<US-RACING>
昨年、このセントピーターズバーグでポール・トゥ・ウインを飾ったカストロネベスが、初日の総合トップタイムを記録した。午前のプラクティスでは4位にとどまるも午後のセッションではしっかりまとめ上げ、トップタイムを記録するところはさすが2年連続覇者と思わせた。しかし、「イェローが多かったし、トラフィックも結構あったね。去年の勢いに続き、少しずつタイムを縮んでいると思う。僕は最後のほうに良いラップを走れたんだが、多くのドライバーはトラフィックの無いラップを走れなかったと思う。今日の結果は嬉しかったけど、明日になったらどんどんタイムが早くなるので、がんばらないといけないね」と、今日の総合トップに関して素直には喜べず、明日の予選に向けて気を引き締めているようだ。明日から新しい予選方式となるが、カストロネベスの2年連続ポール獲得になるか注目したい。
「久々の市街地コースで楽しめた」と話すカナーンは、総合2位につけ、順調な立ち上がりを見せた。午前のプラクティスから3番手につけ、好調そのもののカナーン。午後のプラクティスでは勢いあまって、タイヤ・ウォールに突っ込んでしまう場面もあったが、マシンにダメージはなく、走行を再開する。自らのミスも含め、コーションによって間が開くセッションとなったが、カナーンは集中力を切らすことなく、24周目に1分3秒3680をマークした。「2回目のプラクティスは、みんなが攻めていたね。こんなに多くのマシンが走っているのは素晴らしいことだよ。毎周渋滞に引っかかるけど、それは良い問題だと思うんだ。今日は納得の行く一日だったよ」と、振り返るカナーン。トップのカストロネベスとは0.0612秒差しかなく、明日のポール・ポジションも射程圏内か。
総合3位につけたのは、我らが武藤英紀。3月3日から6日にストリートコースを想定して行われたセブリングのテストでは、総合4位に入る実力を見せていたため、期待通りの順位に入ってきてくれた。午前のプラクティスは17位に沈み、少々ファンを心配させた武藤だったが、午後になってから一気にペース・アップ。5周目に今日のベストタイムとなる1分3秒4491をマークし、その時点でトップに立った。ところが10周目のターン10で、外にはらんでしまい、アウト側のタイヤ・バリアに軽くタッチしてしまう。マシンは見た目には大きなダメージはなかったが、武藤はマシンを降り、そのままプラクティスは終了を迎える。その後、カストロネベスとカナーンがセッション終了直前にペースをあげ、先行を許したものの、明日の予選に期待が持てる3位で初日を終えた。
「あんな形で2回目のプラクティスを終えなければならなかったのは、すこし残念ですね。でも、クラッシュするまでは良かったですし、マシンの感触もすごく良いです。最後にもう1セット新しいタイヤを試そうと思っていましたが、時間切れでした。今日3位になれたことは、とても嬉しいですね。明日の天気がどうなるかは分からないですけど、予選を楽しみにしています」と話す武藤。明日の予選は武藤の走りに注目だ。
開幕戦のオーバル・コースで苦戦していたチャンプ・カー勢も、ストリート・コースでは本領を発揮。午前のプラクティスでは、ジャスティン・ウイルソンがトップ・タイムをマークしてみせる。現在使われているダラーラ・シャシーを手にしてから、わずか一ヶ月にもかかわらず、ここまでのスピードを披露したことに、チャンプ・カー・チームの底力を見ることが出来た。「今日はとても良い結果を出せたね。開幕前にセブリングのロード・コースで15周しかテストできなかったけど、チームのみんなが一生懸命頑張ってくれたおかげで、この結果になったんだ。僕はこのコースが初めてだし、まだまだ進歩できるところがたくさんあると思うから、これからもセット・アップを続けていくよ。次のステップは、レース・セットを見つけることだね」と自信を見せるウイルソン。記者会見ではいつも以上に冗談を飛ばす二人の陽気なブラジル人に挟まれ、笑いが絶えなかった。シーズンが進むごとに、チャンプ・カー勢がインディカー勢にとって、さらに脅威となることは間違いない。
朝から快晴のセント・ピーターズバーグ。金曜日の初日にも関われず、グランド・スタンドやパドックには多くの人が訪れ、朝からにぎわいをみせていた。気温は26度に達し、高い湿度のせいもあって、歩いているだけでじっとり汗をかいてしまうほどとなる。正午を過ぎて風が吹き始めると、涼しく感じることもあったが、一日を通して蒸し蒸しとする感じは抜けなかった。明日は午後から雨の予報があるため、この蒸し暑さは波乱への予兆なのかもしれない。明日は、いったいどのような予選結果が待っているのだろうか。
セッションが始まる直前には、アンドレッティ・グリーン・レーシングに所属するドライバーを集めたフォトセッションが行われた。現在、AGRはインディカー・シリーズのほか、インディ・ライツ・シリーズとアメリカン・ル・マン・シリーズにも参戦している。今週末はこの三つのシリーズが同じ週末に開催されるということで、インディカーのトニー・カナーン、マルコ・アンドレッティ、ダニカ・パトリックと武藤英紀。アメリカン・ル・マン・シリーズのブライアン・ハータとクリスチャン・フィッティパルディ、インディ・ライツに参戦するアリー・ルイエンダンクJr.とラファエル・マトスの合計8名によるフォト・セッションとなった。インディカーきってのトップ・チームということで注目度も高く、8人を前に多くのカメラマンが集まっていた。
午前8時からドレイヤー&レインボールド・レーシング(DRR)のフォト・セッションが行われた。DRRは今シーズン、開幕戦に出場したミルカ・デュノとタウンゼント・ベルの2人を、インディ500を除く16戦で使い分ける起用法を採用しており、今回はベルが出場する。スポンサーもデュノについているガソリンスタンド・チェーンのシトゴを引き継ぐのではなく、アパレル・メーカーのウィリアムラストが新たについた。マシンを前にチームクルーやスポンサーと一緒に写真に納まるベル。今年で33歳となるベテランの2008年シーズンがようやくスタートした。
今回のセント・ピーターズバーグは、ホンダがメインスポンサー。レース名もインディカーがホンダ・グランプリ・オブ・セント・ピーターズバーグ、アメリカン・ル・マン・シリーズはアキュラ・スポーツ・カー・チャレンジ・セント・ピーターズバーグとされている。会場にはホンダ車を展示する特設ブースがあり、SUVからスポーツカーまで幅広い車種を展示。ブースを訪れるファンは、ただ眺めるだけでなく、熱心に車を見入っていて、次に購入する車を選んでいるようだった。