<US-RACING>
2009年シーズン最後のナイト・レース、第15戦シカゴランドをフォト・フィニッシュで勝ち抜いたのは、ライアン・ブリスコーでした。終盤にリードしていたスコット・ディクソンのアウト側に並び、最終ラップに最後のプッシュ・トゥ・パスを使ってトップへ。わずか0.0077秒の差で、今季3勝目をマークしたのです。「これからのレースもフォーカスしなければいけないね。もてぎとホームステッドで、あのターゲットの2台は絶対に狙ってくるから、まだ終わっていないよ。シーズン中は1.5マイルのオーバルでずっとクルマが良かったから、その勢いを保てばいけると思う。今日はいくつかのミスがあったけど、最後にまとめることができた」とキャリア初のポール・トゥ・ウィンを飾ったブリスコー。このフィニッシュはインディカー・シリーズ史上4番目となる僅差。シリーズ・ランキング・トップのブリスコーは、ランキング2位のフランキッティとの差を、25ポイントまで広げることに成功しました。
ランキング3位のスコット・ディクソンは、ここシカゴランドでなんと4年連続の2位フィニッシュとなりました。ディクソンは161周目にトップに躍進。191周目のリスタート後の9周の間に、ブリスコーと4回もトップが入れ替わりました。ホンダ・ボタンが17回分残っていたディクソンにアドバンテージがあったかと思われたものの、199周目にブリスコーのノーズがほんのわずか先にフィニッシュ・ラインへ。「もう何回も見たことがあるシーンだね。残念だけど、シカゴではずっと2位フィニッシュばかりしている。今日もずっと良い走りをしていたし、クルーがすごくがんばった。ピットも完璧だったよ。前に出たことが何回かあったけど、後続を離すスピードはなかった。去年は1.5マイルで有利だったものの、今年はなくなってきたね。ペンスキーに追いつかなければまずいと思う。とにかく、ライアン・ブリスコーはよくがんばった」と少しフラストレーションを見せたディクソン。ブリスコーとの差を距離にすると、わずか72cmでしたよ。シーズン8回目の表彰台フィニッシュを果たしたディクソンですが、シリーズ・ランキングは変わらず3位。果たしてトップのブリスコーとの33ポイント差を、もてぎとホームステッドで取り戻せるのでしょうか?
3位に入ったのはKVレーシング・テクノロジーのルーキー、マリオ・モラエスでした。最後のグリーン・フラッグで先頭の12台が一団となり、多くのポジションが入れ替わっていく中で、モラエスは198周目に6番手から3番手に浮上。トップのブリスコーからわずか0.0609秒差でキャリア初の表彰台フィニッシュを成し遂げたのです。「最高だよ。メカニックが素晴らしい仕事をしてくれたし、ピットも完璧だった。この結果のためにチームとともに一生懸命がんばってきたんだ。この3位はほんとうに嬉しい」と大喜びのモラエス。。記者会見では亡くなったばかりの父親の話になり、少し声を詰まらせるシーンもありました。第14戦インフィニオンの4位フィニッシュに続いて、絶好調ですね。
予選13位からスタートした武藤英紀は、上位勢の集団にくらいつく走りを披露。燃費をセーブした走りでカナーンやアンドレッティよりも1周多い46周目に、10位までポジションを上げてピット・インしました。しかしピット作業が終了する少し前にクルーがジャッキ操作を誤り、クルマが降りてしまうアクシデントが発生。これで15番手まで交替した武藤は、燃費に気をつけながら終盤にかけていたのですが、レースの折り返しを迎えようとしていた92周目、ターン3への進入時に右後ろのサスペンションが壊れてしまったのです。これでコントロールを失った武藤は壁に激突したものの、幸い体へのダメージはほとんどありませんでした。不運のマシントラブルに終わってしまったうっぷんを、つぎのインディジャパンでぜひ晴らして欲しいですね。
「今日は燃料をうまくセーブして走れていましたし、最初のピットではチームメイトより1周多く走れたのは大きかったと思います。ジャッキの問題は少し納得いかないですが、イン・ラップもアウト・ラップも自信があって、最後には集団の前、トップ10でフィニッシュできていたんじゃないでしょうか。クラッシュする2周ぐらい前から、急にアンダーステアが強くなって、今思えばその量がいつもより多くなっていました。前のタイヤがタレたのかと思ったら、突然壁にぶつかっていたんです。もう準備をするような余裕も無く、何もできない状態でした。もてぎに持っていくシャシーではなかったので、良かったですね(笑)。もてぎには自分たちが良いと信じているクルマを持っていけます。今日のクラッシュの影響はまったくないし、ケガがなかったのも一番大きかったと思います。もてぎまでに1勝したかったのですが、リッチモンドは確実に優勝できたレースでした。結果には残っていないものの、そういうレースがひとつでもあったということは、すごく自分の中で自信になっています」
2番グリッドからスタートし、序盤はトップグループで走行していたエリオ・カストロネベスでしたが、185周目にマシンから大きな火花が飛んでウォールに激突。2戦連続のリタイヤとなってしまいました。「あの事故が起きるまで、すごくいい走りをしていたんだ。チーム・ペンスキーのマシンは強かった。でもフロント・サスペンションの問題が発生してウォールにぶつかったよ。優勝する可能性が十分あっただけに、かなり残念だ。とにかく怪我がなかったし、次戦のジャパンは楽しみにしている。チームメイトのライアン(ブリスコー)、おめでとう! 最高のレースをして、チャンピオンシップでかなり前進したね」と僚友を称えるカストロネベスでしたが、このリタイアにより、自分はチャンピオンシップ制覇の可能性がなくなってしまいました。
8月とは思えないほど寒くなったシカゴランド。この時期に気温15度なんて、いったいどうしてしまったんでしょうね。スタートのグリットへ撮影に行く途中、コースのゲートでクレデンシャルのチェックをしているおじさんたちが、黒いビニール袋をかぶって寒さをしのいでいました。今日はほんとうに肌寒く、上着がなければ外にいられませんでしたね。撮影していても手がかじかんでしまいましたよ。夏があっという間に終わりを告げたような気がして、なんだか少し寂しくなってきます。風も強かったし、来年はもっと早い時間に始まって欲しい!
今日は朝から曇り空となったシカゴでしたが、お昼ごろから晴れ間が徐々に広がりました。ところが気温だけは一向に上がらず、夜になると冷え込みが増し、訪れたファンもこの時期の予想外の寒さには、かなり驚いたのではないでしょうか。そのせいか、昨年ほどの観客数とはならず、グランドスタンドも空席が目立ちましたよ。ともあれ、雨も降らず無事にレースが終って一安心。次戦はいよいよ、もてぎでの開催です。楽しみですね。みなさん、もてぎでお会いしましょう!