<US-RACING>
“ファイアストン・ファスト・シックス”に残ったドライバーが、いずれも異なるチームの6人となった混戦の予選を、ライアン・ブリスコーが制した。第2戦セント・ピーターズバーグ同様チャンプ・カー勢が台頭し、セッション終了まで激しいタイム・アタック合戦が繰り広げられる。その中でラスト・ラップに渾身のアタックを成功させたブリスコーが、1分29秒3456をマーク。わずか0.0348秒差とオーバルのような超僅差でウイルソンを下し、2005年のインフィネオン以来となるキャリア2回目のポールを獲得した。「最終ラップに入ったとき、チームが2番手に落ちたことを教えてくれたから、最後までプッシュしたんだ。マシンを準備してくれたチームの努力には、ほんとうに感謝しているよ。ラスト・ラップは素晴しかった。ジャスティンと一緒にフロント・ローへ並べることはすごく良いことだね」と大喜びのブリスコー。この勢いを明日のフィニッシュまで持続できるか、ブリスコーの真価が問われる。
ワトキンス・グレンでもロード・コースの強さを遺憾なく見せ付けたチャンプ・カー勢。トップ6には、ジャスティン・ウイルソン(2位)とオリオール・セルビア(5位)が入った。チャンプ・カー勢にとって、このワトキンス・グレンはまったく初めてのコースだが、たった2日で3年の経験を持つインディカー勢と同じレベルで戦えている。予想以上に高いチームとドライバーの習熟能力には、ただただ驚かされるばかりだ。「ピットに戻ってマシンを降り、タイミング・モニターを見ていたんだ。そうしたら0.03秒差でトップから2位に落ちてしまって、とてもがっかりしたよ。でも、今週末のパフォーマンスにはとても満足している。僕たちはここでテストをやったこともないし、走ったことすらなかったからね。チームはほんとうに素晴しい仕事をしてくれたよ」と話すウイルソン。速いマシンを仕上げてくれたチームクルーに感謝の気持ちを込めてか、ひとりひとりと握手をして廻っていたのが印象的だった。白熱するチャンプ・カー勢VSインディカー勢のロード対決は、どちらに軍配があがるだろうか?
予選3位にはレイホール・レターマン・レーシングのライアン・ハンター-レイが入った。チャンプ・カー勢と同じく、ワトキンス・グレン初体験のハンター-レイだが、第1、第2セグメントを6位ぎりぎりで通過すると、ファイアストン・ファスト・シックスでは最終ラップに1分29秒6355をマーク。チップ・ガナッシのディクソンと、アンドレッティ・グリーンのカナーンを抑える堂々の3位を獲得した。「昨夜から今日にかけて大幅な変更を行ったことが、大きな進歩につながったね。金曜日はランチまで抜いたんだよ。マシンはセッションごとに良くなっていった。今日の予選は楽しめたね」とハンター-レイ。ここ数戦確実に力をつけているハンター-レイが、決勝レースをどれだけかき回すのか楽しみだ。
昨日のプラクティスでトップ・タイムを記録したスコット・ディクソン。今朝のプラクティスも2番手タイムをマークし、調子は上々にみえた。ところが予選に入ってからは、それまでの速さが見られず、ライバルの先行を許す。何とかファイアストン・ファスト・シックスまで進むものの、今度はギアがスタックするトラブルに見舞われ、4番手で予選を終えた。「最初のセグメントから厳しかったね。フロントのグリップが全然なくて、マシンが曲がらなかったんだ。第2セグメントは悪くなかったけど、第3セグメントでは何をやってもギアがロックしてしまって、マニュアル・モードにしなければならなかった。これはかなり痛手だったね」と落胆するディクソン。2005年の初開催から続く連勝記録更新に、黄色信号が灯った。
3年連続ポール・ウイナーのエリオ・カストロネベスは、マシン・トラブルでまさかの最後尾スタートとなった。予選第1セグメントの残り8分で、最初のアタックに出たカストロネベスだが、いきなりマシンのスロットル・ケーブルが切れ、バス・ストップ・シケインのエスケープ・ゾーンで立ち往生。マシンから降りてコックピットの中やマシン後部を覗き込んだり、コース・サイドにいたファンからドライバーを借りてエンジン・カバーを開けようと試みる。だが、結局どうすることもできないままタイム・オーバーとなり、屈辱の最下位に終わった。「ファンからドライバーを借りたけども、僕は優秀なメカニックではなかったね。エンジン・カバーすら開けられなかったよ。ピットに戻ったとしても、セッション中に修復するのは無理だっただろう。でも今日はまだ土曜日。レースは明日なんだ」とあっけらかんとした表情で答えるカストロネベス。最後尾からどんなレースを見せるのか注目だ。
午前中のプラクティスでクラッシュを喫してしまったグラハム・レイホール。スペア・パーツの少ないチャンプ・カー勢にとって、レース・ウィークエンドでのクラッシュは死活問題だが、チームは壊れたパーツをチームメイトであるウイルソンのパーツからあてがい、なんとか予選にこぎつける。しかし、ウイルソンの活躍の一方でレイホールは18番手に沈み、第2戦の覇者としては期待はずれに終わった。
ワトキンス・グレンのコースに苦しむ武藤英紀は、波に乗れないまま予選第1セグメントで敗退してしまった。今朝のプラクティスを12位で終えた武藤だが、予選1回目のアタックでは一時6番手につけるほど調子を取り戻していた。ところが、ライバルたちが2回目のアタックを行い、武藤も2回目のアタックに向かった残り4分、あろうことかA.J.フォイト4世がターン7でクラッシュしてしまう。これでフルコース・コーションとなり、武藤はタイムを更新できないまま、セッションが終了。20番手という後方からのスタートを余儀なくされた。
「最初のセグメントでは、6番手に入れたと思うんですけど、最後のアタック中にイエローが出てしまい、アクセルを緩めなくてはいけませんでした。1周まとめ切れないまま終わって、厳しい予選になってしまいました。もしイエローが出なければ、朝よりはコンマ1秒くらい速かったから、ちょうど6番手に入るぐらいのタイムは出たと思いますね。かなり後ろからのスタートになるので、気持ちを切り替えてレースに臨みます。タフなレースになると思いますし、落ちついていきます」
昨日同様、朝のうちは肌寒いワトキンス・グレン。陽が高くなると24度まで気温が上昇し、若干蒸し暑さを感じたが、観戦するには程よい暑さとなる。朝のプラクティスが始まるまで曇っていた空も、時間が経つにつれて晴れ渡り、雨の心配が要らない一日だった。今日の予選はポールこそペンスキーのブリスコーが獲得したが、チップ・ガナッシとアンドレティ・グリーンのドライバーは一人もトップ3に入ることが出来なかった。第2戦セント・ピーターズバーグからもわかるとおり、ロード・コースでは3強の勢力図が確実に変ってしまっている。明日の決勝も誰が勝つか予想もつかない、激戦になることは必至だ。