<US-RACING>
スコット・ディクソンの初優勝で幕を閉じた2008年のインディ500。今年で92回目を迎えた伝統のレースに揃った33台のマシンの中に、ロジャー安川の姿はなかった。日本人最多記録を更新する6回目の決勝出場を目指していた安川は、予選3日目に31番グリッドを確保するも、翌日のバンプ・デイでまさかのバンプ・アウトを喫してしまう。2003年のデビュー以来、フル参戦がない時期にもインディ500だけは挑戦を欠かしていないだけに、今回決勝出場を逃してしまったことは大いに悔やまれた。
失意のバンプ・デイから6日後、インディ500を翌日に控えたインディアナポリス・モーター・スピードウェイにて、US-RACINGはロジャー安川の単独インタビューを行った。参戦にいたるまでの経緯やバンプ・デイの後日談、そして今後の活動について安川から率直に語ってもらった。
Q:インディ・ジャパンの出場が決まった際、すでにインディ500へ向けた活動を行っていると言っていましたが、なぜ参戦の発表がここまで遅れてしまったのでしょうか?
ロジャー安川(以下:RY):「かなり以前からhhグレッグという家電屋さんのスポンサーが決まっていたのですが、それだけではフル・マンス戦うだけの資金を満たせませんでした。そこで他のスポンサーとも色々交渉していたんですけど、アメリカも景気が良くないので話がなかなか進まなかったわけです。チームはフル・マンスで戦いたいという意向があったので、フル・マンス戦えるだけのスポンサーを持ってくるドライバーを乗せるか、チーム自体にスポンサーが付けば乗れるという状況でした。
チームもスポンサーへの営業活動がうまくいかないなか、実はルーキー・オリエンテーションの二日目からフランク・ペレラが走る契約がまとまってしまいました。ですが、スポンサーからお金が送金されたのはルーキー・オリエンテーションが終わった後だったため、ペレラが乗ることはなく、送金されたお金をそっくり送り返すことになったのです。
その時点で他に空いていたシートが、ベックかフォイト、あとはアメリカン・ドリームのパノスでした。そう考えるとインディ・ジャパンで走ったベックが一番良いと思い、ベックだけに集中して交渉してきたんですが、そうこうしているうちに1週間目が終わってしまい、2週間目に入ってもぎりぎりになってしまったわけです。
オーナーのグレッグ(ベック)自身は、2週間目から始めるにしてもスポンサーを多く持ってきてくれるドライバーにしたいという意向がありました。自分が昨年のスポンサー経由で持ち込んだ家電屋さん(hhグレッグ)のスポンサーというのも、正直セカンド・ウィークのフル予算ではなかったので、結局水曜までにフル予算を持ってくるドライバーか、そうでなければ賞金を何%引いてという交渉を月曜日と火曜日に色々していたんです。話はほぼ決まっていたわけですが、賞金はかなり妥協しましたね」
Q:hhグレッグという家電屋さんは安川さんが自分で持ってきたスポンサーなんですか?
RY:「もともとは昨年僕をスポンサーしてくれた、いわゆるホームビルダーの紹介でした。その人はホームビルダーでマーケティングのことは良くわからないということで、彼のマーケティングを担当しているところに依頼してパートナーシップを組み、営業して獲得したんです。ホームビルダーのやっている、あるプロジェクトのスポンサーをするという一環で、そのパッケージの一つにレースを入れました。昨年の7月か8月から交渉を始めたので、けっこう時間はかかりましたね。でも、額はともあれ、やっとアメリカでちゃんとした企業のスポンサーを取れたということは自信を持って言えることです」
Q:昨年の7月からというと、インディ500が終わった後すぐに行動していたというわけですね?
RY:「そうですね。終わった時点で話を始めて、やっと8月くらいにアポイントメントが取れました。9月か10月にはインディアナポリスに来てミーティングをしていたという感じです。2月、3月の時点で話は決まっていたんですが、やはり予算に限りがあり、それではフル・マンスを戦えないですから、ここ以外にもスポンサーを探していました。インディ・ジャパンでスポンサーしてくれていたところが相乗りしてくれるだろうと思っていたところ、そちらのほうの話がなかなか進まなくて、結局家電屋さんのスポンサーだけで交渉しなくてはいけない状況になりました」
Q:最初の話ではインディ・ジャパンでスポンサードした企業がそのまま継続するはずでしたよね?
RY:「約束ではなかったんですね。もてぎで大々的にスポンサーしてくれたので、インディ500もスポンサードしてくれればいいなとは思っていましたが・・・・」
Q:そういう意味では、過去の5年間に比べて今年はいちばん大変な年になりましたか?
RY:「そうですね。毎年徐々に大変になってきている気がしますけど。ただ、景気が悪くなっているのに、スポンサーを獲得できたという部分でいうと、ある意味良かったほうだと思います。シリーズが合併したことによってシートにも限りがあり、なおかつそれなりの予算を持っていかないと話が決められないという方向へシリーズ自体がレベルアップしているので、出場するのは難しいですよね。シリーズのコンペティション・レベルがすごく上っているのに、景気は良くない。スポンサーでみんなが潤っているかといえば、そうではないじゃないですか。そういう部分でスポンサーの獲得は大変ですし、スポンサーが見つからないで1周も走らないまま帰ってしまったベテラン・ドライバーもいました。そう考えると、マシンに乗れたことはラッキーといえばラッキーだったと思いますね」
Q:シリーズのレベルが上ったということをどのあたりで感じましたか?
RY「まず、出場台数が増えたという時点でレベルが上ったと感じます。いつもだったら、2週目になってフルグリッドの33台まで2