INDY CAR

スコット・ディクソンがシリーズ初のカナダ戦で今季5勝目。武藤英紀はクラッシュでリタイア

<Honda>

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2008年7月26日(土)
決勝
会場:レクソール・スピードウェイ/エドモントン・シティセンター空港特設コース
天候:晴れ
気温:26〜28℃

IndyCarシリーズ第13戦はカナダのエドモントンで開催された。エドモントンは北海道北端の稚内よりも北に位置するアルバータ州の州都。IRL IndyCarシリーズは創設13年目にして初めてカナダでのレースを開催するに至った。今シーズンの開幕前にはカレンダーに組み込まれていなかったイベントだが、チャンプカー・シリーズとの併合によって08年シーズンに新たに加えられ、夏の6連戦の最終戦としてスケジュールされた。

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サーキットはシティセンター空港の滑走路を使った全長1.96マイルの特設コース。ダウンタウンのほぼ中央という絶好のロケーションである上、カナダが生んだスーパー・スター・ドライバーであるポール・トレイシー(ヴィジョン・レーシング)のスポット参戦が叶ったこともあり、決勝日のグランドスタンドは超満員となった。レース・ウィークエンドを通じてとても過ごし易い天候だったが、路面がバンピーでスピードも高いだけに、集中力の維持と強じんな体力が求められる厳しいレースとなった。

決勝レースは、予選2番手からトップに立ったエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)がレース前半に大きなリードを築いてトップを走り続けたが、51周目に行った2回目のピットストップでスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)がトップの座を奪った。カストロネベスは何とか逆転しようとアタックを続けたが、ディクソンもペースアップ。逆にカストロネベスは86周目にブレーキングミスでラインを外れ、勝利はディクソンのものとなった。合計4回、19周にわたって出されたフルコースコーションによって、レースは予定の95周から91周に減らされてゴールを迎えた。

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ディクソンが今シーズン5勝目を飾ってポイントリードを伸ばしたのに対し、カストロネベスはまたしても優勝を逃した。これで今シーズン6回目の2位フィニッシュだ。3位には予選6番手からスタートしたジャスティン・ウィルソン(ニューマン・ハース・ラニガン・レーシング)がクリーンなレースを戦って自己ベストリザルトを獲得。4位にはスポット参戦のトレイシーが入った。トレイシーは作戦による順位アップではなく、まったくの正攻法で激しいバトルを戦いながらポジションを上げる走りを披露した。4月以来のレース復帰だが、まだ腕前は一切衰えていない。それを証明した彼は、カナダのファンから大歓声を浴びていた。

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武藤英紀(アンドレッティ・グリーン・レーシング)はマシンセッティングが思うように進まず、予選は22番手。エンジン交換を行って最後尾グリッドに下がったチームがあったために21番グリッドからスタートし、1回目のピットストップを終えた時点で17位にまでポジションアップしていた。しかし、28周目にタイヤバリアにクラッシュしリタイア。27位という結果となった。

過酷な6連戦を終え、ポイントトップはディクソンが保ち、2位カストロネベスとの差を58点から65点へと広げた。なお、ポイント7位でエドモントンのレースを迎えた武藤は、今回10点しか増やすことができなかったがランキング7位を保ち、同時にルーキーポイント最上位につけている。

■スコット・ディクソン(優勝)

「今日の勝利はまさにファンタスティック! シーズン終盤の大事なところで優勝できた。ここ2戦でエリオ(カストロネベス)が強さを発揮しているが、僕らはポイント差を少しずつ広げることができた。ピットストップで彼の前に出ることがきたことが今日の勝利のカギだった」

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■エリオ・カストロネベス(2位)

「トップを走っていたときのマシンは絶好調だったが、誰かの後ろにつくとタイヤのグリップが下がり、ドライビングが難しくなっていた。それでもスコット(ディクソン)をパスしようと全力を出し続け、最後までプッシュし続けた。しかし、彼は一切ミスを冒さなかった」

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■ジャスティン・ウィルソン(3位)

「ついに表彰台に上ることができた。今日のレースでは本当に多くのことが起きていたが、僕らはプッシュすべきタイミング、我慢すべきタイミングを間違えず、トラブルやミスなく走りきった。ポール・トレイシーとフェアなバトルを繰り広げたことも非常に楽しかった」

■武藤英紀(27位)

「最初のセットのタイヤではマシンのハンドリングも悪くなく、周りと同じペースで走り続けることができていました。ピットストップでポジションを上げることもできました。そのままの戦いを続けたいと考えていましたが、2セット目のタイヤではハンドリングが悪くなってしまいました。フルコースコーション時にタイヤの内圧が下がり、そこから内圧が戻ってこなかったためにスピンしてしまいました。今週はずっと流れが悪いままでした。ソノマでのロードレースではいい走りを見せたいと思いますし、きっとそれが実現できると信じています」

■ロジャー・グリフィス|HPD テクニカル・グループ・リーダー

「すばらしい天候、情熱的なファン、エドモントンでの初開催イベントは大成功できたと思います。ポール・トレイシーもスポット参戦ながら見事なレースを戦い、母国のファンを喜ばせていましたね。
IndyCarシリーズがチャンプカーと合流し、競争のレベルは大きく高まっています。より激しさを増したレースを、我々はカナダの人々の見守る前で開催できたのです。来年また戻って来るのが楽しみですし、もっと多くのレースがカナダで開催されることも歓迎したいと思います。
エドモントンは標高が高く、エンジンパワーは50馬力ほどダウンするのですが、空気の薄さは空気抵抗も減らすため、大きなスピードダウンにはつながりません。ただし、その空気の希薄さはエンジンにとっていいものではありません。そうした条件の下、Honda Indy-V8は今回も一切の問題を発生させず、レースをすばらしいものとする一助になれたと思います」