INDY CAR

エリオ・カストロネベスが優勝。シリーズチャンピオンはスコット・ディクソン、ルーキー・オブ・ザ・イヤーは武藤英紀が獲得

<Honda>

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2008年9月7日(日)
決勝
会場:シカゴランド・スピードウェイ
天候:曇りときどき晴れ
気温:24〜25℃

今年もIRL IndyCarシリーズのチャンピオン争いは最終戦までもつれ込んだ。2006年から3年連続のことである。栄えある王座に就いたのは、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)で、2003年に続く2度目のタイトルとなった。チップ・ガナッシ・レーシングにとっても2003年以来、2度目のチャンピオンシップ獲得である。

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ポイント・リーダーとして最終戦シカゴランドを迎えたディクソンは、予選2番手でフロント・ローからスタートした。その一方でポイント2位からの大逆転で初タイトルを目指すエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)は、何としてでもポールポジションが欲しいと考えたためか、アタック中に何度もコース内側の白線をカットし、予選失格となった。彼は最後尾の28番グリッドからスタートするという大きなハンディを背負った。

しかし、カストロネベスは逆境をものともせず、すさまじい勢いで順位を上げ、レースが70周に到達する前にトップにまで上り詰めた。逆にディクソンは8位まで後退し、そこから抜け出せずに苦戦するシーンもあった。カストロネベスは最多リードラップを記録して3点のボーナスポイントを獲得。あとは優勝を飾り、ディクソンが9位以下に沈めば逆転タイトルがかなうという状況となった。

高速での接近戦が続いたレースは7回ものフルコースコーションが出され、ほぼ全車が最後のピットストップを184周終了時点で行った。そして、ここでディクソンがトップを奪還、カストロネベスは2位へと下がった。

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最後のリスタートが切られたのは、残り10周。トップを守ったディクソンは、イン側ギリギリのラインを保って走り続け、カストロネベスとしてはアウトからパスするしかなかった。

カストロネベスの逆転勝利に貢献したのは、彼のチームメートのライアン・ブリスコーだった。ポールポジションからスタートした彼は、レースを通してトップグループを走っていたが、最終ラップのターン4立ち上がりからカストロネベスの真後ろにつけ、空力的に彼をサポートしたのだった。その結果、両者フィニッシュ時には計時システムがディクソンの勝利を示したが、写真判定の結果、IRL史上2番目の僅差となる0.0033秒差でカストロネベスがウイナーとなった。

武藤英紀(アンドレッティ・グリーン・レーシング)は予選11番手からスタートして8位に順位を上げたが、その後はハンドリングの悪さから後退。ピットストップやリスタートで順位をばん回し、最後にトップグループへ食い込もうという戦いを続けていたが、電気系トラブルによってリタイアを喫した。それでも、日本人歴代最上位となる2位フィニッシュをアイオワでの第8戦で記録し、6回のトップ10フィニッシュを記録した武藤は、目標としていた今年度のルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。シリーズ・ランキングでも武藤は堂々のトップ10入りを果たす10位となった。

開幕直前にチャンプカー・シリーズを併合し、IRL IndyCarシリーズはアメリカン・オープンホイールレースの統一を果たした。新規参戦チームはそれぞれ初年度から奮闘し、IndyCarシリーズの競争のレベルはまた一段引き上げられた。出場ドライバーの顔ぶれもさらに国際色豊かとなり、活気みなぎるIndyCarシリーズは、来シーズンもエキサイティングな戦いを我々に見せてくれることとなるだろう。

また、今年度のIndyCarシリーズでは、10月26日にオーストラリアのサーファーズ・パラダイスで、エキシビションレースが開催される(シリーズポイントの対象外)。南半球でのストリートレースには、今シーズンを戦って来たすべてのレギュラーチーム、レギュラードライバーたちが出場する。

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■スコット・ディクソン(2位/2008年シリーズ・チャンピオン)

「すごいレースになっていた。ポジションを下げたときもあったが、必ずやトップグループに戻れると信じて走っていた。最後はエリオ・カストロネベスとの激しい戦いになった。インサイドを保ち続ければ抜かれないと考えていたが、最終ラップで彼はアウトから来た。結局2位となったが、今年、私は結婚をし、Indy500で優勝し、タイトルも獲得できた。こんなすばらしい年を過ごせた人はいないと思う。チームの、シーズンを通しての見事な仕事ぶりにも感謝したい」

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■エリオ・カストロネベス(優勝)

「ゴールしたとき、勝ったと思った。しかし、時速215マイルで走っていたから、本当に自分が勝ったかどうか自信が持てなかった。最後にチームメートのブリスコーが私をプッシュし、助けてくれた。予選で起きたことは忘れ、スタート時からレースにだけ集中しようと考えていた。我々には勝てるマシンがあると信じて疑っていなかった。最後尾からスタートして優勝するというのは大きな課題だったが、自分たちの力を信じ、我々はやるべきことをすべてやってのけた。残念ながらディクソンが私のすぐ後ろでゴールし、タイトル獲得はならなかったが、彼らのタイトル獲得に対しておめでとうと言いたい」

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■ライアン・ブリスコー(3位)

「すばらしいレースだった。カストロネベスとウェルドンを相手に3台並んで走り続けるバトルもあった。シーズンを終えるのにふさわしい戦いが繰り広げられた。最後はチームメートのカストロネベスを勝たせるべく、彼のギアボックスにギリギリまで私のノーズを接近させた。彼が勝てて私としてもうれしい。自分としては、この1年間で大きな進歩を遂げることができたと感じている。来シーズンを迎えるために必要なことを我々は達成できたと思う」

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■武藤英紀(22位/2008年ルーキー・オブ・ザ・イヤー)

「今日はスタート直後のハンドリングが大きなアンダーステアで、非常に乗りづらいマシンになっていました。1回目のピットストップでウイングを調整してからはいいマシンになったのですが、なかなかポジションを上げていけませんでした。それでも、リスタートやピットストップでポジションを上げ、コックピット内でできるセッティング変更を続けて走るなど、自分のやれることはやれていたレースでした。残念なのは最後に電気系のトラブルが出たことでした。非常に悔しいレースとなったため、今はまだルーキー・オブ・ザ・イヤーを喜べていませんが、明日の朝起きたら、参戦前からの目標だったルーキー・オブ・ザ・イヤー獲得を実感できるかもしれません」

■エリック・バークマン(HPD社長)

「シカゴランドで行われる最終戦は、エキサイティングなシーズンのフィナーレになる。そうした期待に応えるレースとなっていた。最終ラップまで決着はつかず、鼻の差で勝利はカストロネベスのものとなった。ディクソンは上位フィニッシュという彼に与えられた課題をクリアし、カストロネベスは信じられない走りで最後尾から最多リードラップも記録しての優勝を飾った。両者ともに成すべきことをすべてやってのけ、ゴールシーンは実に劇的なものとなった。ディクソンとカストロネベスの競争はシーズンを通して激しく、しかしクリーンであった。両チームの仕事ぶりも実にプロフェッショナルだった。
 今年から参戦を始めた各チームもいいレースを戦っていた。オープンホイールの統一がなされたシーズンにふさわしい、すばらしいレースが展開され、多くのファンにインディカー・レースを大いに楽しんでもらえたことと思う。
 Hondaは2003年からIndyCarシリーズで走り始め、この3年間はエンジンの単独サプライヤーとしてシリーズをサポートしてきている。この6年間のレース活動を我々はとても楽しんでいる。単独サプライヤーとして、Hondaは出場全車に高品質で、信頼性も高く、全くイコールのパワーを発揮するエンジンを供給するという任務が課されているが、それを達成できていることは今回のレース終盤を見れば明らかであったと思う」