INDY CAR

第96回インディ500レポート、リザルト、ハイライト映像

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最終ラップのターン1のイン側に飛び込んでスピンした佐藤琢磨をぎりぎりで回避し、3度目のインディ500制覇を成し遂げたD.フランキッティ。3勝以上を記録したドライバーとしては10番目、9レースで3勝目を挙げたのはH.カストロネベスに次ぐ3人目です。
 

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ウェルドン愛用の白いサングラスで表彰台に立ち、空を見上げ「この勝利をダン・ウェルドンとマイケル・ワンサーに捧げる」と声を震わせたフランキッティ。ワンサーはチームマネージャーの息子で、白血病により6歳で永眠。ウェルドンの死から一週間後のことでした。
 

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フランキッティは15周目の最初のピットでEJビソに追突されてスピンし、30番手から怒涛の追い上げを披露。そして運命の最終ラップ、ターン1でインに飛び込んだ琢磨を前に出したくなかった彼は、決して安全とは言えないスペースしか琢磨に与えませんでした。
 

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それは自分自身もクラッシュする可能性が高い、とても危険な行為でしたが、これこそがフランキッティのスタイルとも言えます。後ろで見ていたT.カナーンは「琢磨はしかけるまでに少し待ち過ぎた。ダリオにはあれじゃ通じないし、琢磨はもっと彼を知るべきだ」
 

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昨年のチームメートはさらにこう付け加えます。「若いドライバーのミスだったと思うし、彼はたまにやってしまうよね。でもラスト・ラップだったし、これが現実だ。彼はトライした。僕はやってないから言うのは簡単だ」と、どちら側にも取れる発言です。
 

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レース前はランキング10位と、かつてないほど不振に喘いでいた3年連続チャンピオン。どうしても勝ちたかったフランキッティは、最大のリスクをとりました。今日の琢磨の走りを見ていた彼は絶対に来ると確信し、スポッターからも琢磨の接近を知らされていたはず。
 

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表彰台で「ダン、僕を守ってくれてありがとう」と、フランキッティはウェルドンに感謝しているようにも見えました。表彰台で流した涙に誰もが感動しましたが、一歩間違えばとても危険なアクシデントにつながったことも、我々は忘れるわけにはいかないでしょう。
 

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一方、カナーンが言うように、琢磨自身も己のスタイルを貫いたと言えます。多くのファンは次のターン3でも良かったのではないかと思っているかもしれませんが、「風向きが悪かったので、ターン1でいくしかなかった」と琢磨は語っています。
 

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「バックストレートが追い風になるような風向きで、1コーナーから2コーナーに入って前にぴったりくっつくのはほとんど不可能です。向かい風のメインストレートよりも、バックストレートはスリップストリームが効かず、3コーナーでのパスほぼ無理でした」と琢磨。
 

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「一度抜くって決めてアクションを起こしたら、後には引けない」のがオーバルで、お互いを尊重しあうからこそ成り立つレースです。DW12採用によって新記録が生まれるほどトップが入れ替わった今回、スリップに入られたフランキッティは、しかし譲れなかった…
 

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「ターンに入る前に並びかけていたので、勝ちを確信し、絶対に獲ったと思っていたんですけど。あと半車身でもスペースを残してくれれば…」と悔しさをにじませる琢磨。今日は勝てると確信していた彼にとって、2位は有り得なかった。行くしかなかったのです。
 

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メディカルチェック後にガレージへと戻った琢磨に、ファンは口々に「お前こそ今日の真のウィナーだ」と声をかけていました。結果には残せませんでしたが、彼は勝てるドライバーであることを証明。その瞬間は、もはや時間の問題でしかなくなったということです。
 

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チップ・ガナッシ・レーシングのフランキッティとS.ディクソンのチームメートがワンツーとなったのは、03年ペンスキーのG.ド・フェランとカストロネベス以来。ガナッシにとっては5度目のインディ500制覇で、オーナーとしては15勝のペンスキーに次ぐ記録です。
 

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101年目の今年誕生した新記録は34回のトップ交代で、それまでは60年の29回が最高でした。トップを走行したドライバーは10人となり、史上2番目(最多は93年の13人)。DW12はオーバーテークしやすいことから生まれた結果と言えそうです。

 
●公式リザルト

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●ハイライト映像