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全日本選手権フォーミュラ・ニッポン 最終戦 鈴鹿【予選日】フォト&レポート

<US-RACING>

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2004年のIRL王者トニー・カナーンが、電撃参戦することになったフォーミュラ・ニッポン最終戦、鈴鹿サーキット。カナーンにとっては初めて乗るマシンに、初めて走るコースという不利な条件ばかりが揃っているが、木曜日の初走行からコースレコードの2.5秒落ちとなる1分43秒6を記録し、なかなかの立ち上がりを見せ、周囲を驚かせる。「自分の実力を示すために挑戦するのではなく、このシリーズを体験するためにきたんだ」と、カナーンは語っているが、初日からIRL王者が話題を集めていた。

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迎えた土曜日の予選、カナーンのピットにはHPD社長のロバート・クラーク、来年からカナーンのチームメイトになり、今回カナーンのドライバー・コーチを務める武藤英紀や、今年IRLでライバルとして戦った松浦孝亮などがカナーンを激励に訪れ、予選の走りを見守った。11時15分に公式予選1回目が始まると、一番乗りでコースに飛び出していくカナーン。1周目から1分42秒台の大台にのせ、順調に周回を重ねていく。この予選で誰よりも多い12周を走りこんだカナーンは、3周目に出した1分42秒846がベスト・タイムとなり、13番手で予選を終えた。何もかもが始めてだということを考えれば、上々の出来とも思えるが、理想のマシン・セットアップから程遠いのかマシンから降りてきたカナーンの表情は硬い。身振り手振りを交え、熱心にチームとミーティングを重ねる姿は印象的だった。

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午後の予選では、午前のタイムをコンマ4秒以上更新する1分42秒403をマークしたカナーン。しかし、歴戦のフォーミュラ・ニッポン・ドライバーは、カナーンをさらに上回るスピードを見せ、コースレコードを上回る1分40台をたたき出したため、結局カナーンは18位で予選を終えることになった。「1回目の予選と2回目の予選前半はよかったけど、後半にニュータイヤを履いたときに渋滞につかまって、タイミングが合わなかった。12位が目標だったのに、18位になってしまったね。でも、インディで知ってのとおり、僕はスタートが得意だから4つか5つはポジションを上げられるはずさ。相変わらず難しくて、まだまだ学習中なんだ。フォーミュラ・ニッポンのドライバーの皆さんや、JRPの皆さんにはとても感謝している。日本に来てからはずっと楽しい時間をすごしているよ」と、予選とは対照的に明るい表情で語るカナーン。彼自身、何か奇跡を起こすことはないと断言しているが、IRL王者のカナーンが18番手からフォーミュラ・ニッポンのドライバーを追い回す姿を見たい。

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トップ4人がそれまでのコース・レコードを更新して1分40台に入れる熾烈なタイムアタック合戦を制したのは、PIAAナカジマの小暮卓史だった。午前の予選で5番手タイムにとどまっていた小暮だが、午後の予選では見違えるような速さを見せ、予選終盤に1分40秒台をマーク。さらに最終ラップにはポール・ポジションを決定付ける1分40秒510まで、タイムを縮め、今シーズン4回目のポールを獲得した。2位にはチームメイトのロイック・デュバルがつけ、PIAAナカジマがフロントローを独占。現在ポイント・ランキング2位につけている小暮は、逆転タイトルに向け大きな一手を打つことになった。小暮とタイトルを争い、現在ランキング・トップを走るモバイルキャスト・チーム・インパルのブノア・トレルイエは4位、小暮と同ポイント2位で並ぶ、同じくチーム・インパルの松田次生は11位と出遅れ、明日のレースでの巻き返しが期待される。シーズン最終戦までもつれたタイトルが、誰の手に輝くはまったく予断を許さない状況だ。

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金曜日はクルーとのコミュニケーションが不足して苦戦していたというカナーン。その助けとなったのが、カナーンのとなりにピットを構えるPIAAナカジマの中嶋悟監督だったという。今日の予選でも中嶋監督とマシンについてピットで話し合う場面も見られ、「PIAAナカジマにはほんとうに感謝している」とカナーンは語っていた。来年からチームメイトとなり、昨年フォーミュラ・ニッポンの経験がある武藤英紀も、カナーンの大きな助けとなっているという。「英紀さんははじめから僕についてくれているんだ。これまで見かけたことはあったけど、話す機会がなかったから、今回は良い機会だと思うね。カーナンバーは来年の英紀さんがインディでつけるナンバーだから、彼にプレッシャーを与えるためにこの番号を選んだのさ。明日のレースでも英紀さんが無線で話してくれるから、僕の文句をチームに通訳してくれるはずだよ(笑)」と、カナーンは冗談を交えて話していた。

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快晴の鈴鹿サーキット。気温は15度とやや肌寒く、グランド・スタンドには厚手のコートを着込んだ人もいたが、終日天候はよかった。メイン・イベントのフォーミュラ・ニッポンのほかにも、朝からF4、インテグラカップ、FCJと多くのサポートカテゴリーが行われ、コースには絶え間なくマシンが走っている。午後からはF4とFCJの第1レースが行われ、ステップ・アップを狙う新進気鋭の若手ドライバーたちが、熱いレースを繰り広げていた。

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ピット裏に回るとカーチス・コンドウ・レーシングのキャンギャルを囲んで写真撮影会が行われていた。アメリカのレースにもキャンペーン・ギャルはいるが、チームがそれぞれ独自にキャンギャルを抱えているのは珍しく、キャンギャルを写真するために大勢の人が群がるのも日本独特の光景。かわいいキャンギャルとそれを撮影するカメラマンを見ると、日本のレースに来たということを改めて感じさせる。ちなみに、奥にいる女性陣は、コンドウ・レーシングの“マッチ”こと近藤真彦監督を、一目見ようとピット裏で待っている人たち。芸能人とチーム監督という二足のわらじをはく近藤監督は、サーキットでも人気を集めていた。