INDY CAR

インディカー・プライベート・テスト【セブリング】フォト&レポート

<US-RACING>

画像

来たる2008年シーズンを見据えたプライベート・テストが、クリスマス・ホリデイの近づくフロリダのセブリングで行われた。アンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)に加入した武藤英紀も、最終日となる今日のセッションに登場。すでに12月初旬のホームステッドで、本格的なテストを経験しているため、チームとのコミュニケーションも板についてきている。9時30分から始まった今回のテストは、オープン・テストという形式ではなく、公式なタイムが発表されることはない。チームが個別に黙々と作業をこなし、武藤もエンジニアが用意したメニューを淡々とこなしていた。

画像

セブリング・インターナショナル・レースウエイは朝から快晴。突き抜けるようなフロリダの青い空は、温暖な気候を想像させるが、今朝の気温はわずか5度と冷え込んでいた。午後になるとようやく気温が上昇するも、最高で15度までしか上がらず、少しばかり肌寒かった。ロードコースでありながらそのバンピーな特性により、ストリート・コースを想定したテストにも用いられるセブリング。近年、インディカー・シリーズでもロードコースの開催も増えているため、ここでのテストは以前にも増して大きな意味を持つことになる。

画像

今日のテスト走行に参加したのは、チップ・ガナッシとAGRの2チーム。チップ・ガナッシはレギュラーのダン・ウエルドンに加え、来季IRLへの昇格が噂されているアレックス・ロイドが走行し、AGRからは武藤のほかにトニー・カナーンとマルコ・アンドレッティが参加した。

画像

AGRは3人のドライバーがそれぞれ違うメニューを与えられ、さまざまなセッティングに取り組んでいた。コースとピットを何度も行き来しながら、セッティングを煮詰めていたが、低い気温によってタイヤが温まらず、コースアウトする場面が何度も見られた。アンドレッティはセッション終了間際にクラッシュを演じ、大ベテランのカナーンさえもコースサイドにマシンを止めてしまうほど、今日のコンディションは厳しかったようだ。その中でもマルコとカナーンは安定したペースを刻み、手元のストップ・ウォッチでの計測だが、53秒を切るタイムをマークしていた。

画像

昨年IPSのチャンピオンとなったアレックス・ロイドは、チップ・ガナッシ・レーシングの3台目としてインディカーへのデビューが噂されている。IPSでは16戦中8勝と、圧倒的な強さをみせつけるが、今日のテストでもレギュラー・ドライバーと遜色なく走り、ポテンシャルの高さを見せた。これまでIPS王者が翌シーズンのレギュラー・シートを射止めたのは2002年のA.J.フォイト4世だっただけに、昨年王者のロイドがインディカーへステップ・アップを果たすことは、来季以降IPSを走るドライバーにとって大きな希望になるだろう。

画像

昨年IPSで武藤と熱戦を繰り広げたウエイド・カニングハム。今回はまだ決まっていないAGRのプロシリーズのシートを狙ってセブリングを訪れたようだが、なんと今日の午前中はインディカーでの走行機会が与えられた。AGRがどのような意図でカンニングハムにテスト走行の機会を設けたのかは不明だが、本人にとってはビックなクリスマス・プレゼントになったはずだ。ちなみにカニングハムと立ち話をしているのは、今シーズンIPSの終盤2戦に参戦していた女性ドライバーのレイラニ・ミュンター。彼女はパンサー・レーシングのIPSテストが目的で来たようだが、今日の走行はなかった。

画像

カナーンを取り囲むようにAGRのクルーやチームメイトが集まり、ミーティングを開始。カナーン自身がもともと良く話すタイプであり、走行が終了するとすぐエンジニアとその場でセッティングのことについて話し合うため、このようにチームメンバーが集結してちょっとした全体会議となる。チームの要とも言うべきポジションを担ってきた昨年王者のダリオ・フランキッティが抜けた今、カナーンがAGRで果たす役割はいままで以上に大きい。しかし、この光景を見る限り心配はなさそうだ。

画像

アンドレッティやカナーンと同様、エンジニアから与えられた課題をこなすことに終始していた武藤英紀。今日はタイムを出しに行くようなセッティングを試してないということだが、トータル80周を走行してタイムは53秒6という上々の立ち上がりで、セッション終盤までアンドレッティを先行していた。一日を通して気温が低かったため、武藤も80周目にコースオフしてしまい、運悪く濡れていた芝生に載ってそのままクラッシュ。これで武藤の走行は終わってしまったが、本人は良い感触を得て一日を終えたようだ。

画像

「序盤から良いペースで走れましたし、チームがやりたいプログラムもこなせました。ほんとうはもっと走りたかったんですが、ラップ・タイムを追わずに、チーム側の指示に従ってテストしていたという感じですね。そういった中でもタイムは良かったので、自信にはなりました。ロードコースはミド-オハイオでも経験がありますが、そのときは人のシートと人のペダルで走って、タイヤも1セットしか使えませんでした。今回が実質初めてのロード・コースといえるので、得るものは大きかったです。クラッシュは新しいセット・アップを試していたら、フロントの暖まりが悪くてアンダー・ステアになってしまいました。でもこういうことは二度とないと思います。ルーキーだからと言って特別なプログラムがあるというわけではなく、ほかの3台にも反映できるようにそれぞれが違うことをやっていました。僕もチームに加わった当初から通常のメニューをこなすことになりました。今日はトニーやマルコが他の事をやっていたので、次のセブリングのテストでは、良かった点を組み合わせて基本セッティングにするそうです」