INDY CAR

松浦孝亮、キャリア・ベストに並ぶ4位でフィニッシュ

<SUPER AGURI PANTHER RACING>
<2007 IRLインディカー・シリーズ 第13戦 ファイアストン・インディ400>
【日 程】8月4日〜8月5日
【開催地】ミシガン州ブルックリン
【コース】ミシガン・インターナショナル・スピードウェイ
【距 離】2マイル(3.219km)×200周=400マイル(643.737km)

■■■8月5日決勝■■■
【天 候】曇り
【気 温】22℃
【時 間】16時53分〜(日本時間6日5時53分〜)
<2年連続の雨で大幅に遅れたスタート>
 IRLインディカー・シリーズ第13戦の決勝日の朝、ミシガン州ブルックリンは灰色の雲に覆い尽くされ、雨が降っていた。今年は第11戦ナッシュビルが雨天により1日順延となったが、第13戦ミシガンもあわや……という空模様が続いた。
 しかし、スタート時刻は大幅に遅延されたものの、レースの開催は実現した。正午に予定されていたスタートは、夕方の4時53分に切られ、20台のインディカーはグリーンフラッグを受けた。
<一進一退のレース序盤>
 2回のプラクティスでともにトップ10入りを果たすラップタイムを記録しながら、予選順位は14位となった松浦孝亮は、7列目アウト側グリッドからスタート。タイヤが十分に温まるまでのマシンコントロールが難しいコンディションで松浦は13位へとひとつ順位を上げた。しかし、激しいポジション争いが続く中で松浦は一進一退を繰り返し、1回目のピットストップ終了時点でも順位は13位のままだった。
<相次ぐアクシデントを潜り抜けての戦い>
 序盤の順位変動が終わり、レースはいったん落ち着きを見せるかと思われたが、18度バンクを使っての戦いは休む間もなく続き、松浦はその中で一時は15位まで後退することもあった。しかし、2回目のピットストップでクルーが素晴らしい仕事をし、一挙に6個もポジションアップを果たし、9位へと浮上した。
 しかし、再び松浦は11位から14位の間を行き来するようになった。これはマシンのパフォーマンス不足でポジションを保てないからではなく、3ワイド、時として4ワイドに広がってのバトルが続くレースを戦う中で、多重アクシデントが起こることを予期したからだった。松浦は周囲の状況を常に冷静に把握しながら走ることに努めていた。
<雨の心配が消え、200周のフルバトルへ>
 101周が終了し、レースは成立。すでに5台がアクシデントによって戦列を去っていた。この時点で各チームがチェックを続けていた気象レーダーに雨雲は見当たらなくなり、レースが200周のフルディスタンスで争われる可能性が一段と高まっていた。松浦はレース終盤の勝負どころで一気に持てる力を発揮しようと、ラストスパートをかけるタイミングを待つこととした。
 レースは接近戦が続き、ドライバーたちは極度の緊張感に晒されていた。タービュランスを浴びて挙動を乱すマシンをコントロールしながら戦う高速戦では、精神的な消耗が大きく、それがドライビングミスを引き出す場合がある。ほんの一瞬の隙がアクシデントに繋がってしまうのだ。 そして高速での接近バトルの続く中、144周目にトップグループで接触が発生し、ダリオ・フランキッティのマシンが宙へと舞い上がった。後続グループは急減速してアクシデントを避けようとしたが、フランキッティのマシンはコース中央に裏返しに着地。合計7台がダメージを被るアクシデントとなった。11位を走行中だった松浦は、イン側へラインを採り、白線より内側のランオフエリアまで使って何とかアクシデントに巻き込まれるのを回避した。
<7台が姿を消してレース再開>
 マシンの破片が飛び散った多重アクシデントを潜り抜けると、松浦の順位は4位まで上がっていた。コースの清掃には非常に長い時間がかかっていたが、フルコースコーション中にピットで給油を行っても、まだゴールまで走り切れるかどうかが微妙な状況が続いていた。リスタートが切られるのはいつなのか、そのタイミングを正しく見極めることが必要となった。松浦は157周目にピットへ向かった。これで7位へと順位を下げた。さらにフルコースコーションが続いたため、松浦はもう1回、161周目にピットに向かった。そして、レースは171周目に再開された。
 
<トップ3フィニッシュを目指したハードバトル>
 リスタートが切られたのは、残り30周の時点だった。松浦をはじめ、コース上に残っているドライバーたち全員が、フィニッシュまで全開で戦い抜けるだけの燃料を搭載していた。松浦は5位からリスタートを切り、集団の中で6位に後退したが、ライアン・ハンター-レイをパスし、ダニカ・パトリックがスローパンクチャーでピットへ向かったことで4位へと浮上した。
 この時点で前方を走るスコット・シャープとの間には数車身の差があった。しかし、松浦はさらに上位でのフィニッシュを目指して走り続けた。残り周回数が減って行く中、松浦はシャープとの差を少しずつだが着実に縮め、残り14周となったところで背後にピタリとつけた。
 トップ3フィニッシュを目指してのバトルが始まった。シャープはポジションを死守しようとイン側ギリギリのラインを保った。松浦は何度となくアウト側から仕掛け、バックストレッチでサイドに並びかけた。しかし、ターン3進入でシャープはイン側を保ってアドバンテージを維持。松浦は0.0836秒という僅差で4位となった。
 トップ3でのゴールはならなかった。しかし、松浦はキャリアベストに並ぶ4位でのゴールを果たした。これはもちろん今シーズンのベストでもある。不運が続いて来た2007年シーズンだが、松浦とスーパーアグリ・パンサー・レーシングは絶対に諦めない姿勢を保ち続けることで4位フィニッシュを手にしたのだった。

■■■コメント■■■
<松浦孝亮>
「最後は何とかトップ3に入りたかった」
「レース序盤のマシンはオーバーテイクをガンガンして行くだけのスピードがなく、プッシュをしても2つか3つポジションアップをするのが精一杯だったので、後方で我慢して、最後のスティントを集中して戦おうと考えました。すごい接近戦のバトルがずっと続いていて、3ワイド、4ワイドになるシーンがしょっちゅうありました。そういう戦いは誰にとってもメンタル面がキツく、ほんの少しのアンダーステアを出したり、小さなミスをしたりということで多重クラッシュを引き起こしてしまう可能性がある。何人かがアクシデントを起こすのを見て、今日のレースではいつか大きなアクシデントが起きるという考えが強くなっていきました。生き残れば上位フィニッシュができる、という期待感を持ってもいました。
 最後のバトルではシャープをなんとかパスしたかった。フィニッシュラインがバックストレッチにあれば、彼の前に出ることはできていたと思います。しかし、ターン1からターン2でアウトにつけ、バックストレッチで何回か前に出ることはできましたが、ストレート後半とターン3ではイン側の方が速くて、トップ3を逃しました。この4年間、ずっと目指して来ているトップ3フィニッシュを逃したのは悔しいけれど、トップ4も悪くない結果だと思います。今年のベスト、自分のベストタイでもありますし。
 今年の運の悪さを考えると、今日はレースができたと思います。ピットストップも良かったし、作戦も良かった。チームとしてレースをまとめることができていました。タイヤのセット数もマネジメントが難しいレースでしたが、チームが的確な仕事をしてくれました。残るレースも、特にロードコースでの戦いには期待が持てると思いますので、今日以上のリザルトを手にすることができるよう、がんばっていきます」

<ロン・キャット:チーム・マネジャー>
「コウスケも、チームも全力を出し切ることができた」
「とても激しいレースだった。作戦面でも難しいレースになっていた。コウスケは全力を出し切って戦ってくれた。最後にシャープをパスして3位になりたかったのは、コウスケも、我々チームも同じだ。しかし、イン側を保ち続けた彼を抜くことはできなかった。それでも、コウスケはアタックを続け、何とか3位を手に入れようと戦い抜いた。1回を除き、クルーたちのピットストップも素晴らしいものだった。チーム全体が持てる力を存分に発揮しての4位フィニッシュを我々は誇りに思う。
 最後のピット・タイミングは非常に判断の難しいところだった。ガス欠に陥らないことを最重視しながら、いつグリーンフラッグが振られるかのタイミングを計っていた。我々としては、ベストのタイミングでコウスケをピットに呼び入れることができたと考えていた。しかし、コースの一部で水がしみ出して来る事態となったためにリスタートのタイミングがさらに遅れ、シャープたちが給油なしでゴールまで走り切れる展開になった。コウスケのキャリアベストとなる3位フィニッシュ、そして、さらに上位でのフィニッシュを是非とも今シーズン中に達成したい」

■■■決勝結果■■■
2マイル(3.219km)×200周=400マイル(643.737km)
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順位 No.  ドライバー    周回数    タイム差
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1位 11  T.カナーン    200   2:49’38.0509
2位 26  M.アンドレッティ 200     +0.0595
3位  8  S.シャープ    200     +0.3867
4位 55  松浦孝亮     200     +0.4703
5位 15  B.ライス     200     +4.9097
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※全車、シャシーはダラーラ、エンジンはHonda、タイヤはファイアストン

■■■ポイントスタンディング■■■
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順位 No. ドライバー    ポイント  ビハインド
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1位 27  D.フランキッティ 494     リーダー
2位  9  S.ディクソン   470       -24
3位 11  T.カナーン    413       -81
4位 10  D.ウェルドン   375       -119
5位  6  S.ホーニッシュJr. 367       -127
16位 55  松浦孝亮     221       -273
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