<Honda>
開催地:アラバマ州バーミンガム
会場:バーバー・モータースポーツ・パーク(全長2.38マイル)
天候:曇りときどき晴れ
気温:-1〜8℃
IZODインディカー・シリーズは、2010年シーズン開幕を目前に控えて、アメリカ南部、アラバマ州バーミンガム郊外にある全長2.38マイル、17個のコーナーを持つテクニカルなコース、バーバー・モータースポーツ・パークで合同テストを開催した。
2日間のテストの2日目だった2月25日は、前日以上に気温、路面温度ともに低く、走行開始を正午まで待たねばならなかった。その上、開始間もなくディフェンディングチャンピオンのダリオ・フランキッティ(Target Chip Ganassi Racing)がターン12でアクシデントを起こしたため、タイヤバリアの設置など安全確保のために1時間強にわたってイエローフラッグが出された。かくして予定よりも走行時間が短縮されたものの、テストに集まった11チーム、21人のドライバーたちはシーズンスタートに向けてのウオームアップを入念に行った。
走行2日目のトップに立ったのは、ウィル・パワー(Team Penske)だった。出走者中でただ一人1分10秒の壁を破り、1分09秒8724=平均時速118.502マイルを記録。このラップは2日間のテストにおける最速となった。パワーは昨年の同コースでの合同テストでもトップタイムを出した実績を持っている。
2番手タイムをマークしたのはエリオ・カストロネベス(Team Penske)。彼のベストである1分10秒0084=平均時速118.272マイルは、走行1日目の自己ベストを0.7秒縮めるものだったが、パワーに0.136秒届かず2日連続で2番手に甘んじた。
3番手は1日目トップだったライアン・ブリスコー(Team Penske)。なんと、Team Penskeが3人のドライバーによってタイムチャートのトップ3が占められたのだ。ブリスコーのベストは1分10秒0459=平均時速118.208マイルだった。
ペンスキートリオに次ぐ、4番手でテストを終えたのは、1分10秒0594=平均時速118.185マイルがベストだったスコット・ディクソン(Target Chip Ganassi Racing)。トップのパワーとは0.187秒の差があったが、3番手のブリスコーとは、0.0135秒とほとんど差は無いに等しかった。2日連続のトップ5入りはさすがであった。なお、フランキッティはアクシデントのため3周しか走れず、開幕戦に向けての準備を十分に行えないままテストを終えざるを得なかった。
前日、Team Penskeのトップ3独占を阻止した、ジャスティン・ウィルソン(Dreyer & Reinbolod Racing)は、1分10秒0869=平均時速118.139マイルでトップ5入りを果たした。今年がインディカー2年目となるウィルソンのチームメートのマイク・コンウェイは、1分10秒2497=平均時速117.865マイルのベストを出して7番手に食い込み、同チームはシーズン開幕に向けて例年以上の仕上がりを見せている。
武藤英紀(Newman/Haas/Lanigan Racing)は48ラップを走り、1分10秒4451=平均時速117.538マイルのベストを22周目に記録。走行2日目は9位にランキングされた。ポジションは前日と比べて1つだけのアップだが、ラップタイムは一気に0.7761秒短縮しており、マシンのセットアップで大きな進歩があったことを示していた。マシンから感じられるチームの能力、チームのモチベーションの高さは、武藤を大いに刺激している様子だ。
KV Racing Technologyからインディカー・シリーズに今年初めてエントリーする佐藤琢磨は、走行初日の前日も7番手とまずまずのパフォーマンスだったが、2日目には1分10秒2070=平均時速117.937マイルで6番手に入り、実力の高さをアピールした。チームメートたちは、同じくルーキーのジェームズ・ロシターが11番手、EJ.ヴィソは15番手とラップタイムは今ひとつだったが、佐藤は71周と2日連続で最多のラップ数をこなし、マシン、チームともに好感触を得られたことを喜んでいた。
力を持ったルーキーたちの参戦もあり、2010年シーズンのIZODインディカー・シリーズは昨年まで以上に実力伯仲の激戦が繰り広げられることとなりそうだ。それは、前日ブリスコーが記録したベストタイム1分10秒5052を、2日目に9人のドライバーたちが上回ったこと、各順位のラップタイムが接近していたことが表している通りだ。トップからコンマ5秒以内に7人がひしめき、14人がトップから1秒以内のラップを刻んだのだ。集ったチームはどこもマシンのセッティングを向上させることに成功し、今回得られた多くのデータによってブラジルでの開幕戦(3月14日決勝)、そして、シーズン序盤のロードレース4連戦に臨むこととなった。
ウィル・パワー(Team Penske)
「2日間で多くのセッティングを試し、今日の走行時間終盤には純粋にスピードを追及してのセッティング変更を重ねた。その結果、とてもいいセッティングを発見することができた。今シーズンの競争はかつてないほどに激しくなりそうだ。すばらしいドライバーたちが集って来ているし、多くのチームが実力アップを成し遂げている。今年は念願叶ってベストチームからフルシーズンの出場を果たす。チームの実力からして、私はタイトル・コンテンダーであらねばならない。スタッフにも恵まれているし、自分がチャンピオン争いができると信じている」
エリオ・カストロネベス(Team Penske)
「自分にとって、そして、チームにとっても成果の大きいテストにできた。今回のテストの目的の1つとして、いいリズムをつかむということがあったが、それは十分に果たせたと感じている。また、第2戦のセント・ピーターズバーグや、ここでの第3戦で役立つであろう発見があったこともうれしい。Team Penskeは今年も最高の力を維持している。それがトップ3ポジションの独占で証明された。テストと同じようにシーズンも席巻したい」
武藤英紀(Newman/Haas/Lanigan Racing)
「昨日に続いて今日もいいテストができたと思う。午後の2時半にセッティングを変更したが、それがすごくよかった。本当に大きな、そしていいセッティング変更になった。レースエンジニアのマーティン・パレ、そしてチームが私のドライビングスタイルをより一層深く理解してくれ、マシンを用意してくれている。また、自分もチームとどのように働いていくのがベストなのかがわかってきた。ドライバーとしての信頼も獲得できたと考えている。ブラジルでの開幕戦は、ストリートなのでトラクションが重要になってくる。チームがそういうコースに自信を持っていることもあり、自分も開幕戦が楽しみになってきている」
佐藤琢磨(KV Racing Technology)
「今日の天候を考えると、KV Racing Technologyにとって、とても意義のある一日となった。今朝も本当に寒く、走ることができなかったほどだった。インディカーで走り出したばかりの自分としては、できるだけ多くの走行時間が欲しいところだった。しかし、一旦、気温と路面温度が上昇してからは、コンディションはよくなっていった。今日も私は、マシンがセッティング変更に対していかなる反応を示すのかを学び続け、ブラジルでの最初のレースに向けていい準備ができたと思う。マシンが完ぺきになるなどありえないし、私自身がマシンに対して満足をするということもない。今回の2日間のテストで、私はインディカーというマシンのハンドリングがどのようなものかフィーリングをつかめたと思う。あと2週間ほどで行われるレースがとても楽しみだ」
ジャック・スパーニー(HPD ジェネラル・マネジャー)
「今回の2日間のテストにより、IZODインディカ・シリーズは2010年シーズンに向けてのすばらしいスタートを切った。バーバー・モータースポーツ・パークという美しいサーキットにドライバーたちが集結し、開幕に向けて走行を重ねた。テストは2日間とも寒さという難しいコンディションに見舞われたが、全チームが多くの周回数をこなし、来月中旬にブラジルのサンパウロで行われる開幕戦に向けての準備を整えていた。そして、このバーバー・モータースポーツ・パークでは、4月に初めてのインディカー・レースが行われる。そちらも大いに楽しみである」