<US-RACING>
今シーズンのポール・ポジション獲得率が50%になる、6回目のポールを獲得した予選男のエリオ・カストロネベス。一台ずつ走行するシングル・カー予選を6番手で終えたカストロネベスは、トップ6で争われる10分間のファイアストン・ファスト6へ進出した。昨日のプラクティスではアンドレッティ・グリーンの先行を許したが、ファスト6はトニー・カナーンとの熾烈なタイム・アタック合戦のすえ、ただひとり1分6秒台に入れる1分6秒8375
を記録。最後に追い上げてきたダニカ・パトリックもコンマ3秒退け、1998年にビリー・ボードによって記録されたシーズン最多獲得記録に並ぶ、6回目のポールを勝ち取った。「信じられないくらいすばらしいラップになったよ。予選まではトップ6に入るのも苦労していたのにね。セッションのたびにマシンを調整していたのが良かったみたいだ。この調整が速くなる鍵だった。チームの作戦もすばらしかったよ」と大喜びのカストロネベス。今シーズンは予選の結果が決勝に伴わないレースが続いているため、明日のレースではなんとか第2戦以来の勝利を掴みたい。
エリオ・カストロネベスとフロント・ローに並ぶのは、なんとダニカ・パトリックという驚くべき結果となった。パトリックにとってこのミド-オハイオは、2003年のアトランティック時代に経験があるコースとはいえ、ロード・コースでは予選トップ10に入ったことすらない彼女が、まさかここまで活躍するとは誰が予想しただろうか。シングル・カー予選の11番目に登場したパトリックは、1分8秒0007を記録して5番手に入り、初めてのファイアストン・ファスト6進出を決める。これまでオーバルだけの速さが目立ち、苦手とするロード・コースでファスト6に残ったことでも驚きだったが、彼女の活躍はこれだけに留まらなかった。ファスト6に入ってから速さに磨きが掛かったパトリックは、タイムを1分7秒1257まで短縮。ロード・コースではベストとなる2位で予選を終えた。「ものすごく気分が良いわ。ワトキンス・グレンではほんとうにがっかりしたし、なぜこんなにうまく走れないのかしらと思うといらいらしていたの。でも、それが大きな転換点になったわね。エンジニアのマーティンやチームを心から誇りに思うわ。オーバルではなくて、ロード・コースでフロント・ローを獲れたんだもの」と喜びを爆発させるパトリック。ロード・コースでも上位陣と十分張り合えるほどの成長を見せ、彼女に対する評価を見直さざるを得なくなった。パトリックのIRL初優勝はもしかするとロード・コースとなるかもしれない。明日はスタートから目が離せないレースになる。
予選3位を獲得したトニー・カナーン。ファイアストン・ファスト6の序盤は、エリオ・カストロネベスとトップを入れ替える白熱したタイム・バトルを演じたが、5周目にマークした1分7秒1757以降、タイムを更新できなかった。最後はチームメイトのダニカ・パトリックに0.05秒上回れ、3位で予選を終えた。「これはチームのすばらしい努力のおかげだね。ダニカにはおめでとうと言いたい。彼女は一生懸命やっていたからね。僕はファイアストン・ファスト6でのセット・アップをミスしたけど、レースに向けては良いマシンがあるよ」と自信を見せるカナーン。3番手からの逆転優勝を狙う。
二日目は朝から快晴のミド-オハイオ・スポーツカー・コース。気温は15度しかなく、昨日と同様に肌寒い朝だった。予選が近づくにつれてまだらな雲が空を覆い、気温は20度まで上昇。湿度が高いために少しばかり蒸し暑さを感じたが、それ以上に暑くなることはなく、過ごしやすい一日となった。この週末はインディカー、インディ・プロ、アメリカン・ル・マンの他、IMSA-GTS、スピード・ワールド・ツーリング、スピード・ワールドGTといったカテゴリーも併催され、ファンは一日を通して様々なタイプのレースを見ることが出来ている。
シングル・カー予選でトップだったマルコ・アンドレッティは、ファスト6でタイムをうまく上げられず、4位で予選を終えた。今シーズンはここまでトップ5フィニッシュが4回に留まり、インディ500ではマシンが横転するほどの大きなクラッシュも経験したアンドレッティ。今日は得意のロード・コースで光る走りを見せたものの、キャリア初のポール獲得とはならなかった。「トップ5にアンドレッティ・グリーン・レーシングが4台も入るなんてすばらしいね。ポールを獲れたらもっとうれしかったけど、4位になれたし、レースの準備は出来ているよ」とアンドレッティは話した。今日は、パトリックを先頭にAGRの4台すべてがトップ6に入る活躍。ポールはペンスキーのカストロネベスに奪われたが、明日のレースでも優勝候補の筆頭だ。
今朝のプラクティスでトップ・タイムをマークしたサム・ホーニッシュJr.。ダニカ・パトリックが見せたロード・コースでの成長ぶりには目を見張るものがあるが、このホーニッシュJr.もめきめきとロード・コースの速さを身につけている。先々週のワトキンス・グレンはカナーンとの乱闘騒ぎが話題の中心となってしまったが、ロード・コースでのベストフィニッシュとなる2位を獲得していた。今日は残念ながらトップ6に入ることが出来なかったものの、7位から明日のレースをスタートする。「トップ6が目標だったから残念だね。ロード・コースではスタート位置がいつも重要になるから、なんとか残りたかったけど。明日は順位を上げられるようにチャレンジするよ」と悔しがるホーニッシュJr.。落ち着いたレース運びで上位を目指したい。
シングル・カー予選の7番目に登場した松浦孝亮。今週末はこのミド-オハイオのコースに少してこずっているのか、なかなかペースが上がらない。アタックを終えた時点で暫定3位にいたが、その後上位陣がアタックを行ったことにより、13位で予選を終えた。「少しコンサバティブに行き過ぎました。マシン自体は悪くないんですが、速い人たちに比べると、低いレベルでおさまっていますね。でもレースはまた違いますし、明日頑張ります」と淡々と語る松浦。13番手からの追い上げを誓う。
IRLと併催されるIPSは予選が行われた。昨日のプラクティスから1つポジションを上げ、9位で予選を終えた武藤英紀。予選まではマシン・バランスに苦しんでいる様子を見せたが、予選後のプラクティスでは良いセット・アップが見つかり、決勝への自信を見せた。「予選は全体的にグリップ感がなかったですね。セッション中にセット・アップを変更してみましたがダメでした。予選後のプラクティスで180度セット・アップを変えてから、いきなり良くなりました。レース用のセット・アップでダウンフォースをさらに削って、燃料も満タンに近い状態でしたが、このセット・アップだったら予選でもう少し上にいけましたね。また明日、15分の走行があるので、今日の方向性でもう少し試したいです。レースはポジションを上げられると思うから、スタートとイエローがでた後のリスタートが重要ですね」と話す武藤。良い感触を持って臨む決勝で、オーバーテイク・ショーを期待したい。
IRLの予選終了後、スーパーアグリ・パンサー・レーシングの記者会見が開かれ、現在IPSに参戦する武藤英紀が、今シーズンの最終戦シカゴランドに電撃参戦することが発表された。武藤は松浦孝亮、ヴィットール・メイラとともにパンサー・レーシングの3台目として出場する。カーナンバーは6(ム)と10(トウ)をあわせた60だ。すでにここミド-オハイオでインディカーのテストを行っている武藤は、この後IPSを戦いながら、ケンタッキー、シカゴランド、インフィネオンでインディカーの経験をつみ、最終戦に備えることになる。「チャンスがあればいいなとは思っていましたが、まさか自分が最終戦で乗れるとは思っていませんでした。これまで結果を認めてもらえたのも嬉しいですし、最終戦でアピールするチャンスをもらえました。シカゴランドはインディやミルウォーキーに比べると易しいコースだと聞いているので、初めてレースをする良い場所だと思います。来年のことはまだ決まっていないですが、もしインディカーに乗れるのであれば、1レース走ることでピット・ストップやレース・マネージメントのイメージが沸きますから、走らないのとではオフの過ごし方が違います。レースはそんなに簡単だと思いませんが、トップ10を目標に、あわよくばトップ5に入りたいですね」と意気込みを語る武藤。今シーズンの最終戦は松浦と武藤、二人の日本人ドライバーに注目だ。