされるなど、様々な取り組みが行われたが、まだ足りなかった。年を追うごとに景気の低迷や少子高齢化、観光客の減少が進んだことで見込んだ税収入が得られなくなり、更なる改革が必要だったのである。
筆者近況
東京で小樽グランプリ推進協議会理事長の木下さんとともに、ファンドなどの資金調達方法に関して専門家からアドバイスを受ける。その翌々日、2週間ごとに行われている定例会に参加するため、小樽へ。観光協会の常務理事である佐々木さんとミーティングし、小樽の観光の歴史や現状を教えていただいた。グランプリが実現できた際、小樽がどのような街になるかを住民に説明して欲しいと依頼される。
(オートスポーツ誌 2006年1月19日号に掲載)