<Honda>
2009年5月16日(土)、17日(日)・予選第2週
予選
会場:インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(全長2.5マイル)
天候:快晴
気温:15〜16℃
インディ500の予選は伝統的に2週末、合計4日間にわたって争われている。予選初日は栄誉あるポールポジションが決定するポールデイで、予選4日目は33個目のグリッドをめぐる激しい争いが繰り広げられる日で、バンプデイと呼ばれている。
グリッドを獲得できるか否か、つまりインディ500に出場できるかどうかをかけたバンプデイの感動的ドラマを見ようとインディアナポリス・モーター・スピードウェイには多くのファンが詰めかけた。
予選3日目までに一旦グリッドを獲得した者でも、予選で記録したスピードを放棄して再アタックを行うことが許されており、今年はこのルールを活用する者が多かった。ルーキーのネルソン・フィリップ(HVM Racing)とマイク・コンウェイ(Dreyer & Reinbold Racing)、女性ドライバーのミルカ・デュノー(Dreyer & Reinbold Racing)、E.J.ヴィソ(HVM Racing)が予選3日目に自らの出したスピードを放棄して予選4日目にアタックを行い、スピード更新を果たした。
ブルーノ・ジュンケイラ(Conquest Racing)は予選最終日に走行を始めながら、豊富な経験を生かして時速221マイル台を記録し、ジョン・アンドレッティ(Dreyer & Reinbold Racing)をバンプアウトした。
予選終了まで30分をきってスピードウェイの緊張感は一気に増した。5時40分にトーマス・シェクター(Dale Coyne Racing)が自らのスピードを放棄してアタック。今日の最速となる時速221.496マイルを出し、決勝進出を確実なものとした。これでライアン・ハンターレイ(Vision Racing)がバンプアウトの危機に瀕し、アンドレッティがコースインした。しかし、アンドレッティは2周目までハンターレイを上回るスピードを出していながら3、4周目が悪く、このときはグリッド獲得はならなかった。
続いて1996年インディ500ウイナーのバディ・ラジア(Hemelgarn Racing)がアタック。しかし、1周目に十分なスピードを出せず、アタックを中断した。
アンドレッティが2回目のアタックを始めたのは、もう残り時間が7分というときだった。背水の陣での走行で彼は時速221.316マイルを出し、ハンターレイをバンプアウトしてグリッドを獲得した。大逆転のドラマにスピードウェイは大歓声に包まれた。
6時まで残り3分、すかさずハンターレイがコースインし、彼が3周目を走行中に午後6時は訪れた。彼が今年最後のアタッカーとなったのだ。バンプアウトの危機に陥ったのはアレックス・タグリアーニ(Conquest Racing)。決勝に進むのはハンターレイか、タグリアーニか。それはハンターレイの4周平均速度にかかっていた。
昨年度インディ500ルーキー・オブ・ザ・イヤーのハンターレイはプレッシャーをはね返して時速220.597マイルをマーク。初出場をかけたタグリアーニの220.553マイルを0.0044マイル上回った。バンプアウトされた立場から一転、ハンターレイは今年もインディ500に出場できることとなり、タグリアーニは涙を飲むこととなった。
最速スピードでポールポジションを獲得したエリオ・カストロネベス(Team Penske)と、最終33番グリッドからスタートすることとなったハンターレイの予選タイムの差は3.0967秒。これは93回目を数えるインディ500の歴史で最も小さい。今年の予選は、インディ500史上で最も競争の激しいものとなった。
36人のドライバーが予選を走り、33人の決勝進出が決まった。この中にインディ500優勝経験者は4人おり、その中で複数回優勝しているのは2勝のカストロネベスだけ。また、ルーキーは今年は4人が決勝へと駒を進めている。
コメント
トーマス・シェクター(26番手 Dale Coyne Racing)
「今年でインディは7年目になるが、予選を通過できるかどうかの心配をするのは初めてだった。昨日の時点では予選通過は間違いないだろうと考えていたが、事態が急転した。決勝用へと変えられていたセッティングを予選用に戻さねばならなかった。僕はモーターホームに戻り、照明を消して集中力を高めて予選アタックに備えた。いい走りができ、決勝進出を決めることができてうれしい」
ジョン・アンドレッティ(28番手Dreyer & Reinbold Racing)
「本当に疲れた。予選を終えたとき、私はファンの歓声も聞こえないぐらいだった。彼らが手を振ってくれているのは見えていたけれどね。そして、レースに勝ったぐらいの喜びを感じていた。チームメートのマシンから移植したショック・アブソーバーとスプリングでマシンはすばらしいハンドリングに変わった。チームワークのよさによって我々は決勝進出を果たした」
ブルーノ・ジュンケイラ(30番手 Conquest Racing)
「今日最初の走行でマシンのよさを感じ、ダウンフォースを減らした。それでスピードが上がり、予選通過に自信を持つことができた。スポンサーが決まったのが金曜の夜で、走り出せたのが予選最終日だった。そんな難しい状況でもグリッド獲得を果たせたのだからうれしい。今年のインディ500出場決定は、私の人生、私のレースキャリアの中で最もエキサイティングな瞬間となった」
ミルカ・デュノー(31番手 Dreyer & Reinbold Racing)
「チームメートのアドバイスで走行ラインを変えた。マシンも昨日とは違うセッティングにした。それらがかみ合ったからこそ、今日の予選通過につながったと思う。昨日までのマシンよりも、スピードを高く保ったまま4周を走れるマシンになっていた。Dreyer & Reinbold Racingはすばらしいチームで、走行開始から今日まで、すべての面で進歩を遂げていた」
ネルソン・フィリップ(32番手 HVM Racing)
「昨日出した自分のスピードを放棄した。自分で自分をバンプアウトさせたわけだ。こんなこと、誰か今までにやったことがあったのだろうか? 100年もの歴史があるのがインディ500だから、おそらくあったに違いない。そのアタックでいい走りができ、決勝進出を決めることができた。自分のスピードを2.7マイルも速くすることができたのだから気分がいいし、インディ500を走れることになって本当にうれしい」
ライアン・ハンターレイ(33番手 Vision Racing)
「(ジョン)アンドレッティの最初のアタックが失敗に終わったとき、もう彼は2度目のアタックができないだろうと考えた。しかし、彼らのチームはセッティングを変更してスピードアップを果たし、アタックのための準備を整え、すばらしいタイムを出した。見事な戦いぶりだったと思う。我々の戦いはタイミングが問題となっていた。そして僕らは幸運にも1回だけだがチャンスを手にできた。タグリアーニは速かったがアタックをせず、我々はグリッドへと返り咲くことができた。緊張しっぱなしの一日だった」
アレックス・タグリアーニ(予選不通過 Conquest Racing)
「我々のマシンはグリッドを守り通すだけの速さを備えていたと思う。予選を行う列に入ったり出たりを繰り返していて、最後の最後で時間ぎれに陥った。アタックのチャンスを得ることができなくなったのだ。そうなる前にアタックをするべきだった。我々には今日の最速ラップを出すことさえ可能だったはずだ。しかし、予選は終わってしまった。なぜアタックをしなかったのか、残念でならない」