Interview

武藤英紀インタビュー「自分にも優勝できるタイミングがあると思います」(前編)

<US-RACING>

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2007年のインディカー・シリーズ最終戦シカゴ・ランドでデビューを飾った武藤英紀。同年11月には名門アンドレッティ・グリーン・レーシングへの加入が決まり、日本人として初めてトップ・チームで走るチャンスを掴んで2008年シーズンを迎えた。第12戦終了時点で(インタビューを行った当時)、ポイント・ランキング7位、ルーキー・オブ・ザ・イヤー争いではトップを走り、第8戦アイオワでは優勝まであと一歩という2位表彰台を獲得。日本人初の優勝という二文字を感じさせてくれた大物ルーキーの武藤に、デビューからここまでを振り返ってもらった。US-RACINGでは2回にわたって武藤のインタビューをお送りし、その前半はインディカー・ドライバーとなった実感やチームとの関係に迫った。(インタビュアー:川合啓太)

Q:シーズン12戦が終わりましたが、ここまでを振り返ってご自身が想像していたインディカーのレースと違いはありましたか?

武藤英紀(以下:MH):「難しいですね。想像していたとおりと言えば、想像していたとおりですが、もっとできるのではないかという自分もいます。なんとも言えないですね」

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Q:では、インディカー・ドライバーになったという実感をどんなところで感じますか?インディ500では最速ルーキーになって、インディアナポリスの街でも声をかけられるようになったということですが。

MH:「どこのサーキットに行っても、自分の名前を呼んでくれるファンの人数が、昨年に比べると増えたと思いますし、サインを求められることも増えました。あとは、飛行機で隣りの席に座った人が僕に気づいて話しかけてくれましたね。このあいだ遊園地では、絶叫マシンに乗るのを待っていたとき、並んでいた人が気づいたみたいで、恥ずかしい顔はできないと思いながら乗りましたよ。写真撮影がある絶叫スポットでもわざとすました顔をしてみたり(笑)。昨年インディ・プロの頃にはなかったことがありますね」

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Q:日本のファンとアメリカのファンとの違いは感じますか?

MH:「アメリカのファンはちょっと強引ですかね。サインもタイミングが合わないこともあります。トイレから出てくるところを待っているなど、ガンガン来ますよ(笑)。そのようなことが、悪いとは思いませんけどね。それに対して、日本のファンのほうが距離を置いているというか、礼儀正しいです」

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Q:インディ500の翌日にはトニー・カナーンとトレーニングをしたり、リッチモンドのレース後にはアンドレッティ家に招待されたそうですが、プライベートを含めたチームメイトとの関係は、チーム加入当初と比べて変化はありますか?

MH:「チームメイトとはいえ、同じレースを戦っている間柄ですから、あまりべったりとしているのはどうかと思っています。そういう意味では、シーズン前よりもかなり近い存在になりましたが、微妙な距離もそれぞれに保っていることは良いことではないでしょうか。ですが、ドライバーではないマイケルや他のチーム・オーナーとは距離をおかず、特にマイケルとは冗談も言い合えるようになったし、良い関係を築けています。もっと言葉がうまくなれば、さらに関係を深めることが出来ると思うので、その辺が今後の課題です」

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Q:まだ、言葉の壁というのは感じますか?

MH:「そうですね。普通の生活で困ることはもうないですけど、自分の知っている単語だけの会話になってしまうので、『日本語だったらこういう冗談が言えるのに』というもどかしさはあります。もっと自分をさらけ出せるようになれれば良いですね」

Q:ここのところレースが毎週続いていて、レースの合間などに武藤選手なりのリフレッシュの方法はありますか?

MH:「ここまでレースが続いた経験がないので、自分でももっと良いリフレッシュの方法があればと思っています。でも、レースが終わった当日は、翌日遅くまで寝られるので、それがすごく嬉しいですね。中一日、多くても二日もすれば次の開催地へ移動してしまいますから、あまり自分の時間に当てることができず、家に帰れば洗濯などをしなくてはいけないです。移動の楽しみがあれば違うと思うんですけど、その辺がまだまだですね。前のレースのことは引きずっていないですが、やはり疲れは溜まっていきます。レースウィークは睡眠も浅くなって長く眠れないので、睡眠をもっと多くとりたいですよ」
(つづく)
◆この続きは木曜日にアップする予定です。