ダブルヘッダーの最初、第6戦デトロイトは土曜日に行われました。インディ500の時と同様、前日までの降水確率は80%以上だったのですが、最後までもってくれてよかったですね。奥に見える一番高いビルはGMの本社で、今回のレース名は「シボレー・インディ・デュアル・イン・デトロイト」。ポール・ポジションのダリオ・フランキッティがエンジン交換ペナルティで11番手スタートとなったため、シボレーのEJビソがポールの位置からのスタートとなりました。
レースは予定どおり3時43分にエンジン・コマンドがあり、その後全車がいっせいにスタート。ターン1へ真っ先に飛び込んだのは、フロントローからスタートしたマイク・コンウェイです。朝に行われた第7戦(日曜日)の予選で初めてのポール・ポジションを獲得したコンウェイは、ブラック・タイヤで快調にリードを拡大していきます。
最初のスティントを終えて一時ライアン・ハンター-レイが先行するものの、レッド・タイヤのハンター-レイはペースを上げることができず、ブラックを履くコンウェイが44周目のターン3でパス。50周目の時点で20.6675秒もの差を築いたコンウェイは、53周目に最後のピットに入ります。この週末、ほとんどのドライバーが手を焼いていたレッド・タイヤを最後に履いたコンウェイは、残り10周の時点でもハンター-レイに19.3672秒差をキープ。後半はイエローが発生しなかったこともあり、最後は12.9707秒もの大差をつけてゴールしました。
「この週末、クルマは素晴らしかったよ。コースもタイヤのラバーが乗ってどんどん良くなっていった」とレース後に語ったコンウェイ。「(ハンター-レイとの)ギャップを維持するためにプッシュし続け、最後になって作戦は完璧に働いた。素晴らしい気分だね。この週末のレッドは最初の数周はいいけど、すぐに落ち込むんだ。最初にブラックで差を広げ、最後にレッドを履く作戦を考えたジョン・ディック(エンジニア)は素晴らしい。レースがグリーンのままであれば、たぶんいけそうだってね。レッドにした最後のスティントでは差が縮んだけど、しっかりと管理してタイヤを残しておいたから、最後にもう一度プッシュした。クラッシュしたライアン(ブリスコー)を見て『あ、やばい、セーフティカーが出る』って思ったけど、タイヤは十分だったよ」
レギュラー・シートを失ったコンウェイにとって、今回はロング・ビーチに続く今季2戦目のレースでした。火曜日に連絡があり、急遽参戦が決まったそうです。「インディ500はイギリスの家で最初の10周を見たあと、お父さんの野菜畑を手伝って、のんびりした日曜日だった。最後の60周は見たよ、友人たちの活躍はほんとうにエキサイティングだった。月曜になり、火曜のランチタイムにデイル(コイン)から電話がマーク(ブランデル=マネージャー)にあったんだ。今週末乗れないかって。すごいよね」
開幕から5戦の契約だったアナ・ベアトリスの代わりとして、コンウェイを起用したコインにとって、まさに完璧な土曜日だったと言えるでしょう。コンウェイは朝の予選でチームにとって初めてのポールポジション(第7戦)を獲得しただけでなく、今季初優勝、通算3勝目も挙げたのです。「朝から感動してるよ。今までポールはなかったし、ファステストや最多リードを記録して彼は勝っただけでなく、チームの2台がトップ3で表彰台に載ったのもほんとうにすごいことだ。我々のエンジニアは一生懸命やってきたし、とてもうれしいよ」
2位は4番グリッドからスタートしたハンター-レイで、第2スティントでレッドをチョイスしたことで明暗が分かれました。「他のドライバーもそうだけど、この週末はレッド・タイヤに苦労したよね。雨が降ったりやんだりでラバーが残らず、グリップが変化していた。スタートした時はモトクロス・コースのようで、バランスがどんどん変わり、トップを維持しているのは楽しかったよ。レッドで差を維持しようとしたけど、十分じゃなかった。マイク(コンウェイ)のパスはきれいに決まったよ(笑)。彼とデイル・コインチームを祝福する」とハンター-レイ。
3位表彰台には16番手スタートだったコインのレギュラー・ドライバー、ジャスティン・ウィルソンが入りました。インディ500同様、今回も素晴らしい追い上げです。「すべてはプランどおりにいったね。最後の数周はスコット(ディクソン)のプレッシャーが激しかったけど、全体的には楽しかったよ。デイルのクルマがこうして2台とも表彰台にいるのは素晴らしいし、マイク(コンウェイ)もすごい。5日前はドライブするなんて思っていなかった彼が勝った。彼のカムバックはほんとうにうれしいよ」
表彰台の3人以外に、今回注目したいのはスコット・ディクソンです。昨年ポールトゥウィンを決めた彼は今回15番手からスタートしたのですが、後ろからAJオールメンディンガーに追突されてマシンにダメージを追い、度々ピットを繰り返して修復。最後尾から追い上げての4位は立派です。
ロングビーチで優勝、サンパウロで2位と市街地コースで2戦連続表彰台を獲得していた佐藤琢磨。7番手スタートとなった今回、一時9番手まで順位を落としたものの、最初のピットまでに6番手まで追い上げていました。
クルーがピットで準備し、琢磨が入ってくるのを待ち構えていましたが、まさかの燃料切れによってターン3でストップ。オフィシャルに牽引されてピットへと戻り、燃料を補給して再スタートしたのですが、2周遅れとなってしまいます。
最後尾からの追い上げとなった琢磨でしたが、翌日のレースのためにも完走してデータをとるべく、最後まで走りきって19位フィニッシュ。11ポイントを獲得し、ランキングは4位となりました。
「燃料の計算に誤差が出て、燃料ぎれになってしまいました」とその時の状況を語った琢磨。「朝に日曜日に向けた予選があって、非常にバランスが悪く、グリップがなくて、ほぼ最後尾でした。クルマを大きく変える必要があったのですが、なにもできないままレースを迎えたところ、レースでは徐々にラバーも載って調子がよくなり、トップ6まで入っていい状況になってきました。ほんとうに残念でしたが、次のレースのためにも完走してデータをとることができたので良かったです」
●第6戦決勝リザルト
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