INDY CAR

第94回インディ500で撮影されたベスト・ショットです!!!

今年の“Month of May”は期間が短くなったので、あっという間に終ったような気がします。昨年はこのインディアナポリスに約18日間滞在しましたが、今年は約12日間でしたからね。6日間の差は大きいですよ。
 
とはいえ、ドライバーやチームにとっては例年より走行回数が少なくなったので、予選、決勝に向けたセッティングを煮詰める時間が減ってしまい、毎日が大忙しだったはず。そこへ雨の影響も出てきたりして、何度もプログラムの変更を余儀なくされたのですから大変です。
 
ともあれ、条件はみな一緒といった中、終ってみればダリオ・フランキッティがレースを支配し、自身2度目の優勝を飾りました。見ていて勢いのあったエリオ・カストロネベスが、ポール・トゥ・ウインで4勝目を達成するんじゃないかって思っていたのですが、僕が想像した筋書き通りにはいきませんでしたよ。
 
それは、残念ながら日本人ドライバーの結果に関してもそうでした。武藤英紀はカーブ・デイの最終プラクティスで仕上がったマシンに満足していましたが、レース・デイの気温上昇により、レースで争うことができない不安定なクルマになっていたようです。好調を維持できなかった彼は、本当に悔しそうでした。
 
佐藤琢磨はピット・ストップのトラブルで周回遅れとなってしまいました。残念な結果ですけど、吸収力の早い彼は完走することで多くのことをこのインディ500で学んだと思います。それが今後のオーバルのレースに、生かされるのは間違いないでしょう。
 

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インディ500といえば、やはりウイナーがビクトリー・レーンにマシンと一緒にやってきて、ミルクを飲むのがお決まりのシーンとなっています。このミルクを飲むためにドライバーやチームががんばっているといっても過言ではありませんよ。
 
でもね、3時間以上も走行して喉がカラカラという状況でミルクを飲むのって、ちょっとつらそうです。ミルクが嫌いなドライバーには地獄ですよね。毎年このシーンを撮影していますが、ほんとうは勢いでぐぐーといきたいところでも、最後までうまそうに飲み干したドライバーは少なかったような気がします。
 
昨年、3回目の優勝を果たしたエリオ・カストロネベスなんかはね、あまりミルクは好きじゃないのか、それとも3回目だったせいか、ちょろちょろっと飲んで後は瓶ごと振り回して中身を撒き散らし、はい終了! って感じでした。シャッターチャンスが少なくって焦ったのを覚えているんですが、彼は前におなかを壊したことでもあるんでしょうかね?
 
このミルクのいっき飲みだけは、何があって絶対に撮らなければならないので、僕らは表彰式を撮影するお立ち台の指定された場所に、レース終了後は必ず居なければなりません。そこは決められたメディアしか入ることができない場所で、毎年同じ撮影スポットが与えられているんです。
 
アメリカは歴史の浅い国なので、100年も続く伝統行事ってそれほどありません。その中で、クルマのレースがこれだけ続いているのは世界中でもインディ500だけということもあり、伝統というかしきたりを重んじる傾向が強いです。
 
予選で1台ずつのタイム・アタック終了後には、必ずクルマと一緒にチームの集合写真を撮影し、ポールデイ翌日にはフロントロー3台の記念撮影、そして決勝翌日には優勝者の記念撮影と、多くのお決まり撮影会があります。他にもこの期間中にはいろいろな行事があるんですよ。
 
話はビクトリー・レーンに戻りますが、この表彰式の撮影そのものも伝統にしてしまおうとしているのか、あなたの場所はここですよと毎回決められています。そして、毎年同じ場所から、同じアングルでミルクを飲むウイナーの姿を撮影するわけです。
 
今年も無事、“25”と書かれたシールが貼ってある場所から、ウイナーが飲むミルクのシーンを、いつもと同じアングルで撮影することができました。僕もカメラマンとして、これからも毎年その伝統のひとつに加わり、歴史を記録して日本のインディ・ファンに伝えていけるよう、がんばっていきたいと思う今年のインディ500でした。
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 70-200mm f/2.8 IS USM
撮影モード: マニュアル露出
シャッタースピード: 1/250
絞り値: F9.0
測光方式: 部分測光
ISO感度: 100
焦点距離: 100.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
 

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佐藤琢磨にとって初めてのインディ500は、プラクティスまで順調だったものの、ポールデイに行われた午前のプラクティスで、まさかのクラッシュを喫してしまいました。結局、ポールデイにタイムアタックができず、バンプデイでなんとか予選を通過。そして初の500マイル・レースではピット・ストップでのトラブルなどもありましたが、無事完走を果たしました。
 
振り返れば、何もトラブル無くこの“Mouth of May”が終了するより(もちろん、それで上位フィニッシュするのに越したことはないのでしょうが)様々な経験を積むのも大切なことで、このインディ500は貴重なデビューになったと思います。それが来年以降のインディ500で必ず生かされるでしょう。そういった意味では、みんなの記憶に残るインディ500初参戦だったような気がします。
 
今回、琢磨がインディ500でレースをした証を残そうと思い、レース中にメイン・ストレート・エンド外側のコンクリート・ウォールに描かれた、インディアナポリス・モーター・スピードウエイのマークを入れ込んだ写真を撮影しました。
 
時速約380キロで通過するマシンと、そのマークを理想的な位置でタイミングよく撮影するのは、ちょっと大変です。シャッター・スピードを速くしてマークをはっきり写したくなりがちなんですが、それではね、スピード感が損なわれてしまうんですよ。それで640分の1という高速シャッターで撮影するんですけど、それでもこれくらい背景が流れてしまいます。
 
ともあれ、みなさんの記憶に残った琢磨のインディ500初参戦を、こうして写真でもばっちり記録できて良かったです。
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 70-200mm f/2.8 IS USM
撮影モード: マニュアル露出
シャッタースピード: 1/640
絞り値: F6.3
測光方式: 評価測光
ISO感度: 100
焦点距離: 100.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
 
Photo & Text by Hiroyuki Saito
 
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