<US-RACING>
めずらしく快適なコンディションとなったリッチモンドのナイトレースで、スコット・ディクソンがサム・ホーニッシュJr.の史上最多優勝記録に並ぶ19回目の勝利を獲得しました。中盤までチームメイトのダリオ・フランキッティに次いで、2番手だったディクソン。トップの武藤を追って燃料を消費し過ぎたフランキッティが、ピット・クローズド中にピット・インしなければならなくなり、難なく139周目にトップへ浮上しました。ディクソンはそのままリードを保ち、260周目の最後のピットストップも完璧。チームメイトに0.3109秒差を付けてチェッカーを受けました。「チーム・ターゲットにとって、最高の夜になったよ。チャンピオンシップ・ランキングも1位と2位に上がったし、最高だ! ペンスキーに差をつけれたのは、重要だったね」とうれしそうなディクソン。300周中最多の161周をリードしたことで、2つのボーナス・ポイントも獲得しました。
2007年のリッチモンドを制したフランキッティはポール・ポジションからスタートしましたが、アイオワに続く2連覇ならず。トップの武藤を追いすぎてディクソンよりも燃料を使いすぎ、ピットがクローズド中に入らなければならなかったのが敗因です。これで再びピット・インを余儀なくされ、ディクソンにリードを奪われてしまいました。「勝てなくて当然悔しいよ。僕とスコット(ディクソン)のマシンは、パフォーマンス的にほぼ一緒だったと思うんだ。彼が僕の前に入ってから、もう今日は難しいと思った。序盤で武藤をパスしようとして、燃料を使いすぎたのが今日一番のミスだったね」とちょっと不満なフランキッティでしたが、この2位フィニッシュでランキング1位に浮上しています。
5番グリッドからスタートしたグラハム・レイホールは、途中マルコ・アンドレッティと接触するアクシデントがありましたが、オーバル・コースでキャリア・ベストの3位でフィニッシュしました。「この結果はマクドナルドのクルーが、一生懸命がんばった証だよ。今週末のはじめはかなり苦労していたんだ。クルマをうまく調整して粘り続けたら、結局表彰台に立つことができた。僕らにとっては、優勝のようなものだよ」と笑顔を見せたレイホール。これまでのオーバルの自己ベストは、今シーズンのミルウォーキーで獲得した4位でした。ロード・コースが得意なレイホールは、来週のワトキンズ・グレンでもこの勢いをキープし、ガナッシーとペンスキー勢の連覇を止めるドライバーになって欲しいものです。
8番グリッドからスタートした武藤英紀は、前回のアイオワと同様ピット・インのタイミングをずらす作戦を取り、いっきにトップへ浮上しました。もう、日本人のトップなんて久しぶりなんで、ドキドキしたのなんの。前戦アイオワの覇者、ショート・オーバル・マイスターのダリオ・フランキッティが背後に迫っていた中で、武藤は31周から104周に渡ってトップを快走。しかし狙っていたタイミングでコーションが出ず、グリーンの中105周目にピット・インを余儀なくされたのです。これで武藤は周回遅れになったものの、着実にポジションをアップ。カストロネベスのクラッシュによるコーションで、トップ同一周回の4位まで追い上げてきました。レースは残り40周でグリーンとなったのですが、パスが難しいリッチモンドで、間には周回遅れが何台もいたため、そのまま4位でフィニッシュ。連続表彰台まであと一歩でした。
「クルマは素晴らしかったです。昨日のプラクティスで少し変えたら良くなりましたね。ピット・ストップでもクルーは最高の仕事をしてくれました」と今日も笑顔の武藤。コーションのタイミング次第では優勝の可能性もあり、トップとなってからは、俄然レースがおもしろくなったのはいうまでもありません。あのフランキッティを従えて、堂々とトップを走る姿に、興奮したのは僕らだけではないと思います。終わってみれば、この日2番目となる74周もレースをリードしていましたが、いつもより長く感じましたねぇ〜。今日フランキッティが勝てなかったのは、彼のコメントを見てのとおり、トップの武藤に食らいついていったからでした。これで燃費がきつくなり、ディクソンよりも先にピットへ入らなければならなくなって、トップが入れ替わったんですね。今日の武藤は残念ながら表彰台を逃しましたが、トップ・クラスの走りができていることは、十分に実証したと思います。
10番グリッドからスタートしたダニカ・パトリックは、2回目のコーションでほぼ全ドライバーが1回目のピットを行った中で、武藤と同様ピットには入りませんでした。次のコーションを待ってピット・インする作戦を選んだのですが、そのコーションが来なかったため、111周目のグリーン中にピット・イン。大きく順位を落としたものの、248周目のコーションで武藤とともにトップと同一周回へ復帰し、武藤の後ろの5位でフィニッシュしました。「序盤はスコット(ディクソン)とダリオ(フランキッティ)に離されたのが残念だったわ。時間が進むにつれてクルマがどんどん良い感じになってきたの。AGR勢にとっては、かなり良い夜になったと思うわ!」と、このタフなレースを走り終わったとは思えないほど、元気そうだったパトリック。彼女の後ろにマルコ・アンドレッティとトニー・カナーンが6位と7位に入り、AGR勢全員がトップ10フィニッシュとなりました。
チャンピオンシップ・リーダーのライアン・ブリスコーは、去年のナッシュビル以来のリタイアを喫してしまいました。トップ5内で走っていながら、27周目にターン2の出口でハーフ・スピンし、マシンの左側からSAFERバリアに激突。「すごかった。ほんとうに予測していなかったよ。クルマがいきなり滑ったから、反応しようがなかった。当然すごく残念な結果だよ。ペンスキーのみんなに、ほんとうに申し訳ない。彼らはがんばってくれていたからね」と悔しそうなブリスコー。結局19位となり、ポイント・ランキング3位まで転落してしまいました。チームメイトのエリオ・カストロネベスも248周目に周回遅れに引っかかり、ラインを外してブリスコーとまったく同じところでウォールに接触してリタイア。来週ワトキンズ・グレンで巻き返しができると良いですね。
レースがグリーン・フラッグとなって間もなく、チーム3Gのステアリングを握るジャキー・ラジアが、ターン1でウォールにヒットしてしまいました。「コントロールできないクルマで走ろうというのは、ほんとうに大変だよ。いきなりスピンした」と我慢の限界に達したラジア。昨日の予選後のプラクティスでは、スピードが誰よりも5マイル以上遅かったのです。もしスタートでスピンせず、そのまま走っていたとしたら、このクルマの存在だけでレースの展開は大きく変わったかもしれません。昨年のレースで9回もイエロー・コーションがあったリッチモンでしたが、最終的に去年の半分以下の4回のコーションで終了。セットアップが難しいショート・オーバルに挑むマシンは少なく、精鋭の20台のエントリーだけだったのも、コーションが少なかった要因でしょう。
先週のアイオワでは、フランキッティの奥さんである女優のアシュリー・ジャッドが注目されていましたね。ここリッチモンドでは妊娠9ヶ月のスコット・ディクソンの奥さん、エマ・ディクソンがメディアの注目の的でした。出産予定日がちょうど3週間後のエマは、レース中にインタビューを受けていたのですが、おなかの子供がお父さんを応援しようとしていたのか、その直後になんと陣痛が始まったというではないですか! 幸い陣痛は1度だけで終わったそうで、チェッカー後に再び元気そうにインタビューに応じていましたよ。これからインディアナポリスの家に戻り、出産に向けての準備を開始するようで、しばらくサーキット通いはお休み。次に来る時は出産後ということです。ディクソンも勝ったし、どうぞ安心して元気な赤ちゃんを産んでください!
昨晩、雷を伴う激しい雨が一時的に降りましたが、朝にはすっかり晴れ渡り、一日を通して雨の心配は必要ありませんでした。レースがスタートする8時45分ごろも、リッチモンドは快晴。毎年、夜でも蒸し暑いのが当たり前のリッチモンドでしたが、今年の決勝日は風があったせいか湿気がありません。気温も27度までしか上昇しなかったこともあり、とても過ごしやいナイト・レースでしたね。半袖で外にいる分にはちょうどいい気候で、めずらしく汗をそれほどかかずにすんだレースとなりました。武藤もトップを快走してくれましたし、気分も晴々! もう朝の5時でふらふらですが、心地よい疲れですよ! これでオーバル・レースの連戦が終了となり、来週はアメリカの伝統のロード・コース、ワトキンス・グレンが開催されます。武藤が好きなコースなので、また活躍を期待しましょう! それではみなさん、おやすみなさい!